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Info
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翻訳責任者: Arl-Sphere Arl-Sphere
翻訳年: 2025
著作権者: Dexanote Dexanote
原題: Daffodils
作成年: 2018
初訳時参照リビジョン: 7
元記事リンク: https://scp-wiki.wikidot.com/daffodils
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エージェント・ベン・グリーンは平穏な日々を送ってきた。起床、仕事、帰宅、そしてたまには休息をとり、就寝、起床、それを日課としてただ繰り返す。世捨て人よりは上でも - 隠遁者でも吝嗇家でもない。ただ、彼は孤独の中に満足を見出していた。
フィールドエージェントは情愛や人間関係については多くを語らない。たとえ誰かと付き合っていたとしても、それを口にすることはない。誰しも自分の幸せを邪魔されたくはない。ゆえに幸運な人々はそれに際して職務を退き、自らの人生を歩み始めるのだろう。しかし、誰しもがそれを享受できる幸運に恵まれるわけではない。多くは何かしらの形で悪夢に苛まれることになる。
だがその点、彼は幸運であった。とある誰かを切望することも、それに悩まされることもない。彼は若い頃に友人を渇望した事がなかったが、それでも今は彼自身の中枢、居場所を見つけることができた。
そして今夜、エージェント・ベン・グリーンはブラインド越しに差し込む月光を浴びながら、1人横になっていた。明るく澄んだ満月だった。彼の好きな光景だ。のどかで、侘しく、恐らくは静穏な夜。外ではウサギがフクロウに捕らえられたときのような悲鳴が響いた。静寂が戻る。風が悲鳴を運び去っていく。
暗闇の中、取り止めのない発想や心配事が彼の脳裏をよぎった。彼自身の人生、財団、未来...この先、彼は一体どこへ向かえば良いのだろうか?無論、彼が何かしらに満足と幸福を見出した途端、何かしらがそれに水を差すことになるだろう。当然そうなるはずだ。それがこの財団での常なのだから。
彼は不埒な思考を頭から追い出した。そんなことを考えている暇はない。
「...今夜はいい夜だな」彼は吐息をついた。
「ああ。」
「...もう少し、これが長らく続けばいいのにな。」
グリーンは、寝室の先方、箪笥とその後ろにかけられた鏡に目をやった。彼は鏡像の瞳を覗き込み、彼自身の目を認め鏡面に手を当てた。
身体中を鋭い電流が走る。彼らは一目で恋に堕ちた。それは他の誰も、本当に、決して得られないような関係性であった。
「...世界は終わるんだ、わかるだろう」彼は胸中に、絞り出すように呟く。
「...それは本当か?」彼自身の声が応えた。
グリーンは自分の殻に籠り、外の世界を忘れようとした。
Cite this page as:
"ナルキッソス" by Dexanote, from the SCP Wiki. Source: https://scpwiki.com/daffodils. Licensed under CC BY-SA.
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