遺言とは
自分が生涯をかけて築き、かつ守ってきた大切な財産を、最も有効・有意義に活用して
もらうために行う遺言者の意思表示です。そのため遺言は、遺言者の真意を確実に実現さ
せるべく、厳格な方法が定められています。その方法に従わない遺言はすべて無効です。
?@ 公証人による公正証書遺言は法律の専門家である公証人が作成するので、方式に反す
るなどの理由で無効になることも避けられますし、法律的に見て不備がなく安心確実で
す。
また、自筆証書遺言や秘密証書遺言では必要となる家庭裁判所による「検認」といっ
た面倒な手続をとる必要もありません。
?A 公正証書遺言の原本は、公証役場で半永久的に保管され、紛失のおそれや中身を書き
換えられるおそれもありません。さらに、日本公証人連合会の遺言検索システムに登録
されますので、遺言者が亡くなった後(遺言の効力発生後)、その相続人などの利害関
係人が 遺言をしたかどうかを問い合わせることもできます。
?B もちろん、一度遺言をしたとしても、周囲の状況や遺言者の心境が変わってきたとき
は、遺言を変更することもできますし、改めて遺言することもできます。その場合に、
以前の遺言は、後の遺言と抵触する部分について効力を失います。
?C このように、公正証書遺言は、自筆証書遺言に比べて、はるかに優れているうえ、公
証人は公務員として守秘義務を負いますので、秘密は厳重に守られます。
?D なお、病気で公証役場においでになれない場合は公証人が病院やご自宅に出張して作
成することもできます。
それでは、特に遺言が必要な場合の例を4つあげてみます。
?@ 夫婦の間に子がない場合
子どもがいない場合、夫が死亡すると全財産を妻だけが相続できると思っている人が
います。しかし、夫に兄弟姉妹がいれば、妻の相続分は4分の3であり、4分の1は兄
弟姉妹が相続することになります。そこで、そのような事態を避けたければ、「全財産
を妻に相続させる。」という遺言をしておくことが必要になります。
?A 相続人同士が不仲あるいは疎遠なとき
先妻の子と後妻との間は血縁関係がないため、とかく感情的になりやすく、遺言でき
ちんと遺産分けをしておかないと遺産争いが起こりがちです。また、子どもら相互の間
や親子間が円満を欠くときなども、遺産争いとなるおそれがあります。
?B 相続人以外の人に財産を分けてあげたいとき
長男が死亡した後、その嫁が未亡人として亡夫の親の世話をしている場合、嫁は義理
の親の相続人ではないので、遺言をしないでその親が死亡すると、遺産は亡夫の兄弟姉
妹が相続し、嫁は何も相続しないことになります。このような場合、亡夫の親として
は、遺言で相応の財産を嫁に贈与しておく必要が生じます(この遺言による贈与を遺贈
といいます。)内縁の配偶者も相続人ではないので同様のことがいえます。
?C 相続人が全くいない場合
この場合には、遺産は、特別な事情のない限り国庫に帰属します。お世話になって人
や社会福祉法人などに寄付したい場合には、その旨遺言で明らかにしておくことが必要
になります。