2017年5月
コンピュータで生物学
2017年05月29日 | 固定リンク
皆さん、はじめまして。2017年4月に応用生物学部に着任しました土井といいます。私はこちらでバイオインフォマティクス研究室という研究室を立ち上げています。バイオインフォマティクスというのは日本語でいうと生命情報学とか生命情報科学と訳されることもあります。簡単に言うとコンピュータで生物学のデータを解析したり、そのためのツールを開発したりするのが研究内容になります。
生物学というと、白衣を着て試験管を使って何らかの実験を行っているというのが皆さんのイメージだと思われます。実際、こちらの応用生物学部のホームページでも使用されている写真はほとんどが白衣を着て何らかの実験をしている風景となります。このイメージとは私の研究はかなり違い、パソコンの前にいるのが普段の研究風景となります。
大量のデータが得られるようになった現在、コンピュータの力は生物学でも重要なものになっています。また、こちらで私は医薬品コースに所属していますが、創薬にもコンピュータの力は欠かせないものとなっていきています。そのような生物学もみなさんに知ってもらえればと思っています。
応用生物学部 土井晃一郎
日本発のALS治療薬
2017年05月23日 | 固定リンク
脳梗塞の治療薬であるエダラボンは世界唯一のフリーラジカル消去薬として有名ですが,2015年6月にALS治療薬として日本で追加認可されました.2017年5月5日には米国でもALS治療薬として認可されました.1990年から開発に関係してきた者として大きな喜びです.
ALS治療ではフリーラジカル消去よりも炎症時にできるペルオキシナイトライトという活性種の消去が重要と考えています.よろしければ小生の総説https://www.jstage.jst.go.jp/article/jcbn/60/1/60_16-63/_article をごらんください.
応用生物学部 山本順寛
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将来薬に携わる仕事をしたい人のために
2017年05月16日 | 固定リンク
薬価が高いので最近話題となったオプジーボはがん免疫療法剤で、代表的なバイオ医薬品です。免疫療法とは免疫のしくみ(免疫機能)を利用したもので、患者さん自身のがんを攻撃する機能を高める薬剤として、2014年7月に承認認可されました。医薬品売上高トップ10の内7製品がバイオ医薬品です。このようにバイオ医薬品は注目を集めています。
薬に興味があり、将来薬に携わる仕事をしたいと考えている人がいると思います。薬学部に進学して、薬剤師の免許を取得するのが良いと思っていることでしょう。これは正解の一つとして間違いありません。しかしながら薬学部に進むことが唯一の答えではありません。というのは、製薬業界は薬学部出身の人だけで成り立っているわけではないからです。新しい薬が世の中に出てくるまでには研究開発、安全性の確認、認可、営業と多くの過程があります。例えば研究開発だけをとっても、薬学部出身者以外に、農学部や工学部、理学部出身の研究者が多くいます。また、営業は多くが薬学部出身以外の人です。すなわち、薬学部以外でも薬に携わる仕事ができます。
応用生物学部では昨年から新しいコースとして、医薬品コースを新設しました。このコースの特長は、オプジーボなどのバイオ医薬品を中心とした教育及び研究開発をしていることです。卒業生の多くはもうすでに、薬の開発やMR(技術営業)、CRO(治験業務受託業)で活躍しています。将来薬にたずさわる仕事がしたい人の教育を行っていますので、是非ホームページで医薬品コースを調べてみて下さい。
応用生物学部 梶原
里山の端午(たんご)を祝うイワウチワ -三方倉山探訪記-
2017年05月11日 | 固定リンク
ゴールデンウイークは毎年、春スキーか、もしくは登山(ハイキングといった方が正確かもしれない)をすることが私ら夫婦の慣習となっている。仙台に家を構えているため、東北の山に登ることが多いが、この時期は、千mを超える東北の山々には雪がまだまだ多く残っており登山には不向きな感がある。そのため登山シーズンの最初は、手軽に登れる標高の低い里山を好んで登ることが多い。
今年のゴールデンウイークは、仙台市の南西、仙台市太白区と川崎町の境に位置する「三方倉山(さんぽうくらやま)」に登った。三方倉山は、我が家から車で1時間程走った、二口渓谷の玄関口に位置する端正な三角形の形をした標高971mの山である。この山は私ら夫婦にとっては初めての山である。それは、この山の登山道が作られたのが10年前と最近であり、今年ガイドブックを見て初めてその存在を知った。
登山口そばにある二口キャンプ場の駐車場に車を停めた後、二口沢を渡り三方倉山に登り始めた。登山道は、ブナ平コースとシロヤシオコースがあり、山を一周できるようになっている。今回は、ブナ平コースを登りに選ぶことにした。登山道に入り、まず目にしたのは、道の両脇にイワウチワが咲いていることであった。イワウチワは、イワウメ科イワウチワ属の多年草で、葉の形状がうちわに似た形状であることからこう呼ばれている。本州では中国地方から北域の広葉樹林帯でよく見られる花であり、その花弁は3cm程の大きさで薄紅色を呈するとてもかわいらしい花である。イワウチワは、これまで見たことのない数でブナ林の中で増えていき、我々を迎えてくれた。
ブナ林を過ぎると、目の前に柱状節理の岸壁が現れた。これが本当に天然の産物なのかと目を疑うほどに、まるで城の石垣を思わせるように四角い石が整然と並んでそびえたっていた。自然とは何て偉大な創造者なのかと、あらためて驚かされた。柱状節理の岩壁に沿って標高差200mの急な傾斜を、汗をかきながら登り終えるとふいに白い残雪が現れた。この時期としては気温が高く暑い中、残雪の上を吹き抜ける風はとても心地よかった。登山口から約2時間の歩きで頂上にたどり着いた。山頂は小さな広場で樹木が広がり展望はきかなかったが、木立の間から、北側には台形の頂をした大東岳が、また南側には山頂に雪を抱いた蔵王連峰を見ることができた。
下りは、シロヤシオコースを歩くことにした。ガイドブックでは、シロヤシオがたくさん咲いている場所と書かれていたので、期待しながらつづら折りを下った。シロヤシオは5月初旬からが開花となっていたが、残念ながらシロヤシオの白い花を見つけることはできなかった。しかし、思わぬサプライズが我々を待っていた。斜面一帯をカタクリとイワウチワが競演し花畑を作っていた。我々はその姿に圧倒され「素晴らしい」しか声が出なかった。仙台市に30年以上住んでいるが、市内にこんなに美しい里山があることを知らなかったことに驚きを隠しきれなかった。この群落は数100mにも続き、我々は何度もシャッターを押してこの花畑の光景をカメラに収めた。1時間半ほど下山してスタート地点の登山口に戻ったが、このような素晴らしい里山に登山道を整備してくれたボランテイアの方々にあらためて敬意を表したい。
里山は、場所によって当然景色は変るが、植生も異なる。これまで宮城県内やその近県でカタクリや水芭蕉、ニリンソウが群落する里山を見てきたが、それに匹敵する感動を再び得て、里山の奥深さを再認識した登山であった。
応用生物学部 遠藤泰志
[画像:1] 登山口から見た三方倉山
2_2 石垣のような柱状節理
3 カタクリとイワウチワの群落