先発で3本塁打の大谷 ドジャース連覇へWS進出 米大リーグ、ナショナル・リーグ優勝決定シリーズのブルワーズ戦で(左から)先発し勝利投手となったドジャース・大谷翔平、1回に先頭打者、4回に2本目、7回に3本目の本塁打を放った。4連勝でワールドシリーズ進出を決め、シリーズMVPに選ばれた=10月17日、ロサンゼルス(共同)
【ドジャースあの時、あの瞬間最終回(第7回)】
ドジャースがワールドシリーズで激闘の末に2年連続のワールドチャンピオンに輝いた。決して順風満帆な25年シーズンではなかったが、頂点にたどり着いた。その裏側には何があったのか。今季象徴的な場面の「あの時、あの瞬間」に迫るー。最終回はリーグ優勝決定シリーズ第4戦、大谷翔平の1試合3発、6回10奪三振を刻んだ「あの夜」の裏側。
◆だいやまーく吹いていた逆風
10月17日。ブルワーズとのリーグ優勝決定シリーズを制して、2年連続のワールドシリーズ進出を決めた試合後、ロバーツ監督は主役の称賛が止まらなかった。「これはおそらく、ポストシーズン史上最高のパフォーマンスだった。これまで無数の試合があったが、彼が地球上で最高の選手と言われる理由が、まさに今夜に詰まっていた」。
シーズン後に大リーグ機構が選定した「伝説的瞬間」に選ばれた試合。大谷は場外弾を含む3本塁打を放り込み、投手としても躍動した。6イニング3分の0を投げて無失点、10奪三振。メジャーのリーグの頂点を争う舞台で、投打で異次元の輝きを放った。
シーズン後に大リーグ機構が選定した「伝説的瞬間」に選ばれた試合。大谷は場外弾を含む3本塁打を放り込み、投手としても躍動した。6イニング3分の0を投げて無失点、10奪三振。メジャーのリーグの頂点を争う舞台で、投打で異次元の輝きを放った。
主砲のベッツも、マンシーも「後になって、子供にこの1日を話すと思う」と語った歴史的1日。だが、大谷はこの伝説の瞬間が訪れるまで打撃で苦しんでいた。逆風が吹いていた。
◆だいやまーく指揮官からもハッパ
ポストシーズンの初戦、レッズとのワイルドカードシリーズ第1戦こそ、1試合2発の華々しい活躍をしたが、フィリーズとの地区シリーズは沈黙した。リーグ屈指の左腕を当てれられ、快音はぴたりと止まった。地区シリーズ4試合で18打数1安打。その存在感は薄らいだ。ドジャースというチームは10月が全て。ファンのSNSには、「大谷はプレーオフでは打てない」という失望の声が日に日に大きくなった。
そんな状況に、指揮官もハッパをかけた。リーグ優勝決定シリーズが始まる前、「翔平があのパフォーマンスでは優勝できない」と強めの言葉を口にした。誰よりも大谷に期待している監督は時折、この手法を取る。厳しい指摘をしても、大谷なら重圧を力に変えてくれると信じているからだ。
一方、米メディアからはシーズン中からくすぶっていた「二刀流懐疑論」が膨らんだ。ポストシーズンで不振だった大谷に、二刀流時の成績が悪いことを度々指摘し、打者専念論も出た。ミルウォーキーからロサンゼルスに移動し、第3戦前日に行われた15日の会見。米メディアは投打同時出場時の打撃成績が良くないことに、投球の負担が影響しているかを追及した。
大谷は「もちろん、(投打を)やらないよりやった方が体力的にきついのはシーズン中も同じ。それが直接的に関係しているかは分からないし、体感的にはそうではないと感じている。あまり関係はないと思う」と、いつものように淡々と話しながらも反論した。それでも、米記者は違う角度で二刀流時の難しさについて質問を重ねると、少し困惑しながら、「さっき言った通り。同じ質問なので...」。詳しく説明することはなかった。
いら立ちを見せることはなかったが、内心は分からない。シーズン後「何を言われたからって、変わることはない」と流したが、米記者の一人から「大谷はあの質問にいら立っていたようだ」とも。ただ、批判が集まる時、言葉ではなく、必ずグラウンドで結果を出してきた。それが大谷流だ。
◆だいやまーく誰もが『彼のBPを見たい』
その会見後の全体練習。突然の"ショータイム"に、メディアも、そして選手もざわついた。2023年9月4日の練習中で脇腹を痛めた時以来、772日ぶりに屋外でフリー打撃を行った。5セット、計32スイング中3連発を含む14発。5セット目には右翼後方の屋根にぶち当てる驚がくの推定150メートル"場外弾"を放った。
ドジャースナインは勢揃い。ロバーツ監督、ゴームズGMに加えて、カーショー、ロハス、マンシー、フリーマン、T・ヘルナンデスらが熱視線を送った。マンシーは振り返る。「翔平がフィールドで打撃練習をするって聞いて、チーム全員が残って見届けた。それだけで、彼がどれだけユニコーンか分かるでしょ。誰もが『彼のBPを見たい』と思った」。ベイツ打撃コーチは「移動の飛行機だったかな。彼がロバーツ監督と僕にテキストを送ってきた。『明日フィールドに出て打ちたい』って」と明かした。
大谷はこの突然の行動に「試したいことが何個かあった。ケージでは分からないこと。フィールドでそれが正しいのか確認作業がしたかった」。その2日後、スランプが嘘のように打ちまくり、二刀流懐疑論は一瞬のうちに消え去った。
◆だいやまーく今日はおいしいお酒を
ロバーツ監督は「彼が投球の日は打撃が落ちるなんて言われていたが、そういう声が逆に火をつけたと思う。初回を完璧に抑えたあと、打席でも集中していて、今日は特別な夜になると誰もが感じた」と語った。
大谷が信頼を置くプライアー投手コーチもこう語った。「あの才能をどちらかに限定するなんて、もったいない。彼は野球の両面でゲームを変えることができる。そして彼自身、次世代に二刀流は不可能じゃないというメッセージを送っている。簡単ではない。でも、彼がその道を切り拓いている。それは本当に特別なこと」。
試合後、スタジアムの壇上に上がった背番号17に「MVP」コールは鳴りやまなかった。リーグ優勝決定シリーズのMVPトロフィーを手にした大谷はファンにちゃめっけたっぷりに語りかけた。「あと4つ全力で勝ちに行きたい。みなさん、今日はおいしいお酒を飲んでください」。
ロサンゼルス・タイムズ紙は「もはや"ベーブ・ルース再来"の称号は比喩ではない」と称賛した。野球の神様は、ドジャー・スタジアムで二刀流の可能性をさらに広げた。(阿部太郎)=終わり=
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