少年付添人日誌弁護士会月報「付添人日誌」より転載したものです。
少年付添人を経験して(13・11月号)
二月より当番付添人なる制度が始まり、その第一号として大谷先生と私が当番付添人として出動することとなった。
私は、昨年の秋に入会したばかりで付添人については、全くの未経験であった。先輩方から「付添人は大変だ」ということはかなり聞かされていたし、今回の当番付添人制度についても、新人弁護士の間では、我々の負担が大きくないかとの不安の声も多く聞かれた。私自身も少なからず不安を抱いていた。
そんな中、大谷先生から出動の要請があり、報道関係者が来ているということもあって、はりきって出動した。大谷先生が指導担当ということで、しっかりと付添人についてご指導頂こうと接見に行った。
これまで国選での刑事事件は経験があるが、少年事件はどのようにやっていけばいいのか、全く分からない状態で、ひとまず通常の刑事事件と同様に事実関係や家族について少年に有利になりそうな事項について聞いていった。また、被害弁償を行ったり、自宅を訪問したりしていった。しかし、あくまでやっていることは、通常の刑事事件と同様に変わらず、少年に有利な事情を拾い出しているに過ぎず、少年の非行の原因に全く近づいていないことに気付いた。それを最も感じることになったのは、大谷先生がある事実を少年に語らせたことにある。
少年は事件前に仕事をしており、処分後も仕事に復帰できるということを少年より聞かされていたので、私は仕事の点についてはあまり気にしていなかった。ただ、少年はその仕事内容についてきちんと説明できなかったので、大谷先生がその点を追求したところ、実はその仕事先が組関係の事務所であったことを話したのである。
この事実は、少年にとっては不利な事情となるものではあるが、今後の少年の更生を考えるとこの仕事からは絶対に縁を切る必要があった。それと同時に少年が非行を犯した背景を知る重要な事実でもあった。調査官も当初は処分を迷っている様子であったが、この事実を知らされたことで、この少年の引っかかる部分が解消されたようだった。そして、最終的には、この少年は保護観察処分になったのである。
今回、大谷先生との付添人活動を通じて、少年事件は少年の良いところ悪いところ全てを明らかにし、少年自身を理解するところから出発すべきであることを学んだ。そういうことであれば、弁護士の経験にかかわらず、また、弁護士個々人のいろんなやり方で十分付添人活動はできることが分かった。この体験を活かして、今後、自分の付添人活動を実践していきたいと思う。
弁護士 田中裕司
目次
- 付添人日誌 (連続掲載第3回)(7・7月号)
- 付添人日誌 (連続掲載第2回)(7・4月号)
- 付添人日誌 (連続掲載第1回)(7・1月号)
- 付添人日誌 移送前の少年事件(被疑者国選)でできること(6・10月号)
- 付添人日誌 審判で一言もしゃべることができなかった少年(6・7月号)
- 付添人日誌 審判で一言もしゃべることができなかった少年(6・7月号)
- 付添人日誌(6・4月号)
- 付添人日誌(6・1月号)
- 付添人日誌(5・10月号)
- 付添人日誌(5・1月号)
- 付添人日誌 特定少年に関する付添人活動の報告(4・10月号)
- 付添人日誌(4・7月号)
- 付添人日誌(4・1月号)
- 付添人日誌(3・7月号)
- 付添人日誌(3・4月号)
- 付添人日誌(3・1月号)
- 付添人日誌(2・10月号)
- 付添人日誌 「受け子」にされた少年(2・7月号)
- 付添人日誌 付添人実務研修(2・4月号)
- 付添人日誌 伝わらなかった思い 伝えたい思い(1・10月号)
- 付添人日誌(30・9月号)
- 付添人日誌 すべての少年に国選付添人を!(30・8月号)
- 付添人日誌(30・7月号)
- 付添人日誌 〜迅速な初動対応と環境調整により保護観察処分を得た一例〜(30・3月号)
- 付添人日誌(30・1月号)
- 付添人日誌(29・12月号)
- 付添人日誌(29・10月号)
- 付添人日誌(29・9月号)
- 付添人日誌(29・8月号)
- 付添人日誌(29・7月号)
- 付添人日誌(29・6月号)
- 付添人日誌(29・2月号)
- 付添人日誌 初めての少年付添人事件を担当して(28・1月号)
- 付添人日誌(27・11月号)
- 付添人日誌 保護者の悩み(27・10月号)
- 付添人日誌 初めての付添事件(27・8月号)
- 付添人日誌 法テラス「子どもに対する法律援助」制度の活用−触法・否認事件−(27・7月号)
- 付添人日誌 少年が広げてくれる就労支援の輪(27・6月号)
- 付添人日誌(27・5月号)
- 付添人日誌 非行前の付添人活動(27・3月号)
- 付添人日誌(27・2月号)
- 付添人日誌 国選付添人としての活動報告(26・10月号)
- 付添人日誌(26・9月号)
- 付添人日誌(26・8月号)
- 付添人日誌 はじめての付添人活動(26・7月号)
- 付添人日誌「初めての少年付添人活動」(26・6月号)
- 付添人日誌(25・10月号)
- 付添人日誌(25・5月号)
- 付添人日誌「子離れ親離れ」(25・3月号)
- 付添人日誌(25・1月号)
- 付添人日誌(24・11月号)
- 付添人日誌 〜子どもシェルターを始めます〜(24・1月号)
- 付添人日誌 被害弁償と親の思い(23・12月号)
- 付添人日誌 逆送少年(23・6月号)
- 付添人日誌(23・5月号)
- 付添人日誌(22・9月号)
- 付添人日誌(22・5月号)
- 付添人日誌(20・2月号)
- 付添人日誌(18・8月号)
- 付添人日誌(18・7月号)
- 付添人日誌(17・10月号)
- 付添人日誌〜やってはいないけど・・・〜(17・8月号)
- 雨上がりには虹を(15・4月号)
- 不処分事件から見えてくる少年事件の問題(その3)(14・7月号)
- 処分事件から見えてくる少年事件の問題(その2)(14・6月号)
- 女の子からのラブコール(14・5月号)
- 不処分事件から見えてくる少年事件の問題(その1)(14・5月号)
- 盾としての付添人(14・4月号)
- 少年院送致処分が、抗告審で差戻後、保護観察処分に(14・3月号)
- 付添人日誌(14・2月号)
- 被害者に少年の気持ちが通じた!の巻(14・1月号)
- 少年のパートナーとして(13・12月号)
- 少年付添人を経験して(13・11月号)
- 当番付添人制度の現在・未来(13・10月号)