イベント報告
2013年10月26日開催シンポジウム「密保護法で社会はどう変わるのか」ご報告
10月26日、弁護士会館3階ホールで標題のシンポジウムを開催しました。
前日の25日、「特定秘密の保護に関する法律案」が閣議決定され国会への上提が必至となったため、この法案に対する市民の関心の高まりを反映し、当日は、3階ホールが満員となりました。
開会に当り、橋本千尋会長から
「日弁連と52の単位会全てが反対の会長声明を出している。福岡では10月11日に反対声明を出している。審議を通じて廃案にするように取り組みを強めよう。やるべきことは沢山ある」
との力強い挨拶がありました。
シンポでは、近藤恭典会員から、法案の危険性について次のような報告がされました。
(1) 広すぎる秘密の範囲
法案が対象とする秘密は、(1)防衛(2)外交(3)特定有害活動の防止(4)テロリズムの防止の4分野であるが、1985年に廃案となった「スパイ防止法」よりもその範囲が拡大されている。
掲げられている別表も、抽象的で広範な事項に及んでおり、限定性を欠いている。
しかも、指定権者は行政の長であり、その是否を問う制度も事前、事後ともになく、国民にとって必要な情報が行政の恣意で隠蔽されてしまいかねない。
(2) 処罰範囲が広範であいまい。罪刑法定主義に反する恐れ
法案では、未遂、過失による漏えい行為、共謀、教唆、煽動という行為まで処罰の対象となっており、報道機関の取材活動、市民の調査活動等が処罰の対象となりかねない。
この刑罰は、公務員だけでなく、マスコミ、市民も対象とされている。
(3) 国会議員も対象とされており、国政調査権の行使が大きく制約されることになる。
また、国会の「秘密審議」が乱発されかねない。
(4) 刑事裁判の問題
刑事裁判では、真実に、秘密とされるべきものか否かを審理することができず、被告人の防禦権が侵害される。
弁護人にも守秘義務が課されるであろう。
(5) 秘密に関わる者の適正評価
行政の長は、特定秘密を扱おうとする者の経歴、病歴、信用情報等を本人のみならず、その家族についてまで調査し、不適当と判断された者を当該業務から排除できることとなっており、重大なプライバシー侵害を招く恐れがある。
しかも、行政の長は、これらの調査を都道府県警察に委託することができるため、収集された個人情報が、警察において、保存、利用される危険性もある。
近藤会員の報告に続き、前泊博盛沖縄国際大学教授から
「日米地位協定と秘密保護法 ― 沖縄からみた日本の民主主義 ―」
と題して講演をいただきました。
前泊教授は、最近「日米地位協定入門」(創元社)を刊行されています。
教授は、この本の刊行の元となった、外務省作成の機密文書「日米地位協定の考え方」を入手し、琉球新報に掲載したことについて次のように報告されました(この報道は、2004年日本ジャーナリスト会議大賞を受賞しています)。
新聞誌面への掲載前に、外務省の幹部から「もし報道したら、外務省には出入りできなくなる」と言われた。報道後、外務省は「そんな文書は存在しない」という対応をとり、機密文書の存在と内容を秘匿し続けようとしている。「この新聞報道当時、この秘密保護法案があったならば、報道することもできなかったし、入手行為も処罰されていたでしょう」
また、沖縄国際大学構内への米軍ヘリコプター機墜落事故の際、墜落現場とその周辺が、いち早く、米軍の全面的管理下に置かれ、事故の原因究明は勿論、危険物資の有無についても、沖縄県民は、一切、知る機会を与えられなかったことを例に日米地位協定の不合理さを訴えられました。
最後に同教授は、森本前防衛相が「沖縄の基地問題は、軍事問題ではなく政治問題である。沖縄の基地を日本国内のどこも引き受けないのが問題である」との発言を引用し、沖縄では「沖縄差別」との怨嗟の声が大きくなっていることを報告されました。
1985年の「スパイ防止法案」は世論と全弁護士会の反対によって廃案となりました。しかし、その後、「自衛隊法」の改正によって、同法案の実質的な取り込みがなされました。
このことは、廃案に追い込んだらそれで一件落着とならないことを教訓として残しています。
もしかしたら、この月報がお手元に届くころには、「法案」が成立しているかもしれません。
仮に、法律が成立しても、決してそれで終りということにしてはなりません。
法律が成立しても、それを適用させなければ良いのです。
そのためにも、情報公開制度の充実、内部通報者の保護の徹底等を推し進める必要があり、弁護士、弁護士会の果たす役割は決して小さいものではありません。
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