プレスリリース
コーヒーの健康効果は遺伝子で決まる? 〜遺伝的多型を考慮したコーヒーと腎機能の関係〜
コーヒーは世界中で広く親しまれている飲み物で、これまでに心臓病やがん、糖尿病などのリスクを下げる可能性があることが報告されています。腎機能は高血圧や高血糖といった心血管代謝系のリスク因子と密接に関連しているため、コーヒーが腎機能に対しても保護的に働く可能性が考えられますが、これまでの研究では一貫した結果が得られていませんでした。
そこで、徳島大学大学院医歯薬学研究部医学域医科学部門メディカルAIデータサイエンス分野(旧予防医学分野)渡邊毅助教及び藤田医科大学医療科学部研究推進ユニット予防医科学分野藤井亮輔講師らの研究グループは、大規模調査データを用いてコーヒー摂取と腎機能の関係を解析しました。その結果、コーヒーと腎機能の関係には、コーヒー摂取行動やカフェイン代謝に関連する遺伝的多型が影響することが示唆されました。
本研究成果は、令和7年10月15日付で国際学術誌『European Journal of Nutrition』(DOI: 10.1007/s00394-025-03819-2)に掲載されました。
そこで、徳島大学大学院医歯薬学研究部医学域医科学部門メディカルAIデータサイエンス分野(旧予防医学分野)渡邊毅助教及び藤田医科大学医療科学部研究推進ユニット予防医科学分野藤井亮輔講師らの研究グループは、大規模調査データを用いてコーヒー摂取と腎機能の関係を解析しました。その結果、コーヒーと腎機能の関係には、コーヒー摂取行動やカフェイン代謝に関連する遺伝的多型が影響することが示唆されました。
本研究成果は、令和7年10月15日付で国際学術誌『European Journal of Nutrition』(DOI: 10.1007/s00394-025-03819-2)に掲載されました。
ポイント
- 研究の背景と経緯
コーヒーと腎機能の関係について一貫した結果が得られておらず、その要因として、カフェイン代謝における遺伝的多型※(注記)1の影響などの個人間の差が影響することが考えられます。 - 研究の内容と成果
日本多施設共同コーホート(J-MICC)研究※(注記)2のデータの解析結果により、コーヒーと腎機能の関係にはコーヒー摂取行動やカフェイン代謝と関係する 遺伝的多型が影響することが示唆されました。 - 今後の展開
本研究により、コーヒー摂取が健康に及ぼす影響を解析する上で、遺伝的多型を含む個人間の差異に注目することも重要であることが示唆されました。
コーヒーは世界中で広く飲まれている飲料であり、心血管疾患、がん、2型糖尿病などのリスクを下げうることが多く報告されています。腎機能は高血圧や高血糖といった心血管代謝系のリスク因子と密接に関連しているため 、コーヒーが腎機能に対しても保護的に働く可能性が考えられますが、これまでの研究では一貫した結果が得られていませんでした。
本研究では、J-MICC研究のデータを用いて、コーヒー摂取行動に関連する3つの遺伝的多型rs2074356(HECTD4※(注記)3、rs762551(CYP1A2)※(注記)4、rs4410790(AHR)※(注記)5を考慮してコーヒーと腎機能の関係を検討しました。35〜69歳の日本人7,468人(男性3,515人、女性3,953人)を対象にして、遺伝的型ごとの集団 (コーヒー摂取が多くなる遺伝子型、中程度になる遺伝子型、少なくなる遺伝子型) に分け、集団ごとに、年齢、性別などの交絡因子を調整し、慢性腎不全(CKD)をアウトカムとした多変量ロジスティック回帰分析※(注記)6を行いました。
解析の結果、コーヒー摂取が多くなる遺伝子型を持つ人(rs2074356(HECTD4)AA型)においてコーヒーの摂取量が多いほどCKDの有病率が低いという結果が得られました。またrs762551(CYP1A2)、rs4410790(AHR)ではカフェイン代謝速度が中くらいの遺伝子型の人(ヘテロ型)においてコーヒー摂取とCKDの有病率の間に負の関連がみられました。
本研究の結果から、コーヒーと腎機能の関係には、コーヒー摂取行動やカフェイン代謝に関連する遺伝的多型が影響することが示唆されました。
しかし、本研究では、コーヒーに含まれるカフェイン以外の成分やその他の遺伝的多型について考慮できていないため、さらなる検討が必要です。
本研究では、J-MICC研究のデータを用いて、コーヒー摂取行動に関連する3つの遺伝的多型rs2074356(HECTD4※(注記)3、rs762551(CYP1A2)※(注記)4、rs4410790(AHR)※(注記)5を考慮してコーヒーと腎機能の関係を検討しました。35〜69歳の日本人7,468人(男性3,515人、女性3,953人)を対象にして、遺伝的型ごとの集団 (コーヒー摂取が多くなる遺伝子型、中程度になる遺伝子型、少なくなる遺伝子型) に分け、集団ごとに、年齢、性別などの交絡因子を調整し、慢性腎不全(CKD)をアウトカムとした多変量ロジスティック回帰分析※(注記)6を行いました。
解析の結果、コーヒー摂取が多くなる遺伝子型を持つ人(rs2074356(HECTD4)AA型)においてコーヒーの摂取量が多いほどCKDの有病率が低いという結果が得られました。またrs762551(CYP1A2)、rs4410790(AHR)ではカフェイン代謝速度が中くらいの遺伝子型の人(ヘテロ型)においてコーヒー摂取とCKDの有病率の間に負の関連がみられました。
本研究の結果から、コーヒーと腎機能の関係には、コーヒー摂取行動やカフェイン代謝に関連する遺伝的多型が影響することが示唆されました。
しかし、本研究では、コーヒーに含まれるカフェイン以外の成分やその他の遺伝的多型について考慮できていないため、さらなる検討が必要です。
用語解説
※(注記)1)遺伝的多型
人それぞれの体質の違いを生み出す、DNAの塩基配列の個人差のことです。この個人差によって病気へのかかりやすさや、薬の効きやすさ(今回の場合、コーヒー摂取行動やカフェイン代謝のしやすさ)などに違いが生まれます。
※(注記)2)日本多施設共同コーホート(J-MICC)研究
2005年に開始された、全国約10万人を対象とした、分子疫学コホート研究です。当初10万人×20年の追跡をもとに開始されましたが、徳島大学の他、愛知県がんセンター、名古屋大学をはじめ、全国の施設と共同で行っています。「cohort」の日本語表記としては「コホート」が一般的ですが、J-MICCの名称では「コーホート」を用いています。
※(注記)3)rs2074356(HECTD4)
習慣的なコーヒーの摂取量に関係する遺伝的多型です。GG型、GA型、AA型があり、A型を1つもつごとに1日あたり0.2杯多くコーヒーを飲むという関連が報告されています。
※(注記)4)rs762551(CYP1A2)
カフェインの代謝に関与する酵素の遺伝的多型です。
※(注記)5)rs4410790(AHR)
CYP1A2の制御に関係する遺伝的多型です。
※(注記)6)多変量ロジスティック回帰分析
ある要因(コーヒー摂取量)がアウトカム(慢性腎不全)の有無にどれくらい影響するかを、年齢や性別などの影響を除いて調べる方法です。
謝辞
本研究は、論文の共著者に加え、J-MICC研究にご協力いただいた方々の支援の下で行われました。
(詳細はJ-MICC Studyホームページをご参照ください)
また、文部科学省がん特定領域研究(No.17015018)、がん支援(No.221S0001)、日本学術振興会科学研究費補助金学術変革領域研究コホート・生体試料支援プラットフォーム(No.16H06277&22H04923)、若手研究(20K18659&24K20112)、本庄八郎記念お茶財団(G34-037)、科学技術振興機構共創の場形成支援プログラム(JPMJPF2018)、徳島大学KundaraPOCの支援を受けて実施されました。
(詳細はJ-MICC Studyホームページをご参照ください)
また、文部科学省がん特定領域研究(No.17015018)、がん支援(No.221S0001)、日本学術振興会科学研究費補助金学術変革領域研究コホート・生体試料支援プラットフォーム(No.16H06277&22H04923)、若手研究(20K18659&24K20112)、本庄八郎記念お茶財団(G34-037)、科学技術振興機構共創の場形成支援プログラム(JPMJPF2018)、徳島大学KundaraPOCの支援を受けて実施されました。
論文情報
掲載誌
European Journal of Nutrition
論文名
Coffee intake, genetic variants, and chronic kidney disease: a cross-sectional analysis of the Japan Multi-Institutional Collaborative Cohort (J-MICC) study.
著者名
Unohara T, Fujii R, Watanabe T, Matsuura A, Torii Y, Kita K, Ishizu M, Hara M, Nishida Y, Nagayoshi M, Matsunaga T, Okada R, Kubo Y, Tanoue S, Hidaka Y, Nishiyama T, Nakagawa-Senda H, Koyama T, Watanabe I, Kuriki K, Takashima N, Kondo K, Nakatochi M, Momozawa Y, Tamura T, Matsuo K; J-MICC Study group.