2の自然対数
2の自然対数(にのしぜんたいすう)は、自然対数関数 log x の x = 2 での値であり、log 2 と表記する。2の常用対数との混同を避けるため ln 2 あるいは底を明記して loge 2 とも書かれる。log 2 は正の実数であり、その値は
- log 2 = 0.69314 71805 59945 30941 72321...
である。この数は無理数であるので数字の循環しない無限小数である。さらに超越数であるため、代数方程式の解にはならない。連分数表記では
- log 2 = [0; 1, 2, 3, 1, 6, 3, 1, 1, 2, 1, 1, 1, 1, 3, 10, ...]
となる。また、この数は、核反応や化学反応において物質 濃度の半減期を求める際に現れる数である。
定義
[編集 ]ネイピア数 e を底とした実数 x を変数とする対数関数 log x が x = 2 のときにとる値が log 2 である。対数関数は指数関数の逆関数であるので、
- ez = 2
を満たすただ一つの実数の z が log 2 である。
対数関数のテイラー展開は
- {\displaystyle \log(1+x)=\sum _{n=1}^{\infty }{\frac {(-1)^{n+1}}{n}}x^{n}\quad (|x|<1)}
である。これに形式的に x = 1 を代入すると
- {\displaystyle \log 2=\sum _{n=1}^{\infty }{\frac {(-1)^{n+1}}{n}}=1-{\frac {1}{2}}+{\frac {1}{3}}-{\frac {1}{4}}+\cdots }
となるが、この級数は実際に log 2 に収束することが知られている(→交項級数、アーベルの連続性定理)。
数学的性質
[編集 ]- {\displaystyle \eta (s)=\sum _{n=1}^{\infty }{\frac {(-1)^{n+1}}{n^{s}}}}
と定義されるので、上記のテイラー展開から、
- η(1) = log 2
である。また、log 2 は以下のような級数でも求められる。
- {\displaystyle \log 2=\sum _{n=1}^{\infty }{\frac {1}{n\cdot 2^{n}}}}
- {\displaystyle \log 2=\sum _{n=0}^{\infty }(-1)^{n}\left({\frac {1}{3n+1}}-{\frac {1}{3n+2}}+{\frac {1}{3n+3}}\right)}
- {\displaystyle \log 2={\frac {1}{2}}\sum _{n=0}^{\infty }{\frac {1}{(-4)^{n}}}\left({\frac {2}{4n+1}}-{\frac {1}{4n+3}}-{\frac {1}{4n+4}}\right)}
- {\displaystyle \log 2={\frac {1}{3}}\sum _{n=0}^{\infty }{\frac {1}{(-27)^{n}}}\left({\frac {3}{6n+1}}-{\frac {2}{6n+3}}-{\frac {1}{6n+4}}\right)}
さらに、
- {\displaystyle \sum _{n=1}^{\infty }{\frac {(-1)^{n+1}}{n}}}
の第 N 項までの部分和と log 2 との差は
- {\displaystyle \sum _{n=1}^{N}{\frac {(-1)^{n+1}}{n}}-\log 2=(-1)^{N}\left({\frac {1}{2N}}+\sum _{n=0}^{\infty }{\frac {(-1)^{n}T_{n}}{4^{N}N^{2n}}}\right)}
と表される。ここで、Tn は n 番目のタンジェント数である。
積分では
- {\displaystyle \int _{1}^{2}{\frac {dx}{x}}=\log 2}
であるから、双曲線 y = 1/x と直線 x = 1, x = 2 および y = 0 (x 軸)とに囲まれた図形の面積は log 2 である。
リンデマンの定理より log 2 は超越数であり、したがって無理数である。
log 2 が正規数かどうかは分かっていない。
その他の性質
[編集 ]反応速度
[編集 ]原子核反応や化学反応の速度は、反応物質の濃度に比例する場合が多い。この法則をもとに濃度の半減期を求めると、以下のように log 2 が現れる。
まず濃度を C, 反応速度定数を k とおくと、C を時間 t で微分したものがこの場合の速度なので、
- −dC/dt = kC
となる。濃度は単調減少するので、速度の符号は負であることに注意。ここで、
を与えて定積分すると、
- {\displaystyle \int _{C_{0}}^{C_{0}/2}{\frac {dC}{C}}=\int _{0}^{\tau }-kdt}
- {\displaystyle \log {\frac {C_{0}/2}{C_{0}}}=-k\tau }
となり、
- log 2 = kτ
となる。すなわち、上記の微分方程式で表されるあらゆる反応において、log 2 は反応速度定数と半減期の積になっている。
72の法則
[編集 ]複利計算における「倍増年」(元利合計が2倍になる年数)の近似計算にも log 2 が現れる。
元金を X (> 0)、年利率を r (> 0) とし、n 年後に元利合計が2倍になるとすれば、
- X (1 + r)n = 2X
となる。この両辺の自然対数をとると
- n log(1 + r) = log 2
- n = log 2/log(1 + r)
ここで、r ≪ 1、すなわち r が 1 に比べて十分に小さい場合には、log(1 + r) ≒ r と近似できるので、
- n ≒ (log 2)/r ≒ 0.693/r
となる。
すなわち「倍増年」は、「0.693を年利で割った値」又は「69.3を年利(%表示)で割った値」で近似できる。実用上は、69.3を切りの良い70や約数の多い72で置き換えることが多い。たとえば、年利が3%ならば、72÷3 = 24 なので、約24年後に元利合計が倍増する。この法則は、72の法則と呼ばれ、15世紀のイタリアで知られていた。