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蝸牛考

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
『蝸牛考』
(かぎゅうこう)
著者 柳田國男
発行日 1930年 7月10日1943年 2月25日1980年 5月16日
発行元 刀江書院創元社岩波書店
ジャンル 日本語日本語の方言
日本の旗 日本
形態 言語誌叢刊、創元選書岩波文庫
ページ数 173頁、229頁、236頁
公式サイト 内容紹介
コード ISBN 4-00-331387-9
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蝸牛考』(かぎゅうこう)は、柳田國男の語学書。

概要

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1927年(昭和2年)[注 1] 、柳田は『人類学雑誌』に「日本各地では蝸牛(カタツムリ)をどのように言うのか」という方言の調査結果をまとめた論文を発表した。ヨーロッパで発達した言語地理学方法論日本語の方言に適用したのである[3] 。なお、柳田は「蝸牛考」以外にも、『民族』『アサヒグラフ』『信濃教育』などに、方言に関する文章を連載している[4]

1930年(昭和5年)、刀江書院から発行[5] 。また、1943年(昭和18年)に創元選書に収録[6] 1980年(昭和55年)に岩波文庫にも収録された[7]

目次

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  1. 言語の時代差と地方差
  2. 四つの事実
  3. 方言出現の遅速
  4. デンデンムシの領域
  5. 童詞と新語発生
  6. 二種の蝸牛の唄
  7. 方言転訛の誘因
  8. マイマイ領域
  9. その種々なる複合形
  10. 蛞蝓蝸牛
  11. 語感の推移
  12. 命名は興味から
  13. 上代人の誤謬
  14. 単純から複雑へ
  15. 語音分化
  16. 訛語と方言と
  17. 東北と西南と
  18. 都府生活と言語
  19. 物の名と知識
  20. 方言周圏論
  21. 蝸牛異名分布表

内容

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柳田國男は日本全国のカタツムリの方言(呼び名)を調べたところ、カタツムリの方言は以下の表のように京都を中心とした同心円状に分布しているという事実を発見した。

カタツムリの方言(呼び名)
場所 方言 時代
近畿地方 デデムシ 最も新しい
中部地方中国地方など マイマイ 新しい
関東四国 カタツムリ 中間
東北地方九州 ツブリ 古い
東北地方の北部・九州の西部 ナメクジ 最も古い

そして、この事実を一般化して、「(カタツムリの名称に限らず)一般に方言というものは時代に応じて京都で使われていた語形が地方に向かって同心円状に伝播していった結果として形成されたものなのではないか」とする方言周圏論を提唱した[1] [2] 。これによって、山間僻地の方言が、古い時代の由緒ある中央語だった可能性の強いことが科学的に論証された[8]

受容

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柳田の『蝸牛考』における考えは、江戸時代以前から認められる「古語は方言に残る」という考えとも合致することから[注 2] 、方言形成の過程を解釈する際の説明原理として広く受け入れられた[2] [3] 。例えば1930年頃から、橘正一、佐藤清明などの人々が方言関係の論文を発表するようになったが、いずれも柳田の考えに共鳴したものであった[4] 。また、各地に方言研究会が組織されてくるようにもなった[4]

書誌情報

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初出

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単行本

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全集収録

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脚注

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注釈

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  1. ^ この年には東条操が『大日本方言地図』と『国語の方言区画』を発表している[1] [2]
  2. ^ 柳田自身も「地方に古語が残る」ということについて、1905年頃から関心を持っていた地名の研究を通じて体験していた[8]

出典

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参考文献

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  • 徳川宗賢 著「方言研究の歴史」、大野晋柴田武 編『岩波講座日本語11:方言』岩波書店、1977年11月。ISBN 4000100718 
  • 大田栄太郎 著「方言研究史」、飯豊毅一・日野資純・佐藤亮一 編『講座方言学3:方言研究の問題』国書刊行会、1986年5月。ISBN 4336019746 
  • 宮治弘明 著「方言研究史」、徳川宗賢・真田信治 編『新・方言学を学ぶ人のために』世界思想社、1991年2月、242-263頁。ISBN 4790703878 
  • 小林隆柳田國男」『日本語学』第35巻第4号、明治書院、2016年4月、116-119頁。 

関連項目

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外部リンク

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