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清里焼酎

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
清里町の畑と斜里岳

清里焼酎(きよさとしょうちゅう)は、北海道 清里町で製造されるジャガイモを主原料とした焼酎。同町で収穫されたコナヒメを原料とする[1]

製法

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は白麹菌と大麦を用いて2日間かけて製麹する[2] 。発酵用タンクに水とこの麦麹、酵母を入れて1次仕込みを行い、約1週間発酵させる[2] 。洗浄して1時間蒸した後に粉砕したジャガイモおよび水を1次仕込みで得られたもろみに加え、さらに約2週間発酵させる[2] 。こうして得られた2次もろみを単式蒸留器蒸留し、数ヵ月間貯蔵した後にアルコール度数の調整などを行ってビン詰めし、出荷する[2]

歴史

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1970年代半ばの清里町は、基幹産業の農業において耕地面積の半分以上がジャガイモ畑となっており[3] 、輸入コーンスターチの普及や魚肉練り製品市場の伸び悩みによるデンプン需要の低下・ジャガイモシストセンチュウ等連作障害による病虫害の発生で成長が見込めず[4] 、小麦やテンサイと合わせ原料作物の作付が多い状況で住民から特産品開発を求める声が上がり[1] 、デンプンを用いたどぶろくが美味しかったとの住民の経験や[4] 、戦時中に野付牛町(現・北見市)でジャガイモを発酵させての燃料用アルコール精製が行われていたことに着想を得て焼酎の開発を決定[1]

町内のジャガイモは当時99.7%がデンプン採集用に出荷され[4] 、新規用途や特産品の開発および観光振興や農業振興を目的として1975年4月に清里町焼酎醸造事業所が設立された[3] 。当初は旭川市の合同酒精工場を視察するも糖蜜が原料となっており参考とならず[5] 国税庁醸造試験所(現・酒類総合研究所)に町職員を派遣するなどして技術を習得し[3] 、サツマイモ焼酎の製法を参考にしつつジャガイモに加え二条大麦の麹を用いて地元の農産物を原料にした製法を確立し[5] 、地元のテンサイ糖を加えるといった工夫も凝らした[6] 1976年に中学校の廃校舎を用いて醸造試験研究所を建設し日本初のジャガイモ焼酎の試験醸造に着手[6] 。1977年までの2年間は試験醸造免許として各年3,800リットルを生産した後[5] 、1978年6月網走税務署から製造免許を取得し同年末には町民向けに試作品を配布の後[4] 1979年に初の製品「きよさと」を発売[6] 。当初は年間に4合瓶3.3万本を製造し2.7万本を町内の小売店で販売し[4] 、1980年代前半には約4万本を生産し毎月10日に町内15の酒店で各店170本ずつを販売する形とし[7] 、30分程度で売切れとなり「幻の焼酎」とも呼ばれた[5]

1982年には札幌市内のデパートでも取り扱いを行い[7] 、1986年には現在の醸造所が完成し本格量産を開始[6] 1994年に「浪漫倶楽部」という銘柄を発売[8] 。ピーク時の2004年には年間90klの販売を記録したものの、2013年には47klと半減したこともあり[6] 江戸川大学社会学部にプロデュースを委託してデザインを更新[9] 。銘柄も「北海道 清里」に統一し[6] 2015年にはグッドデザイン賞を受賞した[9] 。2023年度時点では年間約44klを販売し5年間の長期熟成酒や樫の樽での熟成を行ったものなど4品目を展開している[1] 。また2011年からは焼酎を用いたチョコレートやパウンドケーキ等の菓子も販売されており、FMあばしりでのラジオドラマの制作を行う等のPRも行っている[10]

脚注

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  1. ^ a b c d 発信地域から清里 ジャガイモ焼酎半世紀(上) - 北海道新聞2025年2月18日3面
  2. ^ a b c d 清里焼酎醸造所 清里焼酎が出来るまで
  3. ^ a b c 長屋将木 2007, p. 231
  4. ^ a b c d e 神田健作「ルポ「地力対策」と結びついた馬鈴薯焼酎 斜里郡清里町の実践」 - 北海道経済1979年5月号(北海道経済研究所)
  5. ^ a b c d 大橋道生「山村・過疎地の活性化を目指して 北の大地ジャガイモ焼酎「きよさと」の味」 - 地方議会人1984年7月号(中央文化社)
  6. ^ a b c d e f 発信地域から清里 ジャガイモ焼酎半世紀(中) - 北海道新聞2025年2月20日3面
  7. ^ a b ジャガ酎 増産できぬ幻の酒 珍しさ手伝い一躍人気商品に - ニッポン新味覚地図(読売新聞社 1983年)
  8. ^ 清里焼酎醸造所 清里焼酎とは
  9. ^ a b グッドデザイン賞 受賞対象名 じゃがいも焼酎 北海道 清里
  10. ^ 発信地域から清里 ジャガイモ焼酎半世紀(下) - 北海道新聞2025年2月21日3面

参考文献

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外部リンク

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