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松浦優

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松浦 優
まつうら ゆう
人物情報
生誕 1996年(28 - 29歳)
国籍 日本の旗 日本
出身校 九州大学大学院人間環境学府
学問
研究分野 社会学
フェミニズム
クィア理論
メディア論
研究機関 九州大学
学位 博士(人間環境学)
特筆すべき概念 対人性愛中心主義
ヒューマノジェンダリズム
影響を受けた人物 ジュディス・バトラー
アルフレッド・シュッツ
主な受賞歴 第23回日本社会学会奨励賞
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松浦 優(まつうら ゆう、1996年 - )は、日本の社会学者。専門は社会学およびクィア・スタディーズ[1]

二次元キャラクターや物語を、生身の人間とは異なる存在として、性的に欲望するセクシュアリティ」(二次元性愛)に関する社会学的調査とクィア理論的研究を専門に行っている[2] 。また、アセクシュアルアロマンティックフィクトセクシュアルに関する研究を行っている[3] [4]

経歴

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日本学術振興会特別研究員DC2を経て、2024年3月に九州大学大学院人間環境学府博士後期課程を修了[1] [2] 。博士論文「二次元性愛の抹消と抵抗可能性に関する社会学的研究」で博士(人間環境学)を取得[5] 。2024年4月より九州大学大学院人間環境学研究院学術協力研究員。

研究

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二次元性愛やフィクトセクシュアルの人々が被る差別について研究を行っている。こうした差別の背景にある社会的規範を表す用語として、「対人性愛中心主義」と「ヒューマノジェンダリズム」[注釈 1] という理論概念を提起した[6] [7] [8]

ジュディス・バトラーの「字義どおり化」概念を批判的に援用しつつ、異性愛規範だけでは説明できない問題として、強制的性愛対人性愛中心主義があると指摘した[8] 。クィア研究者の藤高和輝は、対人性愛中心主義に関する松浦の理論研究を「規範的社会によって傷ついた人々を癒し世界を異化する実践」として「高く評価」している[8]

差別に関する社会学理論研究において、「排除の対象としてあからさまに名指されるのとは異なる、差異化をともなわない周縁化」があることを指摘し、それを「抹消」と概念化したうえで、アルフレッド・シュッツ現象学的社会学に依拠して理論的考察を行った[9]

活動

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2024年、フィクトセクシュアルに関する啓発団体「Fictosexual Perspective」を設立し、フィクトセクシュアルの人々の経験や思考をアーカイブする同人誌を制作している[7] [10]

受賞歴

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  • 2024年 - 論文「抹消の現象学的社会学」で、第23回日本社会学会奨励賞[論文の部][11]

著書

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単著

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分担執筆

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主要な学術論文

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  • 「アニメーション的な誤配としての多重見当識:非対人性愛的な「二次元」へのセクシュアリティに関する理論的考察」『ジェンダー研究』25号、pp.139-157、2022年、doi:10.24567/0002000551
    • 繁体中国語訳「作為賦生式誤配的多重定向力:非對人性戀之對「二次元」性特質的相關理論考察」(訳:SH Liao・靈師)、『臺大宅研《球根|Rhizome》』、2023年、https://vocus.cc/article/63e50cb5fd89780001297a30)
  • 「抹消の現象学的社会学:類型化されないことをともなう周縁化について」『社会学評論』第74巻第1号、pp.158-174、2023年、doi:10.4057/jsr.74.158(第23回日本社会学会奨励賞[論文の部]受賞)

脚注

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注釈

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  1. ^ ヒューマノジェンダリズムとは、シスジェンダリズム (英語版)に倣った造語で、「正当なジェンダーは生物種としての人間によって実体化されるものだという考え方」である[6]

出典

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  1. ^ a b "アセクシュアル アロマンティック入門 性的惹かれや恋愛感情を持たない人たち/松浦 優 | 集英社 ― SHUEISHA ―". 集英社 ― SHUEISHA ―. 2025年1月26日閲覧。
  2. ^ a b "松浦 優 (Yuu Matsuura) - マイポータル - researchmap". researchmap.jp. 2025年1月26日閲覧。
  3. ^ 中村彩 (2024). "書評 稲原美苗・川崎唯史・中澤瞳・宮原優編著『フェミニスト現象学──経験が響きあう場所へ』". フランス哲学・思想研究 29: 210–212. doi:10.51086/sfjp.29.0_210 . https://www.jstage.jst.go.jp/article/sfjp/29/0/29_210/_article/-char/ja/ . 
  4. ^ 岩崎はなえ. "フツーの恋愛、性愛ってなに?『ACE アセクシュアルから見たセックスと社会のこと』刊行記念トークレポ | me and you little magazine & club". meandyou.net. 2025年1月26日閲覧。
  5. ^ 松浦優 (2024). "二次元性愛の抹消と抵抗可能性に関する社会学的研究". 博士論文. https://hdl.handle.net/2324/7182279 . 
  6. ^ a b 廖希文・松浦優 (2024). "増補 フィクトセクシュアル宣言 : 台湾における〈アニメーション〉のクィア政治". 人間科学共生社会学 13: 1-37. doi:10.15017/7236466 . https://hdl.handle.net/2324/7236466 . 
  7. ^ a b 廖希文郝柏瑋 (2024). "非對人性戀支持/自助社群如何可能? 從紙性戀處境、抹消/破抹消與開放式對話出發". 文化研究季刊 (188): 1-21. ISSN 2076-2755 . https://www.csat.org.tw/Journal.aspx?ID=22&ek=236&pg=1&d=4191 . 
  8. ^ a b c 羽生有希 (2024). "イベント報告 強制的(異)性愛に抗う: Aセクシュアルの視点から". ジェンダー&セクシュアリティ (19): 133–138. ISSN 18804764 . https://icu.repo.nii.ac.jp/records/2000143 . 
  9. ^ 稲月正平沢和司第23回日本社会学会奨励賞」『日本社会学会ニュース』第243号2025年1月17日、16面。2024年1月26日閲覧。
  10. ^ "Fセク関連情報サイト:フィクトセクシュアルの視座から". Fセク関連情報サイト:フィクトセクシュアルの視座から. 2025年1月26日閲覧。
  11. ^ "過去の受賞者について | 日本社会学会". 日本社会学会 | Just another WordPress site (2010年2月15日). 2025年1月26日閲覧。
  12. ^ "「紀伊國屋じんぶん大賞2025 読者と選ぶ人文書ベスト30」を発表". 共同通信PRワイヤー (2025年1月10日). 2025年1月26日閲覧。

関連項目

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外部リンク

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松浦 優 (Yuu Matsuura) - マイポータル - researchmap

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