口がかわくという症状は正確には唾液分泌の低下や口腔粘膜の変化による口内乾燥感と脱水に伴う口渇感とに区別
されます。具体的な訴えは口がかわく、口がねばつく、水分がないと食物が飲み込みにくいなどさまざまです。特に、高齢者の場合その訴えは口内乾燥感と口渇感とが混在していることがあります。つまり、唾液腺(唾液をつくる腺で耳下腺、顎下腺、舌下腺、小唾液腺があります。詳しくは唾液腺のはたらきのページを参照してみて下さい。)の機能異常も存在するが口渇感をきたす全身的な疾患も合併している場合が少なく
ないからです。それでは、口内乾燥症と口渇感をきたす疾患の原因や検査、治 療についてお話ししましょう。
先に述べましたように全身的な疾患の一症状としておこるものと唾液腺の機 能低下によるものとを分けて考えます。
1)全身的(内科的)疾患による口渇感 多くは脱水症によるもので水分摂取不足や、糖尿病、発熱、下痢などに伴い ます。また、出血、ショック、心不全など循環血液量の減少でもおこります。
2)唾液腺の唾液分泌能の低下による口内乾燥症主な疾患としてシェーグレン症侯群、老化による唾液腺の萎縮、口内から咽頭領域の放射線治療後の副作用による腺の変性、唾液の分泌を妨げる薬物の服用
によっておこります。
女性に多く口内乾燥症、乾燥性角結膜炎、リウマチ様関節炎などの症状を示し、唾液腺や涙腺などの外分泌腺の慢性炎症によることで知られています。種々の自己抗体が陽性のことが多く免疫異常によっておこると考えられています。
高齢者の場合は何らかの全身疾患を有していることが多く、とくに糖尿病、高血圧、向精神薬の服用の有無を調べます。さらに、口の中の粘膜、舌表面
の亀裂や発赤、歯の状態もチェックします(図1)。
図1 図2
先に述べた内科的疾患を原因とするものは原疾患の治療を優先します。薬物服用による口内乾燥症は服用中止、変更できるものは中止、変更しますが、なかなか困難であるのが現状です。シェーグレン症侯群や加齢による唾液腺萎縮症では対症療法が中心となります。人工唾液の使用、各種ビタミン剤、唾液腺ホルモン、漢方薬なども効果
を期待して用います。さらに唾液量が少なくなると口内が不潔になりやすいので歯みがき、うがいなどで口内を清潔に保つことが大切です。また、高齢者では嚥下障害をきたしやすいので食事の際は水分の摂取が必要です。口内乾燥症は口内の炎症やう歯の原因となるだけでなく、味覚障害や嚥下機能にも影響を与えます。シェーグレン症侯群は他の膠原病を合併していることがあるのでよく調べる必要があります。加齢による唾液腺の萎縮、薬物による唾液分泌低下は、今後高齢化社会を迎え増えてくるものと考えられます。以上のような症状が気になったら耳鼻咽喉科医に相談し、適切なアドバイスを受けて下さい。