a) 舌腫瘍
舌はよく動き、非常に敏感なところなので腫瘍ができると早期に気が付きやすいところです。良性の腫瘍として、乳頭腫、血管腫(図3)、
リンパ管腫などがあります。多くはいぼ状に突出するため何か舌にできていると感じます。ほとんどは専門医に診てもらうとすぐに診断がつきます。ある程度の大きさになるとレーザーなどで焼灼するか、摘出します。前癌病変として注意しなければならないのは白板症です(図4)。
舌の表面に白い斑ができ、こすってもとれません。特別に症状はありませんが、一部組織をとって調べますと癌が見つかることがあります。悪性腫瘍は、虫歯や義歯や補填物による持続性の刺激や喫煙などが原因で、男性に多くできます。一般 に舌の辺縁部にでき(図5)、
初期は口内炎やアフタとよく似ていますが、すこしづつ大きくなり硬くなってきます。また中心部が深く掘れて潰瘍状になることもあり、痛みもでてきます。いつまでも治らないときは専門医に診てもらうことが大切です。治療は進行具合によって異なりますが、放射線照射、手術、薬物治療が行なわれます。早期であれば80%程度治ります。
b) 頬粘膜腫瘍
おもに悪性腫瘍ができます。舌と同じで初期は口内炎やアフタとよく似ていますが、すこしづつ大きくなり硬くなって、痛みもでてきます(図6)。
食事の 時に腫瘍を一緒に噛んでしまい出血することがあります。やはり早く専門医に診てもらうことが大切です。
c) 中咽頭腫瘍
多くはのどの入り口の扁桃やその周辺にできます(図7)。
悪性腫瘍が多く、 扁平上皮癌と悪性リンパ腫ができます。初期はほとんど症状はありませんが、扁平上皮癌は進行すると潰瘍を形成し痛みがでてきます。また奥に進展すると開口できなくなってきます。一方悪性リンパ腫は突出してきますので物が飲み込みにくくなってきます。治療は扁平上皮癌は放射線照射と手術が主に行なわれます。悪性リンパ腫は放射線照射と薬物治療が主に行なわれます。
d) 上咽頭腫瘍
中国南部、東南アジアに多く、日本では沖縄、九州地方に比較的多くみられます。鼻の奥の上咽頭と呼ばれるところにでき、初期は症状がありませんが、進行すると鼻閉感が現れ、少し鼻に血が混ざることがあります。さらに進行しますと片方の耳の閉塞感や中耳炎が生じてきたり、物が二つにみえたり、顔の感覚が鈍くなったり、頭痛がひどくなったりしてきます。気が付いた時にはかなり進行している場合が多いです。治療は放射線照射と薬物治療が中心です。局所は治ってもいろいろな場所に転移し、予後不良のことが多いです。
e) 下咽頭腫瘍
頻度は少ないですが悪性腫瘍がおもにできます(図8)。
喫煙や飲酒などが原因と考えられています。初期はのどの不快感程度でしかなく、進行するとものを飲み込むときに異物感が認められます。さらに進行するとのどの痛みやものが飲み込めなくなってきます。気が付いた時にはかなり進行している場合が多いです。治療は放射線照射と手術が主におこなわれます。手術で食道までとってしまいますと術後食事ができませんので最近は小腸をつなぐ再建手術が行なわれます。しかしまだまだ予後の悪い腫瘍です。