最終更新日: 2025年06月03日
文化相関・異文化コミュニケーション系 文化人類学コース
本コースでは、多様なテーマと地域を研究対象にする文化人類学の専門スタッフが、充実した教育研究カリキュラムを提供しています。今日の文化の諸問題は、グローバル化に伴うさまざまな文化と価値観の対立、分裂、統合と融和、生成と消滅といったダイナミズムを特徴としています。本コースでは、地に足のついた研究調査(フィールドワーク)から世界を見渡す広くしなやかな視点をもつことで、深い異文化理解をもとに多様な文化が対話可能となるような方法をともに考えていきます。文化をめぐる複雑な問題に積極的にとりくみ、国際的に活躍する専門家、研究者をめざす学生、文化人類学の高度な研究を志す留学生も歓迎します。
| 就職実績 | (前期課程) 南山大学(准教授)、奈良県立大学(専任講師)、京都産業大学(准教授)、多摩美術大学(助手)、北九州市立大学(特任教員)、総合地球環境学研究所(研究員)、広東貿易職業技術学校(講師)、中日新聞社、イオン、旭化成、東京三菱銀行、モバゲー、活水女子大学、韓国法務省、バンダイ、大阪府高校教員、青年海外協力隊(コスタリカ派遣)、アビームコンサルティング、東京国際貿易、三菱総研 DCS、関西福祉科学大学、神戸松蔭女子学院大学(非常勤講師)、(株)富士ソフトほか (後期課程) 天理大学(専任講師)、立教大学(教授)、神戸大学(准教授、助教)、大阪観光大学(教授、専任講師)、島根大学(准教授)、武蔵大学(准教授)、法政大学(教授)、東京医科大学(准教授)、外務省(専門調査員)、立命館大学衣笠総合研究機構(専門研究員)、帝塚山大学(非常勤講師)、浙江大学(副教授)、大妻女子大学(准教授)、滋賀大学(特任准教授)、立命館大学(准教授)、国立民族学博物館(准教授)、武庫川女子大学(講師)、ケープタウン大学(客員研究員)、東京外国語大学(研究員、特任研究員)、神戸大学国際文化学研究推進インスティテュート(学術研究員)、広島大学(教授)ほか |
|---|---|
| 在籍学生数 | (前期課程) 14名 (後期課程) 13名 |
| 論文テーマ例 | (前期課程) |
| 所属教員の紹介 | 梅屋 潔 教授 民族学特殊講義ほか 岡田 浩樹 教授 民族誌論特殊講義ほか 齋藤 剛 教授 文化人類学特殊講義ほか 下條 尚志 准教授 現代人類学特殊講義ほか 大石 侑香 准教授 社会人類学特殊講義ほか |
丹下 櫻子さん(博士前期課程 2 年)
和歌山大学観光学部卒業. 2025 年度は 1 年間休学してフィールドワークを実施中.
研究テーマ:「ネパールにおける海外出稼ぎ」
ネパール人の出稼ぎを対象に研究しています。このテーマに至ったきっかけは、趣味のカレー屋巡りです。彼らがなぜ日本で働くことを選ぶのか知りたいと考えるようになりました。学部時代は統計などを用いた量的研究に触れる機会が多かったのですが、友人のネパール人と話す中で、数字に表れにくい感情や価値観を対象に研究してみたいという思いが強くなり、文化人類学に辿り着きました。
文化人類学コースの先生方の授業の多くはゼミ形式で、議論の機会が多いため常に自分の意見が求められます。学部から専攻を変えたのもあり苦労していますが、研究室に行けば誰かいて、他愛のない話から真面目な議論までできる環境に助けられています。またゼミでは、院生とコースの先生方全員が集まり、毎週数名の学生が発表を行います。主指導以外の先生方の意見や他の学生の研究に触れる機会を定期的に持てる点は、本コースの特徴だと思います。このゼミの形式を魅力に感じ、神大を選びました。また、奨学金・助成金獲得のサポートを受けられる環境もあります。私自身、院生同士で見せ合ったり、ゼミの場で先生方に助言をいただいたりし、奨学金を複数受給しています。
本研究科には、長期フィールドワークを行う院生を対象とした渡邊英次研究助成金があります。私はこの支援を受け、2025年4月からネパールで1年間のフィールドワークを始めました。文献収集を行ったり、調査の一環として日本語学校で働いたりしながら、ネパール人たちの生活世界に触れることに努めています。ネパール人家庭に住み込み、料理を一緒に作ったり、実家への帰省に同行したり、語学のためネパール語で日記を書き、家族に見てもらったりしています。一見調査と直結しなさそうな事柄にも目を向け、なんでも体験してみる姿勢を大切にしています。
研究やフィールドワークにおいて「これをやれば大丈夫」といったマニュアルはないので、決して楽とは言えませんが、楽ではないからこその学びとおもしろさがあると感じます。新たな仲間をお待ちしております!
研究テーマ:「先住民社会における外来者祖先の記憶をめぐる民族誌――オーストラリア、木曜島のトレス海峡諸島民の事例から」
私の先住民との出会いは、子どもの頃読んだ絵本でした。民族衣装を着て、動物や精霊と話し、自然と調和して生きる姿がとても印象的でしたが、将来自分が彼らの研究をするこ
とになるとは思ってもみませんでした。私が研究対象としているオーストラリア先住民のトレス海峡諸島民は、風や波を読み、ジュゴンやウミガメを獲って暮らす海の民です。それだけ
言うと、絵本と同じく自然と調和して生きる人びとのようですが、それは彼らの全てではありません。フィールドワークを通じて、彼らの人間臭さや近代に生きるたくましさに触れると、自分の中の先住民像が偏ったものであったことに気付かされます。このように、自分の中の思い込みや常識が相対化されることこそ、現地の人びとと深く付き合うこと、そしてそこから彼らの見ている世界を理解しようとする文化人類学の醍醐味だと思います。
文化人類学コースでは、国内外様々な場所をフィールドとする院生が集まり、人類学的思考の訓練を積んでいきます。人類学を基本的な土台としつつも、それぞれ多様な分野、現象に関心を持っていて、互いに議論を交わし新たな知見に触れるのはとても刺激的です。
また院生は、そうして得た知見やフィールドワークの成果を、学会発表や論文投稿などを通じて積極的に発信することが求められます。本コースでは、それに必要な論文執筆や発表の技術、議論の深め方などを身につけるサポート体制が整っています。週に一度開かれるコース内のゼミでは、実際の論文の草稿を検討しながら院生同士で議論を交わすほか、コースの先生方全員から指導を受けることができます。先生方には様々な分野とフィールドのエキスパートが揃っており、多様な角度から根気強くコメント、指導をしてくださいます。こうしたプロセスを経て、博士後期課程の院生は博士論文の完成に必要な技術と思考力を身につけます。
研究を続けていくことは決して容易なことではありませんが、充実した研究環境はその継続を大いに後押ししてくれるものだと思います。私自身も、本コースの恵まれた環境と周囲の人たちに支えられていることを日々実感しています。
現在、国立民族学博物館准教授
anth_almuni_hirano オーストラリア中央砂漠、どこまでも続く荒野に現れるアボリジニの小さなコミュニティが私の調査地です。そこでアボリジニたちと共に暮らしながら、規制下における酒の獲得、分配の方法を調査しています。
人類学的研究に不可欠ともいえるフィールドワークでは、自らの「常識」が覆される瞬間が度々訪れます。私にとってアボリジニたちとの生活は驚きと困惑の連続でした。彼らと行動をともにしていると、従来のものの見方ではどうしても説明のつかないことがあると気づかされます。そうした違和感は、時として「分かり合うのは無理なのではないか」という苛立ちや徒労感に結びつくこともありますが、簡単に手放してはいけません。なぜなら、それらが現地の人々の生きる世界を読み解くための重要な手がかりとなるからです。
大学院では、このフィールドワークでの発見を民族誌としてまとめていきます。先行研究の読解や整理、調査データの扱いや議論の展開の方法等、論文執筆の技術の習得は決して容易ではありませんが、先生方は根気強く指導してくださいますし、院生仲間との交流も心の支えになるでしょう。論文執筆に並んで、研究生活では調査資金の獲得も大きな課題となりますが、日本学術振興会の特別研究員など競争的資金に関してコース内にしっかりとしたサポート体制が築かれており、採択実績も継続して出ています。
文化人類学コースでは数年間に渡る課程を修了した後、多くの院生がアカデミズムの世界に羽ばたきます。研究者として第一線で活躍される先輩方の背中を見て私も研究職を志しました。まだまだ駆け出しですが、院の扉を叩いた日の知的好奇心は衰えることなく、益々刺激的な毎日を過ごしています。フィールドで得られた知見から私たちの生きる世界を紐解くことに関心のある方はぜひ本コースの扉を叩いてみてください。皆さんと人類学の議論を交わす日を楽しみにしています!
神戸大学文学部人文学科卒、韓国ソウル大学校社会科学大学院人類学科修士課程修了
博士論文タイトル:「〈オモニ〉を通して見る韓国の家族―乳がん患者の事例から」
現在、立命館大学総合心理学部准教授
博士課程では、研究者としての心構えから論理的な文章の書き方、博士論文のアドバイスにとどまらず、将来就職したとき学生を教えるためのスキルに至るまで、長期的な展望を見据えたご指導をいただきました。指導教員以外の先生方に教えを請いに行くことも積極的に奨励される雰囲気ですので、ひとつの問題に対して様々な角度からご意見をいただくことができ、考えを深めることができました。
また、院生たちで行う研究会や読書会も、研究情報を交換したり学問的知見を深めたりするにとどまらず、研究上の悩みを共有したり互いにアドバイスをしあったりするうえでも非常に有意義でした。志願者の皆さんも、このような恵まれた環境を活かし、充実した大学院生活を送ってください。
学部では文化人類学を専攻していませんが、大丈夫でしょうか。
必ずしも学部で文化人類学の専門コースにいる必要はありません。ただし、文化人類学についての基本的知識を身につけておくとよいでしょう。最近は手頃な入門書、概説書がふえていますので、まずはそれらを参考にし、所属する大学の文化人類学関係の講義・演習を受講することをお勧めします。大切なことは、明確なテーマをもち、これを文化人類学の視点から考える姿勢です。
指導教員以外に研究上あるいは論文の指導を受けたり、論文テーマが変わって指導教員の変更をすることはできますか?
教員全員の共同指導体制をとっており、指導教員以外からも指導を受けることができます。また、研究テーマを変更する必要が生じた場合には、所定の手続きを経て指導教員をコース内で変更することも可能です。