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2024年7月17日 (水)

イデオロギー政治と利益政治(再掲+)

P589djcu_400x400 先日の都知事選の余波で、いろいろとめんどくさいことになっているようですが、まあそちら方面には立ち入る気は毛頭ありませんが、それに関連して2C1Pacificさんがこう呟いていたのに対しては、かなりの共感を感じたところです。

連合が共産党とは一緒にできないというのはよく分かるのだけど、民主党政権下で連合傘下労働組合員に良いことがあったとはちっとも思えないので、連合が旧民主党勢力を結集させて何したいのかさっぱり分からない。連合草創期・山岸章時代の「反自民・非共産勢力の結集!」なんて力もないでしょ。

連合系の国家公務員の労働組合(連合系が多数派でないところが多いと思うけど)が旧民主党系を支持するのに至ってはマゾヒストなのかと思ってしまう。いや、その人たち、わしらの給料、思いっきり下げたじゃん。

連合はもう政党政治から一歩引いた方がいいんじゃないですかね。総資本対総労働の時代でもないんで。

そもそも連合と共産党がどうこうという話以前に、連合が立憲民主党を支持するのがよく分からないとしつこく言っていきたい。民主党政権で労働者に何かいいことあったっけ。(まあ、麻生太郎が言ってたような話になっちゃうけど。)

特に公務員の労組ね。立憲民主党って、公務員への労働三権の完全付与と引き換えに公務員人件費削減を主張してたよね。もし、公務員労組のほうで労働三権がもらえるなら給与が下がってもいいなんて考えるなら、組織率の壊滅的な低下も残当でしょ。

連合が反共産党なのはケシカランというおバカなことを言っている人とは全然違う意味で、連合や芳野会長の政治姿勢は意味不明だと思っている。

以前似たようなことを書いた記憶があったので、検索するとこんなのが出てきました。

イデオロギー政治と利益政治

これも本ブログで何回も取り上げてきたテーマですが、

https://www.asahi.com/articles/ASL1G61VCL1GUTFK00C.html(「連合、陳情は自民。選挙は民進。あほらしい」 麻生氏)


企業の利益の割に、(労働者の)給料が上がっていない。給料や賞与を上げてほしいと今の政権が経団連に頼んでいるが、本来は連合や野党・民進党の仕事だ。連合は、陳情は自民党、選挙は民進党。あほらしくてやってられない。

こんなやり方、いつまでやってんだと。私のことですから、会うたびに連合の方やら何やらに申し上げてきています。全然おかしいですよ。何であんたの労働組合は民進党をやっている? 我々の方がよっぽど労働組合のためになっているんじゃないですかね。

これは、この限りでは全くその通りなので、これで腹を立てる人は、おそらく政治というものの理解が違うんでしょう。

要は、、政治というのは自らが抱く信仰やイデオロギー、とりわけ自分や自分たちが属する人々社会的位置に関わる経済的社会的利害得失といった世俗的なこととは切り離された、何か空中をふわふわ漂う、あるべき正義の観念みたいなものに関わるものごとであると思い込んでいる人々にとっては、麻生氏ら自民党政権の方が労働組合のためになることをしようがしまいが、そんなこととは何の関係もなく政党を支持したりしなかったりするべきものなのでしょう。

いや、そういう政治観念というのは立派にあって、それに殉じてきた人々も山のように歴史の中に並んでいるわけですが、とはいえ、(政党じゃない)労働組合がそういう信仰政治、イデオロギー政治をやって良いのかといえばそれはまた別の話で、それはやはり「労働者が主体となつて自主的に労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ることを主たる目的として組織する団体又はその連合団体」であって、「主として政治運動又は社会運動を目的とするもの」ではないと法律が明記している労働組合としては、まず何はともあれ、労働者の利益になることをするか否かで支持するか否かを決めるべきものであって、そうでなければそんな団体は労働組合の名に値しない、はずです。労働組合とは徹頭徹尾労働者の利益を追求する団体であり、その意味で世俗的利害に敏感な団体のはず。

その意味からも、労働者にとって大事な労働政策を平然と仕分けしたり、自分たちの仲間を理由にならない理由で平然とクビした政治家たちを真っ先に支持しに行くというのは、少なくともあるべき利益政治の観点からすると、いかがなものであろうかという感想を抱かせるものであることは間違いないと思いますよ。

もちろん、その上で、たまたま今労働者の味方をしているように見えるけれども長年にわたってそうじゃなかった政党よりも、政権を取ればそれよりももっと労働者のためになる政策をやってくれるはずの政党を支持するという判断は十分あり得ます。

でもね、なんだかそうじゃなさそうだからなあ。

政党支持によるロックイン効果


黒川滋さんが

http://kurokawashigeru.air-nifty.com/blog/2012/07/715-dac8.html(多様な政党支持のある労働組合であっても政党支持していけないものか)


話を戻すと、団体が構成員の政党支持の分布にしたがって政党支持を放棄するということは実にナンセンスな話で、団体が政党との間の政策や理念との取引の過程で、特定の政治家や政党を推薦したり支持したりすることを意思決定することは民主主義社会のなかでは当然の行為であろうと思います。むしろ団体に政党を支持してはならないという前提をつくることが、複数政党制を否定するか、政党との協議より役所に陳情することが常態化した官僚支配の国か、アメリカのにようにすべてが経済的な自由競争の論理で説明づけるような社会運営をしている国でもなければありえない現実です。

ヨーロッパの民主主義は社会を構成するさまざまな階層や要求を前提にした団体が政治参加して、その団体ごとの要求や政策を政党間での協議で調整しながら社会を運営していて、これは日本国憲法が否定するような社会体制ではありません。
また団体が特定の政治家や政党を支持することを運動とすることは、団体による運動の思想を啓発する役割もあり、こうした働きかけがなければ、社会を変えていくなどということはありえなくなります。

と述べていて、その趣旨は分からないではないですが、逆に労働者のための政策をちゃんとやってくれるかどうか怪しいような政党をうかつに全面支持してしまうと、支持された方は票が入るのは当たり前と全然感謝もしないままほかの方面からの支持を求めてあらぬ政策に熱中し、支持している方が今更ほかに票を回せないものだから、トンデモな政策を目の前でやられながら効果的にコントロールもできないというロックイン効果が生じるのではないでしょうか。「釣った魚に・・・」なんて思われるようでは、やはり政治的にインテリジェントとはいいがたいように思います。

そうならないためには、へたに「政党」まるごと支持してしまうのではなく、「政策」で支持するか支持しないかを考えさせていただく、という態度を(少なくとも建前としては)取らないと。

(追記)

ついでに、こんなのもありました。

そりゃそうなるよな


http://www3.nhk.or.jp/news/html/20161130/k10010790081000.html(自民と連合が5年ぶりに政策協議)


・・・自民党本部で5年ぶりに行われた政策協議には、自民党から茂木政務調査会長らが、連合からは、逢見事務局長らが出席しました。この中で、連合の逢見氏は、「大きな影響力を持つ自民党との意見交換は大変ありがたい」と述べ、労働者の雇用の安定やすべての世代が安心できる社会保障制度の確立などを要請しました。
これに対して茂木氏は、「連合の政策に最も近いのは自民党ではないかと自負している。労働界を代表する連合との意見交換を通じて、働き方改革などの実現につなげていきたい」と応じ、協議を続けていきたいという考えを伝えました。
このあと連合の逢見氏は、記者団に対し、「相撲でいえば、お互いの感覚が一致して、立ち会いができた。自民党とは政策面での距離感は無く、特に雇用や労働、社会保障の面での問題意識は、自民党も同じであり、来年は、もう少し早く行いたい」と述べました。

ねずみを捕らない、どころか、ねずみをいっぱい引き入れて家の中をしっちゃかめっちゃかにする白猫と、ちゃんとねずみをたくさん捕ってくれる黒猫がいたら、それはもちろんねずみを捕ってくれる猫の方がいい猫なんです。

もちろん、その黒猫は猫をかぶっているだけで、白猫を追い出したらもっと性悪になるかも知れないという議論はあり得るけれども、ねずみを捕らないダメな白猫に「猫猫たらずとも」忠誠を誓えというのは愚かな議論です。

労働組合とは政治団体でもなければ宗教団体でもなく、況んや思想団体でもないのですから。

そこのところが分かっていない議論が多すぎるのが困ったことですが。



2024年7月17日 (水) | 固定リンク

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コメント

「戦争が起きて徴兵されて戦死すること」は、もしそれが発生したらどう考えても労働者階級にとって最大の不利益なので、「そうならないような可能性が高い政党を支持すること」は一定の合理性があるように思います。

問題はもうそんな考え方は完全に(潜在的に労働組合員になりうる若年労働者にとっては)神話になってしまっている、というところですかね。

投稿: ssig33 | 2024年7月17日 (水) 15時34分

もうすっかり忘れてられているようですが、何度でも言いますよ。

民主党は2009年の政権交代前のマニフェストで社会保険庁廃止はせずに存続させる、と言ってました。
だから民主党に投票した組合員がかなりいた、と当時私の所属していた共産党系の機関誌にも書いてありました。

ところが政権獲得すると、あっさりと方針を撤回。
日本年金機構へ移行。
もともと社会保険庁存続は無理であり、マニフェストにそんなこと書くのがおかしかったのではありますが。
しかしですね、麻生政権時代に決まった社会保険庁廃止に一部の職員を分限免職することまでもそのまま実行してしまった。
おかげで相当数の仲間が路頭に迷いかけ、やむを得ず非常勤職員として一年間雇用することで何とかごまかしました。
それでも怒りの治まらない共産党系の組合の仲間たちは不当解雇だ、と言って裁判闘争を今も続けております。

忘れようたって忘れません。
その時の大臣殿は今も長老面して、今回の公的年金の財政検証でもああ、こうだ、言うてはります(^^;

投稿: balthazar | 2024年7月17日 (水) 19時19分

>「戦争が起きて徴兵されて戦死すること」は、もしそれが発生したらどう考えても労働者階級にとって最大の不利益なので、
>「そうならないような可能性が高い政党を支持すること」は一定の合理性があるように思います。

そのような理論を広げていくと、
「環境が悪化して人類の生存危機を招くこと」
「原発の事故や原子力のごみによって大きな被害が出ること」
「人口が減って商圏が維持できなくなること」
「自動車の普及で事故が増えて労働者が死亡すること」
なんでもありになってしまいます。
あくまで労働と直接の関係があるかどうか、に限定すべきでしょう。

投稿: いけだ | 2024年7月17日 (水) 20時23分

さらに付け加えますと、
>「戦争が起きて徴兵されて戦死すること」は、もしそれが発生したらどう考えても労働者階級にとって最大の不利益
というのは決めつけが過ぎ、団結を主張する労働組合らしからぬ排除の論理のように感じます。
このブログの「赤木智弘氏の新著その2〜リベサヨからソーシャルへ」のエントリー、
2007年11月 7日 (水) 11時11分にあるhamachan先生のコメントを引用しますと、
>ただ、戦争が激化して戦地に送り込まれたり、爆撃を受けたりしない限り、
>リベラルな体制よりも戦時体制の方が労働者にとって利益が大きかったことは事実であるというだけのことです。
とあるとおり、労働者は必ずしも戦争に反対、というわけではありません。
このような決めつけの論理が先に書いたとおり広がった結果、
政治活動や政治スローガンには力を入れるが労働者の直接の利益につながることはいまいちという、
よくある労働組合活動につながっているように思えてなりません。

投稿: いけだ | 2024年7月17日 (水) 22時22分

良く考えてみたら、民主党、あるいはそこから分かれた立憲民主党、そして国民民主党も社会民主主義的な左派政党の国際的なグループである社会主義インターナショナル、あるいは進歩同盟に加盟してないですね。
誰も言わないですが。

一応立憲民主党はアジア・リベラル民主評議会と言うアジアの自由主義政党のグループに加入しています。
これは台湾の民主進歩党のように左派的な自由主義政党のグループです。

もっともアジアはまだ社会主義インターナショナル加盟政党が少ない。
一応社会民主党は社会主義インターナショナルに加盟してますが、旧社会党時代から異端児視されていたそうですし(^^;

投稿: balthazar | 2024年7月18日 (木) 05時04分

戦争になったらどうすると持ち出す勢力が、例えば今そこにある領空侵犯に対するスクランブル発進について全く関心がないのは、どうしてなんでしょうか。

投稿: ちょ | 2024年7月18日 (木) 23時53分

反戦平和を唱えて米軍や自衛隊に反対していた「革新」を自称する政党が長年旧ソ連に対して南千島・色丹・歯舞だけでなく「占守島から国後島まで全千島列島を返還しろ!」と言う勇ましい事を言っていたことは誰も忘れてますかね(^^;
彼らが「軍国主義者!」と罵っていた右翼と変わらないじゃん(^^;
右翼はそれだけでなく、南樺太も要求していたからまだ右翼よりも「革新」政党の方がおとなしいと言えば大人しいですが。

いや、その「革新」を自称したある政党は今も全千島返還をロシアに要求していましたっけ(^^;

まあ、実現不可能な事は分かっていて出来もしない要求をしていたらしいですが。
でも反戦平和に期待して一票を投じた支持者は疑問に思わなかったのかな。

投稿: balthazar | 2024年7月19日 (金) 20時13分

旧民主と立憲は、かつて鳩山代表が小泉改革に対して「改革のスピードを競い合うことは、やぶさかでない」と表明したことからも、労働者志向というよりむしろ自民以上にリベラル(市場主義)志向が強い政党ではないんでしょうか?
これに対して共産が旧民主を批判していたことに時代の流れを感じます。
https://www.jcp.or.jp/akahata/aik4/2005-08-18/2005081803_01_1.html

投稿: 不勉強な大人 | 2024年7月22日 (月) 18時56分

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