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2016年8月 5日 (金)
Precision Dairy Farming関連国際会議参加報告
写真1 会場のWTC Leeuwarden
写真2 近代的な風車風景
写真3 会場近くの運河
写真4 牛の銅像(Us mem)
写真5 レーワルデンの斜塔
写真6 面白い形の跳ね橋
PDF2016は過去3回の北アメリカでのPDF関連の会議を経て今年度第1回の国際会議として開催された記念すべきもので約350名の参加者を得て盛大に開催されました。初日はオープニング(写真7)の後2件のキーノート講演と3パラレルセッションで9セッションの講演とポスターセッション、2日目は農場見学、3日目は2件のキーノート講演と3パラレルセッションで11のセッションに分かれて計71件の口頭発表と59件のポスター発表(写真8)が行われました。
写真7 PDF2016オープニングの様子
写真8 ポスターセッションの様子
以下に4件のキーノート講演の講演者とタイトルおよびセッション構成として20のセッションのタイトルと講演数(【】内に記載)を示します。
i) キーノート講演
○しろまる Ynte Hein Schukken, GD Animal Health, the Netherlands: Animal health challenges on dairy farms increasing in size - are protocols and precision farming compatible?
○しろまる James Hills, Tasmanian Institute of Agricultures Dairy Centre, Australia: Precision feeding and grazing management for temperature pasture-based dairy systems
○しろまる Daniel Berckmans, KU Leuven, Belgium: Novel Precision Dairy Farming Technologies
○しろまる Jeffrey Bewley, University of Kentucky, USA: Update on use of sensors on dairy farms
ii)セッション構成
・Session1 : Reproduction (shared session with DairyCare) 【4】
・Session2 : Feeding I【3】
・Session3 : Metabolic disorders【4】
・Session4 : Lameness detection【3】
・Session5 : Requirements for PDF【3】
・Session6 : Udder health and reproduction【3】
・Session7 : Cow traffic and AMS(Automatic milking system)【4】
・Session8 : Economic impact of PDF【4】
・Session9 : Welfare【4】
・Session10: New PDF technologies I : Lameness detection【3】
・Session11: Big data【3】
・Session12 : Feeding II【3】
・Session13: New PDF technologies II【4】
・Session14: Adding value to sensor data【4】
・Session15: AMS efficiency【4】
・Session16: New PDF technologies III【4】
・Session17: Data management【4】
・Session18: Performance of AMS【4】
・Session19: Grazing【3】
・Session20: Data modelling【3】
セッション名からも分るように、畜産センサの検出対象、データ処理、新技術、経済効果まで幅広いテーマ構成となっていました。また、PDF2016で最も驚いたのは、スマホのアプリを利用したプログラム管理です。工学系の国際会議でもここまでICT化されているものはなく、すごく進んでいるという印象でした。スマホからプログラム等の情報が見られるだけでなく、講演中に講師のした質問にスマホで回答することでリアルタイムに統計結果を表示したり、質問をスマホから入力できるようになっており、司会者は事前に質問内容を把握した上で講師に質問をしたりして、参加者全員の直接的な関与が期待でき、会議の活性化が図れるものとして今後広がっていくのではないかと思いました。
今回の会議では、スポンサーとして、以下のプラチナスポンサー7社、ゴールドスポンサー4社、シルバースポンサー6社、ブロンズスポンサー4社の計21社が協賛しており、欧州では畜産センサ、畜産機械の企業が積極的に活動していることが伺えました。ゴールドスポンサー以上は企業ブースを出展(写真9)できるとともに、プラチナスポンサーは2日目の農場見学をアレンジして、農場において、各社の製品の紹介・詳細説明を行っていました。
(プラチナスポンサー)
1Agis/CowManager、2CRV、3DeLaval、4GEA、5Lely、6Nedap、7SCR
(ゴールドスポンサー)
1Afimilk、2agrifirm feed、3Fullwood、4SmartBow
(シルバースポンサー)
1COWALERT、2Hokofarm Group SAC、3HIPRA、4SmartDairyFarming、5Qlip、6uniform agri
(ブロンズスポンサー)
1eCow、2GID、3MADERO、4VIRTUALVET
写真9 企業展示ブースの様子
農場見学はプラチナスポンサーである7企業提携の以下の7農場から3農場を選んで計5コースで5台のバス(写真10)に分かれて3農場をツアーするものでした。
1 Dairy Farm "Den Hartog" (selected by Platinum Sponsor Agis/CowManager)
2 Dairy Farm "Dijkveld-Stol" (selected by Platinum Sponsor SCR)
3 Dairy Farm "Boersma" (selected by Platinum Sponsor DeLaval)
4 Dairy Farm "De Deelen" (selected by Platinum Sponsor Lely)
5 Dairy farm "Bouma-Miedema" (selected by Platinum Sponsor CRV)
6 Dairy Farm "Formsma-Steenbeek" (selected by Platinum Sponsor Nedap)
7 Dairy Farm "Kalma" (selected by Platinum Sponsor GEA)
私はLalyとNedapとSCRのスポンサー企業提携の農場を見学しました。Lalyスポンサーの農場De Deelen(写真11)は自分の牧草地(写真12)で刈った新鮮な牧草で約180頭の乳用牛を飼育(写真13)するとともにLelyのミルクロボット(写真14)で搾乳した牛乳の60〜70%を自分の農場でチーズを作るのに使い、残りを牛乳として市場に出荷しているとのことでした。チーズ工場(写真15、写真16)は牛舎のすぐ隣にあり、新鮮な牛乳を使うことで高品質のチーズを作るとともに、作ったチーズは自分の農場で直販を行うとともに市場にも出荷しているとのことでした。(写真17)。
写真10 農場見学ツアーのバス
写真11 "De Deelen"農場入口
写真12 牛舎裏の広大な牧草地
写真13 新鮮な牧草を食べる牛
写真14 Lelyのミルクロボット
写真15 チーズ工場
写真16 チーズ貯蔵庫
写真17 チーズ直販売所の前
Nedapスポンサーの農場"Formsma-Steenbeek"(写真18)はNedapの発情、健康モニタリングセンサシステムやLelyのミルクロボットを導入した自動化された農場で、175頭の乳牛と105頭の若齢畜が飼育されていました(写真19)。Nedapのセンサは加速度センサを足につけ立位、横臥とステップ数を測るSmarttag Legとやはり加速度センサを首に取り付けて食態を測るSmarttag Neckから成り、それらの情報から発情と健康をモニタリングするシステムが基本で、それにどの牛がどこにいるかが分る位置情報システムを追加できるのが特徴になっています。Smarttag Neckをつけた牛を写真20に、位置情報用のアンテナを写真21にコントローラを写真22にタブレット上の位置情報表示画面を写真23に示します。
写真18 "Formsma-Steenbeek"農場入口
写真19 牛舎の様子
写真20 Smarttag Neck(青い部分)装着牛
写真21 位置情報用アンテナ
写真22 Nedapのコントローラ
写真23 タブレットの位置情報表示画面
SCRスポンサーの農場"Dijkveld-Stol"は少し古い農場でしたが、頭数はもっとも多く、また子牛牛舎も含めて見学できました(写真24〜写真27)。写真28、写真29に首輪に付けられたSCRのセンサHEATIMEのセンサ部分および牛に装着した状態を示します。HEATIMEは加速度センサですが首の上部にしっかりと接触させて装着され、このセンサ1つで、発情、健康状態、分娩、栄養状態が分るとのことで、センサデータから各状態を検出するアルゴリズムおよびユーザーフレンドリーな表示に優れたセンサで、この分野では最もシェアを誇っているようでした。写真30にアンテナを写真31にコントローラ画面の一例を示します。
写真24 出産前の母牛
写真25 生まれて間もない子牛
写真26 少し大きくなった子牛群
写真27 自動掃除ロボット導入牛舎
写真28 SCRのセンサHEATIME
写真29 HEATIMEを装着した牛
写真30 SCRのアンテナ
写真31 HEATIMEコントローラ画面
以上のように、今回の農場見学でそれぞれのセンサシステムの導入状況ならびに使い方を見学でき大いに役立ちました。各センサシステムは使い勝手の良いユーザインターフェースになっており、ヨーロッパでは畜産センサが積極的に使用されている状況を把握し、今後普及していくことを確信致しました。今後SIPで開発しているセンサも実用化のためには、ユーザインターフェースの良いものに仕上げる必要性を痛感しました。
見学会の後、バーベキュー大会がDairy Campusで開催されました(写真32)。Dairy CampusはWageningen大学等複数の大学の学生等が実習をするトレーニングセンターで、ミルクパーラー(写真33)、高福祉床(写真34:ヨーロッパでは牛に優しい飼育が求められており、クッション性のあるこのような高福祉床等種々床の比較研究を行っていました)、自動給餌装置(写真35、写真36)、バイオガスシステム(写真37)等最新の設備を有するセンターで、バーベキューの後見学できたのも収穫でした。
写真32 Dairy Campusの入口
写真33 ミルクパーラー
写真34 高福祉床
写真35 自動給餌装置(1)
写真36 自動給餌装置(2)
写真37 バイオガスシステム
今回第1回だった国際会議は3年に一度開催され、次回のThe 2nd International Conference on Precision Dairy Farmingは2019年6月にアメリカのミネソタ州Rochesterで開催されます。来年は少し小規模でPrecision Dairy Farming2017として、2017年5月30日(火)〜6月1日(木)にHyatt Regency Lexington,KYで開催されます。
PDF2016の前日の2016年6月20日(月)〜21日(火)に開催されました関連ワークショップ「Activity measurement in ruminant research and beyond」はEUのCOST(European Cooperation in Science and Technology)活動の一つのDairyCareの4つのワーキンググループの内の一つであるWG2が主催したワークショップで、初日はセッション1とセッション2(写真38、写真39)と10件のポスター発表(写真40)が、二日目はPDF2016との共催でPDF2016の1セッションとしてセッション3が開催されました。初日の参加者は70名程度でこぢんまりとした会議でしたが、討論の場で活発な議論がなされており、畜産センサの欧米の適用事例が把握できました。
○しろまるセッション1「Measuring and Analysing Social Behaviour」:招待講演2件+講演2件と討論
○しろまるセッション2「Automatic Phenotyping from Activity Measurements」:招待講演2件+講演2件と討論
○しろまるセッション3「Reproduction」:4件の講演
次回の第4回DairyCare Conferenceは2016年10月13日(木)〜14日(金)にLisbonで「Life-long Health and Welfare Sensing-Big Data and Internet of Things-」というテーマで開催されます。
写真38 DairyCare WG2 オープニングの様子
写真39 DairyCare WG2会場の様子
写真40 ポスター発表の様子
本調査は、総合科学技術・イノベーション会議のSIP(戦略的イノベーション創造プログラム)「次世代農林水産業創造技術」(管理法人:生研センター)によって実施したものです。
(マイクロマシンセンター 武田宗久)
2016年8月 5日 (金) Pj 畜産センサー | 固定リンク
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