クルマ社会がもたらす地方都市の荒廃 – 新しい交通システムLRTに未来はあるか
- 2014年6月5日
- 社会
- 2,547 comments
- 毛利千香志
LRTは脱クルマ社会を担う最新の都市政策
小さな町や村では、生きるために自動車は欠かせない道具です。一方、地方の中核都市の旧市街では、公共交通を充実させ、自動車交通を削減すれば、マイカーに依存しない都市生活の実現は十分に可能です。
確かに、かつてに比べれば、歩道は拡げられ、街路は並木で飾られ、交通事故は減り、自動車の燃費は良くなり、排ガス規制は進んでいます。クルマ社会に改善の兆しはないことはないのです。しかし、自動車が自動車である限り、つまり個人の我が儘を許す乗り物である以上、いくら文明の利器としての性能が向上しても、その文化破壊の本質は変わりません。もちろん、自動車そのものの廃絶は正気の沙汰とは思えません。しかし、その保有や使用に対しては、実効性のある規制を施さねばならないのです。
自動車が「豊かさ」の象徴であった高度成長の時代はとうに終わっています。かつて路面電車を排除した都市の交通環境も大きく変わっています。そうした状況の変化に応じて、クルマ社会に対する姿勢も改めねばなりません。さもないと、地方都市の活力は甦りません。将来の展望が暗いなら、若者の大都市への流出も止まりません。クルマ社会が放つ精神の腐臭に敏感な若者ほど、自動車と大衆が手を結んで我が物顔に振る舞う、そんな文化水準の低い都市からは立ち去りたいと思うでしょう。
そもそも、都市を活動の舞台にするのは、現在の市民のみではありません。将来の市民も、この同じ場所で生きていくのです。また、過去の住民は、この街を遺産として残して死んでいったのです。
よく地方の都市は「保守的」といわれます。しかし、その内実をみれば、いわゆる保守派が、過去を尊重せず、未来に配慮せず、クルマ社会の悪しき習慣に固執しています。クルマ社会を保守することによって、ドライバー大衆の代弁者に成り下がっているのです。実に不名誉な有り様ではないでしょうか。真の保守は、クルマ社会がいかに祖先の期待を裏切っているか、クルマ依存の生活がいかに子孫に禍根を残すか、しっかりと想像すべきです。そうすれば、本来の保守に回帰する道筋を「脱クルマ社会」の方向に見出すほかなくなりましょう。クルマ社会は歴史の必然ではないのです。
LRTという交通システムをめぐる議論は、いかにも技術論に集約されそうに思われます。しかし、そこにクルマ社会に対する価値判断を挟めば、その導入の成否が都市の命運を決するほどの意味をもちうることが了解されるはずです。LRTは、わが国では新型路面電車と呼ばれています。LRTの導入、すなわち路面電車の復活は、脱クルマ社会を担う最新の都市政策の一つであることは間違いないのです。
コメント
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私は、日本最大の路面電車都市で生活しています。原子爆弾、そしてモータリゼーションから立ち直った、街の魂のような存在です。LRTが広まらないのは、既存の路面電車のある都市でもチンチン電車レベルであることも挙げられると思います。私の街でも、自転車以下の速度で都市交通を担うレベルではないと厳しく非難されています。まずは車両を全部バリアフリー対応に替える必要があります。
また、僅かな赤字でも切り捨てられる民間事業者に対しての手厚い支援が必要でしょう。
今年、世界各地で過去最多の路面電車が開業します。世界から笑い者にされないような、まちづくりをしなければなりません。
私が住んでいる市でも LRT 導入について議論を同じように続けています。
当時(1998年ころ)の運輸省が導入促進を始めたのがきっかけです。
説明資料では、モノレールと AGT が比較対象として挙げられていました。
これらの比較においては、LRT がコスト面で優位に立ちます。
しかしながら、比較対象にない BRT との比較においては、輸送力では
LRT がわずかに優位でしたが、コスト面では圧倒的に BRT でした。
行政に言いたいのは、優位かもしれない交通手段が後から出てきたとしても
再検討もせず、猪突猛進のごとく整備を進めるのを止めて欲しいと言う事です。
少子化が進む中、補助金はあるにせよ、1kmあたり、30億円近い整備費を
一地方自治体が負担するものではないと思っています。 背伸びしすぎです。
BRTかLRTかという議論がよくありますが、単なるコストだけでは比較できません。集客力や求められる輸送力(集客力や輸送力が高いのはLRT)によって選択されるべきです。
自分は仙台市から金沢市に移住した者です。金沢ほどの人口を抱えた都市において、"新"交通システムと呼ばれるものがサービス性の低いバスであるということに、移転した当初から疑問をもっておりました。コミュニティバスの導入なども見られますが、それらはあくまで都市の延命策であって都市の根幹を立て治すのではないと思います。しかし、この社会を疑問視する人がそもそも少ないということが、現状が維持されている大きな要因であると考えられます。もし、車がなくとも暮らしていける都市を想像することができたならば、人々は車を利用し続けるでしょうか。まずはそのような意識改革が出来ないものかと考えております。
車を擁護するわけではないことを前提として話します。あなたは車そのものに関する未来を見ていませんね。車はいずれ全てが電気自動車になります。石油はいずれ無くなるのだから、これは確実です。排気ガスを出さずに済む自動車の時代になれば、ここで述べた環境問題は論点が外れていますよ。
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