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【砂村光信 視点】下川や斎藤の意識と工夫が「超速ラグビー」浸透への鍵

[ 2024年11月25日 17:07 ]

ラグビーリポビタンDツアー2024 日本14―59イングランド ( 2024年11月24日 英トゥイッケナム )

<イングランド・日本>前半、機転の利いたサポートコースが功を奏し、トライを奪ったSH斎藤直人(C)JRFU
Photo By 提供写真

残念ながら大敗となったイングランド戦だが、27年W杯までに「超速ラグビー」を完成させるためのヒントとなるプレーがあった。

前半34分のSH斎藤によるトライシーン。1フェーズ前でボールを持ったフランカー下川は、半歩ずらして相手に当たり、深入りせずに即座にラックをつくった。内側から味方のサポートが来る前に斎藤は素早くボールアウト。右端でオーバーラップが生まれ、トライにつながった。

斎藤のサポートコースも良かった。大学時代から予測能力に長けており、この場面では外で抜けると見るや、進路をあらかじめ前向きに取っている。CTBライリーが抜けるやいなや、全速力でサポート。外側にWTB長田もいたが、より内側でトライできたのは斎藤の判断によるところが大きい。

今年のテストマッチは4勝7敗で、格上相手には全敗。特に伝統国相手には全試合で50失点以上を喫した。1年目はディフェンスの整備に目をつむり、超速ラグビーの浸透に時間を割いている状況で自信が揺らぎかねない結果だが、私はW杯まで貫くべきだと思う。

そのためには全ての選手が下川や斎藤のように戦術を理解し、自分の強みや相手との力関係を理解した上でプレーすることが不可欠だ。特にFWのアイランダー選手は力づくで突っ込む場面が多いが、世界では通用しない。スタイルを浸透させるためにも、まずは意識付けしていくことが重要だろう。

その斎藤も前半5分のPGは外した。FB松永もキックオフでノット10メートルを2回犯した。キックに限らないが、やはり所属チームでやっていないことを、代表でやらせるのは付け焼き刃と言わざるを得ない。故障者が相次ぎ致し方ない部分はあるが、キッカーやポジションなど、全体のバランスを取って招集することの重要性も痛感させられる遠征となった。

今後は海外でプレーする選手を除いてリーグワンの所属チームに戻り、自己研鑽に励むことになる。今年の世界ベストフィフティーンが発表されたが、年間最優秀選手のFWデュトイ(トヨタ)ら実に6人がリーグワンに所属。リーグのレベルも年々高まっているのは間違いないが、日本の選手が進化できているかは疑問符が付く。もっと彼らから学び、プレーやマインドセットを盗み取るくらいの気持ちで、来年5月までの1シーズンを過ごしてほしい。

先々週に行われたイングランド―オーストラリア戦。両国ともに現在は低迷しているものの、それぞれのチームでエディー・ジョーンズ・ヘッドコーチ(HC)が抜てき・育成した選手の活躍が見られた。南北の強豪国では20歳前後の一番伸び盛りの選手を育成するシステムが整備されているが、大学ラグビーが中心の日本は、大きく遅れを取っている。27年は間に合わないかも知れないが、先々を考えれば整備は急務。来年1月の大学シーズン終了後、何らかの施策はあるのか。トップチームの指揮官たるジョーンズHCの仕事かどうかは微妙だが、どんなアクションがあるのか、あるいのはないのか、注目している。(元U―23日本代表監督)

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