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【コラム】西部謙司

予選と本大会の狭間

[ 2024年11月28日 12:00 ]

<サッカー日本代表練習>多くの中国メディアが取材する中、笑顔で練習に汗を流す鎌田(撮影・西海健太郎)
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あと1つ勝てば予選通過。W杯への出場枠が倍増した今回の予選で日本代表が敗退することは考えられなかったが、ここまでは順調に勝点を積み上げられるとも思っていなかった。

ウイングバックにウイングを起用する攻撃的な3-4-3システムが奏功した。初戦で中国に7-0、続くバーレーンも5-0。守備固めをしてくる相手をいかに攻略するかは、カタールW杯のコスタリカ戦でつきつけられた課題だったが、それに対する回答を示したわけだ。

ただ、その後の試合ではいくつかの問題点も垣間見えている。

サウジアラビア戦は前半に主導権を握られた。オーストラリア戦は三笘薫と中村敬斗のダブル・ウイングという奥の手も出したが1得点にとどまった。インドネシアと中国にはロングボールでチャンスを作られていた。

いずれも予選通過に支障をきたすほどの問題ではない。ただ、W杯本大会までには修正しておきたい。とくにサウジアラビアに主導権を握られたのと、ロングボール対策は本大会でもポイントになりそうである。

現代のサッカーは序盤にビルドアップとプレスの攻防が必ずある。そこで相手に主導権を握られると後半開始までは修正が難しい。へたをすれば、それが勝敗に直結する。

この攻防はいわば後出しジャンケン大会だ。プレスの仕方、それに対してのビルドアップの可変について、今や秘密はない。相手の出してくる手より有利な形に変えていくだけなのだが、その迅速さと正確さは求められる。

今予選を見る限り、日本でこの攻防を先導できるのは守田英正だった。そして、守田の動きに連動できるのが鎌田大地。この2人が先発しなかった中国戦(アウェイ)は相手の守備戦術の弱点をつけずに前半を終えている。守田と鎌田の重要性を再認識させられた。

ただ、守田と鎌田がいたとしても、どうなるかわからない状況はまだ試されていない。

フィールド全域でマンツーマンのプレッシングを行う相手にどう対処するかだ。これは欧州強豪クラブ同士の試合で定番化している。実はカタールW杯の後半から日本がドイツにこれを仕掛けて勝利しているのだが、逆の立場になったときにどうなるかは今回の予選ではおそらくわからないままだろう。互いにマンツーマンの潰し合いになれば、一瞬のミスが即決定機につながる。この潰し合いの構図では互いにリスクを負う。

欧州強豪クラブでもリスクマネジメントは主にCBの力量に頼る以上のものを今のところ見たことがない。逆に潰し合いに勝ったときはアタッカーがDF1人をかわせばシュート、ラストパスにつながる。簡単に言えばCBとFWの個の力量で試合が決まる。この非常にタイトな試合展開を日本はまだ経験していない。後出しジャンケン大会の先にある、のっぴきならない個vs個の連続である。

ロングボールに関しては、高さ勝負に弱いというより、バウンドするボールへの処理に不安があった。個の能力の問題もあるが、攻撃型3バックの構造的な弱点といえる。攻撃でどこまで押し込めるかで危険度が変わるので、ビルドアップとリンクした問題かもしれない。

遅かれ早かれ予選は通過する。そして予選は本大会へ向けてあまり参考にならない。今後のマッチメイクが重要になる。(西部謙司=スポーツライター)

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