セリエA再生へ 米国でリーグ戦開催プラン 欧州主要Lでは初の試み
[ 2025年3月12日 06:00 ]
Photo By AP
【蹴トピ】 イタリア・セリエAが欧州主要リーグで初となるリーグ戦の国外開催に動き出した。米国資本クラブの増加や同国代表の活躍など結びつきが深まっている米国での開催案をリーグ幹部が表明。26年W杯共催を控える"新大陸"で市場を開拓し「セリエA」ブランド再生の足掛かりにする。
セリエAのエツィオ・シモネッリ会長が訪問先のニューヨークでリーグ戦の米国開催案に言及したのが4日のこと。「我々の明確な目標。刺激的な挑戦になるだろう。米国でこのようなイベントを行う欧州最初のリーグになりたい」と訴えた。
背景にはセリエAで急増している米国資本の存在がある。2010年代からローマやACミラン、インテル・ミラノなど名門を含むクラブが次々と米国の企業家や投資企業などの傘下入り。米保険会社が保有権を争ってルーマニアの企業家と係争中のジェノアを含めれば米国資本が9クラブ、カナダ人がトップのボローニャを加えれば1部リーグの半数が北米オーナーを持つ。
シモネッリ会長は米国勢資本の勢いが増すリーグから支持を受けて昨年12月の会長選で初当選。「選んでくれたことに感謝しているので、このエリア(北米)に焦点を当てるのは当然。我々は最多の米国人オーナーを持つリーグであるだけでなく、潜在的バイヤーもいる」とさらなる"投資"への思惑もある。
米国代表の主力であるFWプリシックとMFムサはACミラン、FWウェアとMFマッケニーはユベントスと名門でプレー。複数局による米国でのセリエA中継は今季前半戦で初めて通算1000時間を超え、視聴者数は前季比50%増を記録した。シモネッリ会長は「今季は米国におけるセリエAの歴史的な節目。イタリアのサッカーがこれほど広くアクセスできることはなかった」と力を込める。
ピッチ内外で結びつきが強まる中でのセリエA米国開催案。リーグでマーケティング担当ディレクターを務めるミケーレ・チッカレーゼ氏は欧州カップ戦との日程調整や長距離移動に伴う選手の負担増を課題としながらも「承認を得られれば1〜2年の間にリーグ戦が米国で見られるかも」と見通しを語った。
欧州チャンピオンズリーグ(CL、旧チャンピオンズ杯を含む)では1988〜89年シーズンから2006〜07年までにイタリア勢は優勝6回、準優勝7回といずれも最多を記録。欧州最高の競技力に加え、リーグ別収益も1996〜97年にはイングランド・プレミアリーグの6億8500万ユーロ(約1096億円)と小差の5億5100万ユーロ(約882億円)で欧州2位につけていた。しかし、近年はCL制覇から遠ざかり、収益面でも2022〜23年シーズンに69億6700万ユーロ(約1兆1147億円)のプレミアリーグに対して28億5600万ユーロ(約4570億円)と大差の4位に沈んでいる。
米国でのリーグ戦開催は現状打破に向けた起爆剤としての期待が大きく、チッカレーゼ氏は「トレンドセッターになろうとする競争は常にある。その後に追随者が現れるが、最初に行った者が最も利益を得る」と一番乗りの意義を強調する。野球のMLBやアメリカンフットボールのNFLなど米メジャースポーツは国外のリーグ戦開催で市場開拓に効果を上げてきた。その国際戦略が欧州サッカー界でも効果を発揮するのか。実現すれば大きな注目を集めることになる。
【FIFA 心変わりで聖域なくなる? 計画頓挫の過去も】
リーグ戦の国外開催はこれまで長く実現が見送られてきた。前季のリーグ戦王者とカップ戦覇者が対戦するスーパー杯は今季イタリアとスペインが共にサウジアラビア、フランスがカタールで開催されるなど柔軟な対応の対象だったが、リーグ戦は"聖域"だった。
2008年2月にプレミアリーグがホーム&アウェーの枠外で39試合目の「国際ラウンド」を加え、11年1月に海外5都市での開催を検討すると発表。会場候補にはニューヨークや北京とともに東京も挙げられた。対戦相手は前季5位までをシードして抽選で決める案も出たが、総当たりのホーム&アウェーが大原則の伝統に反して公平性を欠くなど批判が噴出。国際サッカー連盟(FIFA)や欧州サッカー連盟(UEFA)、各国協会やサポーター団体などから軒並み反対を受けた。
また、米プロモーターのリレベント・スポーツは18〜19年にスペイン1部バルセロナとジローナのリーグ戦を米マイアミで行うと発表。スペイン・リーグも後押ししたが、FIFAが「リーグ戦は各国領域内で行われるべき」との原則を再確認して計画は頓挫した。
その中で風向きが変わり始めたのが昨年4月だった。米国で海外リーグ戦開催を目指すリレベント・スポーツと裁判で争ってきたFIFAが訴訟の取り下げに合意。翌5月には国外開催に反対する方針の見直しに取り組んでいく意向を示した。
FIFAの新たな方針は示されていないが、会場となる米国サッカー連盟の合意を取り付けることができれば、セリエA米国開催が実現に向けて大きく動き出す可能性はある。
≪セリエAでプレーする米国代表選手≫
☆FWクリスチャン・プリシック(26=ACミラン)23年夏にチェルシーから加入。今季セリエA24試合8得点。国際Aマッチ76試合32得点。
☆MFウェストン・マッケニー(26=ユベントス)シャルケから期限付き移籍を経て21年3月に完全移籍。今季リーグ戦22試合2得点。国際Aマッチ58試合11得点。
☆FWティモシー・ウェア(25=ユベントス)23年夏にリールから加入。今季リーグ戦20試合5得点。国際Aマッチ42試合7得点。
☆MFユヌス・ムサ(22=ACミラン)23年夏にバレンシアから加入。今季リーグ戦23試合無得点。国際Aマッチ45試合1得点。
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