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永瀬正敏 27年の時を経て「箱男」に「年齢を重ねた今だから、理解できる」 当時のキャスティングで完成

[ 2024年8月23日 14:55 ]

映画「箱男」で主演した永瀬正敏
Photo By スポニチ

俳優の永瀬正敏(58)が主演する映画「箱男」(監督石井岳龍、公開中)は、現代人がとらわれている"箱"の存在を浮き彫りにする。段ボール箱をかぶり、のぞき穴から外の世界を見る男の姿は異様だが、男がかぶる箱と、現代人がスマートフォンで他人をのぞく様子は「類似している」と語った。

「小説が出た50年前よりも、その狂気性をリアルに感じられるのは、僕たちが箱男だからなのかもしれない」と明かした。

3月に生誕100年を迎えた作家・安部公房の同名小説を映画化した。同作のメガホンを取った石井氏は32年前に、安部本人と会い映画化を約束。97年に永瀬主演で制作が決まっていた。

しかし、クランクイン前日に中止が決定。撮影を行うドイツ・ハンブルクで「ぼう然とした」と苦い経験を明かす。

当時は、「喜劇」として進行して作品は、27年を経て原作に沿う内容に変更。永瀬、佐藤浩市(63)など当時キャスティングしたメンバーに声をかけ、映画が完成した。

「昔は、箱にとらわれた『私』について、混乱しながら原作を読みました。年齢を重ねた今だから、理解できる部分も多い」とうなずく。

役を演じるのではなく、役として生きることを信条とする永瀬。どら焼き店の店主を演じた映画「あん」では、撮影時間以外も、頭に手ぬぐいを巻き、焼いた皮に、あんをはさむ行程を繰り返した。様子を見ていた地元の人が「新しいどら焼き屋ができた」と列を作ったという逸話もある。

役や作品に真摯向き合う。職人のような印象があるが、「不安なんです」と意外な言葉が返ってきた。

「僕が器用だったら、その経験値はいらないんです。でもそうじゃないから、僕と役の間を埋めるため、人物の理解を深めるためにその経験が必要なんです」

27年前にもかぶったという箱。今回かぶった際は「懐かしさを感じた」と苦笑い。自宅に持ち帰り、被っていると、17年間同居している愛猫が「父ちゃん入れてくれ」と箱を引っ掻き、ねだってきたという。

「抱っこがあんまり好きじゃない子なのに、抱いて一緒に入ったら妙に落ち着いて。いつもよりもグッと距離が縮まりました」と目を細めた。

撮影用にと、取材現場に置かれた箱。どうしても入りたくなり、永瀬に「入ってみたい」と伝えると「どうぞ、どうぞ」とすすめてくれた。

カメラマンなど、たくさんのスタッフが行き交うスタジオ。箱を被ることで、その世界から切り離され、透明な存在になった。

石井監督の意向で「シネマスコープサイズ」に開けられたという小窓から、外をのぞくと、なんとも言えない高揚感があった。

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