都道府県や市町村は、学校教育や福祉・衛生、警察・消防、道路、下水道などの整備といったさまざまな行政分野の中心的な担い手であり、国民生活に大きな役割を果たしています。
ここでは、個々の地方公共団体の財政の集合である地方財政について、普通会計を中心として、令和4年度の決算の状況、地方公共団体の財政健全化への取組などを紹介していきます。
地方公共団体の会計は、一般会計と特別会計に区分経理されていますが、各団体の会計区分は一様ではないため、決算統計では地方公共団体全体の財政の状況を明らかにするとともに地方公共団体相互間の比較を可能とする観点から、統一的な方法により、一般行政部門の会計を普通会計として整理し、その他の会計(公営事業会計)と区分しています。
図・地方公共団体の会計の決算統計上の分類 普通会計:一般行政部門の会計(学校教育、福祉、道路、消防など)。 その他の会計(公営事業会計):公営企業会計(水道事業、交通事業、電気事業、ガス事業、病院事業、下水道事業、宅地造成事業など)、国民健康保険事業会計、後期高齢者医療事業会計、介護保険事業会計など。
地方政府の規模を国内総生産(支出側、名目)に占める割合でみると、地方政府が11.7%を占めており、中央政府の約2.5倍となっています。
国内総生産(支出側)と地方政府(令和4年度)のグラフ。 国内総生産(支出側、名目)556兆4,897億円(100%)。 「公的部門(中央政府:26兆2,457億円(4.6%)、地方政府:66兆1,309億円(11.7%)、社会保障基金:51兆6,372億円(9.1%)、公的企業:7兆2,922億円(1.3%)、合計151兆3,060億円(26.7%)) 民間部門(企業部門:106兆8,781億円(18.9%) 家計部門:331兆2,781億円(58.5%) 合計:438兆1,562億円(77.3%))財貨・サービスの純輸出((4.2%)合計:22兆9,725億円)」。
公的支出の内訳を最終支出主体別にみると、政府最終消費支出においては42.4%、公的総資本形成においては49.3%を地方政府が支出しています。地方政府は中央政府を上回る最終支出主体であり、国民経済上、大きな役割を担っています。
公的支出の状況。公的支出151兆3,060億円(100.0%)。中央政府「総額26兆2,457億円(17.3%)、政府最終消費支出18兆8,271億円(12.4%)、公的総資本形成7兆4,186億円(4.9%)」。公的企業「総額7兆2,922億円(4.8%)、公的総資本形成7兆2,922億円(4.8%)」地方政府「総額66兆1,309億円(43.7%)、公的総資本形成14兆4,143億円(9.5%)、政府最終消費支出51兆7,166億円(34.2%)」。社会保障基金「総額51兆6,372億円(34.1%)、政府最終消費支出51兆5,479億円(34.1%)、公的総資本形成893億円(0.1%)」。政府最終消費支出の割合「総額122兆916億円。中央政府15.4%、社会保障基金42.2%、地方政府42.4%」。公的総資本形成「総額29兆2,144億円。中央政府25.4%、社会保障基金0.3%、地方政府49.3%、公的企業25.0%」。 公的支出の推移。 23年度「公的支出額123兆7,625億円内(国内総生産(支出側、名目)に占める公的支出の割合(24.8%)公的支出に占める地方の割合(45.0%))、地方政府55兆7,080億円(11.1%)、中央政府21兆3,573億円(4.3%)、社会保障基金40兆5,113億円(8.1%)、公的企業6兆1,860億円(1.2%)」。 24年度「公的支出額124兆4,954億円内(国内総生産(支出側、名目)に占める公的支出の割合(24.9%)公的支出に占める地方の割合(44.5%))、地方政府55兆4,317億円(11.1%)、中央政府20兆9,016億円(4.2%)、社会保障基金41兆6,293億円(8.3%)、公的企業6兆5,338億円(1.3%)」。 25年度「公的支出額128兆5,242億円内(国内総生産(支出側、名目)に占める公的支出の割合(25.1%)公的支出に占める地方の割合(43.9%))、地方政府56兆3,996億円(11.0%)、中央政府22兆7,985億円(4.4%)、社会保障基金42兆6,879億円(8.3%)、公的企業6兆6,381億円(1.3%)」。 26年度「公的支出額131兆5,806億円内(国内総生産(支出側、名目)に占める公的支出の割合(25.1%)公的支出に占める地方の割合(44.2%))、地方政府58兆1,953億円(11.1%)、中央政府22兆7,985億円(4.4%)、社会保障基金43兆7,998億円(8.4%)、公的企業6兆8,638億円(1.3%)」。 27年度「公的支出額133兆2,561億円内(国内総生産(支出側、名目)に占める公的支出の割合(24.6%)公的支出に占める地方の割合(44.0%))、地方政府58兆5,877億円(10.8%)、中央政府22兆1,264億円(4.1%)、社会保障基金45兆3,362億円(8.4%)、公的企業7兆2,058億円(1.3%)」。 28年度「公的支出額133兆6,017億円内(国内総生産(支出側、名目)に占める公的支出の割合(24.5%)公的支出に占める地方の割合(44.0%))、地方政府58兆8,386億円(10.8%)、中央政府22兆0,636億円(4.0%)、社会保障基金45兆5,096億円(8.4%)、公的企業7兆1,899億円(1.3%)」。 29年度「公的支出額135兆4,830億円内(国内総生産(支出側、名目)に占める公的支出の割合(24.4%)公的支出に占める地方の割合(43.7%))、地方政府59兆1,875億円(10.7%)、中央政府22兆2,992億円(4.0%)、社会保障基金46兆7,526億円(8.4%)、公的企業7兆2,437億円(1.3%)」。 30年度「公的支出額137兆4,086億円内(国内総生産(支出側、名目)に占める公的支出の割合(24.7%)公的支出に占める地方の割合(43.8%))、地方政府60兆2,037億円(10.8%)、中央政府22兆4,645億円(4.0%)、社会保障基金47兆3,097億円(8.5%)、公的企業7兆4,308億円(1.3%)」。 令和元年度「公的支出額141兆1,183億円内(国内総生産(支出側、名目)に占める公的支出の割合(25.3%)公的支出に占める地方の割合(43.9%))、地方政府61兆9,673億円(11.1%)、中央政府23兆2,181億円(4.2%)、社会保障基金48兆6,842億円(8.7%)、公的企業7兆2,486億円(1.3%)」。 令和2年度「公的支出額144兆5,360億円内(国内総生産(支出側、名目)に占める公的支出の割合(26.9%)公的支出に占める地方の割合(44.2%))、地方政府63兆8,132億円(11.9%)、中央政府25兆2,293億円(4.7%)、社会保障基金48兆361億円(8.9%)、公的企業7兆4,573億円(1.4%)」。 令和3年度「公的支出額148兆6,851億円内(国内総生産(支出側、名目)に占める公的支出の割合(27.0%)公的支出に占める地方の割合(43.3%))、地方政府64兆4,544億円(11.7%)、中央政府26兆4,070億円(4.8%)、社会保障基金50兆6,300億円(9.2%)、公的企業7兆1,936億円(1.3%)」。 令和4年度「公的支出額151兆3,060億円内(国内総生産(支出側、名目)に占める公的支出の割合(26.7%)公的支出に占める地方の割合(43.7%))、地方政府66兆1,309億円(11.7%)、中央政府26兆2,457億円(4.6%)、社会保障基金51兆6,372億円(9.1%)、公的企業7兆2,922億円(1.3%)」。
国と地方を通じた歳出純計額の目的別歳出について、最終支出の主体に着目して国と地方に分けると、下図のようになります。
地方の歳出の割合が高いのは、主に、民生費、衛生費、学校教育費などの日常生活に関係の深い分野です。
国と地方の主な目的別歳出の割合(最終支出ベース)。目的別歳出の割合「衛生費(保健所・ごみ処理等)6.7%、学校教育費(小・中学校、幼稚園等)7.6%、司法警察消防費3.3%、国土開発費(都市計画、道路、橋りょう等)6.9%、国土保全費(河川海岸)1.4%、民生費(年金関係を除く)(児童福祉、介護などの老人福祉、生活保護等)21.2%、社会教育費等(公民館、図書館、博物館等)3.2%、災害復旧費等0.5%、商工費9.9%、公債費17.5%、農林水産費2.1%、住宅費等1.8%、恩給費0.1%、民生費のうち年金関係5.8%、防衛費2.6%、一般行政費等(戸籍、住民基本台帳等)8.2%、その他1.2%」。地方の割合55.9%「衛生費(保健所・ごみ処理等)88%、学校教育費(小・中学校、幼稚園等)85%、司法警察消防費77%、国土開発費(都市計画、道路、橋りょう等)74%、国土保全費(河川海岸)72%、民生費(年金関係を除く)(児童福祉、介護などの老人福祉、生活保護等)69%、社会教育費等(公民館、図書館、博物館等)65%、災害復旧費等56%、商工費50%、公債費34%、農林水産費30%、住宅費等25%、恩給費4%、民生費のうち年金関係0%、防衛費0%、一般行政費等(戸籍、住民基本台帳等)72%、その他0%、」。国の割合44.1%「衛生費(保健所・ごみ処理等)12%、学校教育費(小・中学校、幼稚園等)15%、司法警察消防費23%、国土開発費(都市計画、道路、橋りょう等)26%、国土保全費(河川海岸)28%、民生費(年金関係を除く)(児童福祉、介護などの老人福祉、生活保護等)31%、社会教育費等(公民館、図書館、博物館等)35%、災害復旧費等44%、商工費50%、公債費66%、農林水産費70%、住宅費等75%、恩給費96%、民生費のうち年金関係100%、防衛費100%、一般行政費等(戸籍、住民基本台帳等)28%、その他100%」。
地方債現在高のほか、地方財源不足に対処するための交付税及び譲与税配付金特別会計借入金、公営企業において償還する企業債のうち普通会計がその償還を負担するものを含めた借入金残高は、令和4年度末で約187兆円となっており、依然として高い水準にあります。このような財政状況のもと、自治財政局は、地方財政計画の策定等を通じて、地方公共団体が当面する地域福祉の充実や生活関連社会資本の整備等の重要政策課題に対応するため必要な財源を確保しつつ、不要不急な経費について徹底した節減合理化の道標を示すなど、地方財政の健全化の先導役としての役割を担うことが期待されています。