世界金融危機からの回復に伴い、2010年の世界の二酸化炭素排出量および大気中の二酸化炭素濃度が記録的水準に上昇
(筑波研究学園都市記者会、 環境省記者クラブ同時配)
独立行政法人国立環境研究所(029-850-内線番号)
グローバルカーボンプロジェクト(GCP)つくば国際オフィス事務局長
ソバカル・ダカール (2672)
地球環境研究センター 主席研究員 山形与志樹(2672)
グローバルカーボンプロジェクト(GCP) (注1) は、世界金融危機によって2008〜2009年に減少した世界の二酸化炭素排出量が、2010年では前年比5.9%の増加に転じ、また、大気中の二酸化炭素濃度は389ppmという記録的な水準に達したことを明らかにしました。
この研究成果をまとめた評価報告書は、2011年12月5日(日本時間午前3時)にNature Climate Change(英国気候変動専門月刊誌)電子版に掲載の予定です。
GCPは、Nature Climate Change誌に掲載される評価報告書「Rapid growth in CO2 emissions after the 2008-2009 global financial crisis」において、世界金融危機によって2008〜2009年に減少した世界の二酸化炭素排出量が、2010年では前年比5.9%増という記録的な増加に転じたことを明らかにしました。
この評価報告書では、新興経済圏における二酸化炭素排出量が急増していることと、経済先進国の排出量が増加に転じたことにより、世界金融危機に起因した排出量低減効果は短命に終わったと分析しています。
2010年において世界の二酸化炭素排出量増加に最も大きく影響したのは中国、アメリカ、インド、ロシア連邦及び欧州連合で、さらに新興経済圏からの排出量も依然として増加を続けており、(独)国立環境研究所GCPつくば国際オフィス事務局長のソバカル・ダカール博士は、「世界金融危機は世界経済を二酸化炭素大量排出への道から引き戻す機会であったが、実現されていない」と述べています。
また、2010年の大気中の二酸化炭素濃度が、少なくとも過去80万年の記録の中で最も高い水準である389ppmに達したことも判明しました。
さらに詳しい情報については、以下のウェブサイトをご参照ください。
(2011年12月5日(月)以降掲載)
http://www.globalcarbonproject.org(英文)
※(注記)GCPは毎年評価報告書を作成し、人間の活動に由来する炭素収支について最新の数値を示しています。
(注1) 地球環境変動にかかわる国際研究計画(IGBP, IHDP, WCRP, DIVERSITAS)の連携による「地球システム科学パートナーシップ(ESSP)」がスポンサーとなって2001年に発足した国際研究計画。グローバルな炭素循環にかかわる自然と人間の両方の側面とその相互作用について、自然科学と社会科学を融合した分析を実施し、国際的な炭素循環管理政策の策定に役立つ科学的理解を深めることを目的とする。
(独)国立環境研究所と豪州連邦科学産業研究機構に事務局が設置されている。
【お問い合わせ】
(独)国立環境研究所
地球環境研究センター 主席研究員
山形与志樹
Tel: 029-850-2672, Fax: 029-850-2960
豪州連邦科学産業研究機構 海洋大気研究部門
GCPキャンベラ国際オフィス事務局長
ペップ・カナデル(Pep Canadell)
Tel: +61-408-020-952
関連新着情報
- 2024年11月13日更新情報【GCPつくば国際オフィス】「Global Carbon Budget 2024」(世界の炭素収支2024年版)が公開されました。
- 2024年9月10日更新情報【GCPつくば国際オフィス】「Global Methane Budget 2024」(世界のCH4収支2024年版)の公開に先立ち、Commentary(解説論文)が発表されました。
-
2024年6月12日報道発表世界の一酸化二窒素(N2O)収支2024年度版を公開
-1980年から2020年にかけて人為起源N2O排出は40%増加-(筑波研究学園都市記者会、環境省記者クラブ、環境記者会、文部科学記者会、科学記者会、大学記者会(東京大学)同時配付) -
2023年12月5日お知らせ「Global Carbon Budget 2023」
(世界のCO2収支2023年版)発表のお知らせ -
2023年6月16日報道発表ボトムアップ手法によるアジア地域のメタン収支評価
—地表データの積み上げによりメタンの放出・吸収源を詳細に分析—(筑波研究学園都市記者会、環境省記者クラブ、環境記者会、文部科学記者会、科学記者会同時配付) -
2023年3月23日報道発表大気観測から中国のCO2排出量の準リアルタイム推定法を開発
—波照間島・与那国島で観測されるCO2/CH4変動比に基づき推定が可能に—(筑波研究学園都市記者会、環境省記者クラブ、環境記者会、文部科学記者会、科学記者会同時配付) - 2023年1月17日お知らせオンラインイベント「観測とシミュレーションで読み解く『温室効果ガス収支』-"最良の科学"に向けて-」開催のご案内【終了しました】
-
2022年11月11日お知らせ「Global Carbon Budget 2022」
(世界のCO2収支2022年版)発表のお知らせ -
2022年8月2日報道発表セメント・コンクリート部門の
カーボンニュートラル達成方法を解明
〜供給側と需要側の一体的対策が必要〜(筑波研究学園都市記者会、環境省記者クラブ、環境記者会同時配付) - 2020年12月11日報道発表世界のCO2収支 2020年版を公開 〜国際共同研究(グローバルカーボンプロジェクト)による評価〜(筑波研究学園都市記者会、環境省記者クラブ、環境記者会、水産庁記者クラブ、文部科学記者会、科学記者会同時配布)
-
2020年10月8日報道発表世界の一酸化二窒素(N2O)収支 2020年版を公開
(筑波研究学園都市記者会、環境省記者クラブ、環境記者会、文部科学記者会、科学記者会同時配布) -
2020年8月6日報道発表世界のメタン放出量は
過去20年間に10%近く増加
主要発生源は、農業及び廃棄物管理、
化石燃料の生産と消費に関する部門の人間活動(筑波研究学園都市記者会、環境省記者クラブ、環境記者会、文部科学記者会、科学記者会同時配付) -
2019年12月4日報道発表世界のCO2排出量は3年連続で増加するも、
増加率は低下の見通し〜国際共同研究(グローバルカーボンプロジェクト)による評価〜(筑波研究学園都市記者会、環境省記者クラブ、環境記者会、水産庁記者クラブ、文部科学記者会、科学記者会同時配付) -
2018年11月6日報道発表10年間の民間旅客機観測(CONTRAIL)により
アジア太平洋地域の大気中二酸化炭素分布の三次元構造を解明
ーアジアモンスーン高気圧による隔離と流出が明らかにー(筑波研究学園都市記者会、環境省記者クラブ、環境記者会、気象庁記者クラブ同時配付) -
2017年11月21日報道発表
西シベリア上空のメタン濃度は高度によって上昇度に差異があると判明(筑波研究学園都市記者会、環境省記者会、環境省記者クラブ、文部科学記者会、科学記者会、宮城県政記者会同時配布) -
2017年6月2日報道発表温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)の観測データに基づくメタンの全大気平均濃度データの公開について
(筑波研究学園都市記者会、環境省記者クラブ同時配付) -
2016年10月27日報道発表季節変動を取り除いた全大気平均二酸化炭素濃度が初めて400 ppmを超えました!
〜温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)による観測速報〜
(筑波研究学園都市記者会、環境省記者クラブ同時配付) -
2016年9月1日報道発表「いぶき」(GOSAT)観測データによる
大都市等の人為起源二酸化炭素濃度の推定結果について
(筑波研究学園都市記者会、環境省記者クラブ同時配付) -
2016年5月20日報道発表全大気平均二酸化炭素濃度が初めて400 ppmを超えました
〜温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)による観測速報〜
(筑波研究学園都市記者会、環境省記者クラブ、文部科学省記者クラブ同時配付) -
2015年12月8日報道発表バイオCCSなどの二酸化炭素除去技術にはまだ多くの制約があることが国際共同研究により判明
-国際合意の2°C目標達成には、今すぐ積極的な排出削減が不可欠-(筑波研究学園都市記者会、環境省記者クラブ同時配布) -
2015年11月16日報道発表温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)の観測データに基づく月別二酸化炭素の全大気平均濃度の公表について
(筑波研究学園都市記者会、環境省記者クラブ、文部科学省記者クラブ同時配付) - 2015年8月19日更新情報化石燃料燃焼による二酸化炭素排出量の全球1kmデータ(英語)を公開しました
- 2014年12月5日報道発表温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)による大都市等における二酸化炭素観測データと人為起源排出量との関係について(筑波研究学園都市記者会、環境省記者クラブ、文科省記者クラブ同時配付)
- 2014年11月27日報道発表航空機による大気観測プロジェクト(CONTRAIL Project)がボーイングのecoDemonstrator787フライトに参加!(筑波研究学園都市記者会、環境省記者クラブ、国土交通記者会、国土交通省交通運輸記者会同時配付)
- 2013年1月21日報道発表民間航空機を利用した観測で上空の二酸化炭素濃度の短周期変動が明らかに(お知らせ)(筑波研究学園都市記者会、環境省記者クラブ同時配付)
- 2012年12月5日報道発表温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)の観測データによる二酸化炭素吸収排出量等の推定結果の公開について(筑波研究学園都市記者会、環境省記者クラブ、宇宙航空研究開発機構 同時発表)
- 2012年2月13日報道発表大気中酸素濃度分布の定期貨物船上での長期継続観測に成功 −オーストラリア/ニュージーランド沖で観測される高濃度CO2の起源推定が可能に−(お知らせ)(筑波研究学園都市記者会、環境省記者クラブ同時配付 )
- 2011年7月25日報道発表富士山頂における大気中二酸化炭素濃度の自動越冬観測の試み −低温、無人、無電源下の自動観測機器を開発−(お知らせ)(筑波研究学園都市記者会 配付)