会長からのご挨拶(2025年7月1日)

会長からのご挨拶


今年の夏は5月から30度を超える日があり、秋の中頃まで猛暑が続く見込みです。6月1日から労働安全衛生規則が改正され、事業者に対しては、暑さ指数(WGBT値)という数値と職場における作業強度を比較して早期発見・早期対応ができる体制の整備などの熱中症対策が義務化されました。近年、地球温暖化の影響で猛暑日が増え、熱中症による労働者の健康被害が深刻化しているとして、事業者に強制力のある熱中症対策が導入されたものです。


報道でも、小さな扇風機(ファン)がついた作業着の着用を推奨したり、スマートウォッチのような検知器を腕に巻き体温上昇の早期発見を心がけるなど、工場や建設現場等でさまざまな工夫がされている場面が見られるようになりました。


このように、職場では労働者への配慮がなされるということですが、家庭や学校などでも同様の熱中症対策が不可欠です。みなさまも、我慢せずにエアコンを活用する、日中は空調設備の整った施設を利用する、水分・塩分はこまめにとるなどの熱中症対策をしていただきたいと思います。


刑事手続のデジタル化

5月16日に刑事手続のデジタル化を含む刑事訴訟法の改正法が国会で成立し、電子逮捕状が2026年度にも導入されるとの大きな見出しで報道されました。

捜査機関がデジタルデータの収集を広範囲に行うことができるという法改正に対し、日弁連は市民のプライバシーの権利を保護する観点から懸念を示し、与野党や各メディア、ひいては国民の皆様に一定の御理解をいただき、国会審議の中で条文が修正されるに至りました。今後は、適切な運用がなされるか、注視する必要があります。また、被疑者・被告人の防御権保障のために弁護人とのオンライン接見の法制化を求めましたが、条文に盛り込むことは見送られ、附則において、運用上の措置として行われている非対面による外部交通を推進することとされ、衆参両院でそれぞれ附帯決議もなされました。日弁連は、改正された刑事訴訟法を含む関連する法律の改善や課題の解消のために、今後も活動を継続していきます。


選択的夫婦別姓制度

今国会に野党3党から選択的夫婦別姓をめぐる改正法案が衆議院に提出されましたが、残念ながら継続審議になりました。

日弁連は、法律家団体として、選択的夫婦別姓制度の導入に反対する意見に対して、氏を変えなければ結婚できないことは人権の問題であること、この制度は氏を選択する権利を与えるだけのものであって戸籍制度は維持されること、日本以外の国では、夫婦や親子で氏が異なっていても問題は生じていないことなど、さまざまな面からの説明を準備し、全国各地の理事とも協力して、世論の喚起や国会議員、地方議会への働きかけなどを行ってきました。同制度の導入については、次の国会に向けてさらなる運動を展開していく予定です。


弁護士制度150年

来年、2026年(令和8年)2月22日で、弁護士制度の前身である代言人制度が公布されてから150年を迎えます。弁護士制度100年の際に、日弁連は弁護士制度の歴史を紹介する立派な書籍を残しているのですが、そこでは女性弁護士について、1940年(昭和15年)に初めて女性の弁護士が3名生まれたこと以外にほとんど言及がされていないことが残念です。

今回、弁護士制度150年を迎えるにあたり、記念企画としてウェブサイトに特設ページを公開することを検討しています。そのコンテンツの1つとして、直近50年を中心とした日弁連・弁護士会における男女共同参画の取り組みを紹介する予定です。公開されましたら、ぜひご覧いただければと思います。


日弁連の活動をこれまで以上に発信していきたいと思いますので、引き続きよろしくお願いいたします。



2025年(令和7年)7月1日
日本弁護士連合会会長

渕上 玲子会長のサイン



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