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電気事業者による美浜発電所1号機の後継機設置を検討するための自主調査再開に際し、改めて原発の再稼働及び新増設の禁止を求める会長声明


関西電力株式会社(以下「関西電力」という。)は2025年7月22日、福井県美浜町において、地形や地質等の特性を把握し、美浜発電所1号機の後継機設置の可能性を検討するための自主調査を開始(再開)すること(以下「本件調査再開」という。)を発表した。


美浜原子力発電所については、2011年3月12日以降、後継機設置を検討するための自主的な現地調査を見合わせていた。関西電力は、本調査の結果のみから後継機設置を判断するものではないとしつつも、調査を再開するとしている。これは、2025年に閣議決定された第7次エネルギー基本計画による原発回帰政策、すなわち、福島第一原子力発電所事故(以下「福島原発事故」という。)後に「可能な限り原発依存度を低減させる」としてきた方針を、再稼働、老朽原発の運転延長などの原発回帰政策に転換した政府方針に沿ったものと位置付けられる。


福島原発事故は、福島県を始めとする広範な地域に深刻な放射能汚染をもたらし、事故から10年以上を経ても、地域住民は、人格権、幸福追求権等の基本的人権を日々侵害されている。新規制基準の下においても、原発が破局的な事故を引き起こす可能性があることには何ら変わりなく、根本的な問題は解決されていない。


しかも、原発の新増設は、既存原発の再稼働や老朽原発の運転延長とは全く次元の異なる問題である。原発を新増設することになれば、その稼働期間は既存原発の稼働とは比較にならないほど長期化し、高レベル放射性廃棄物も際限なく発生することになる。


高レベル放射性廃棄物は長い期間にわたって強い放射線を出し続けるが、既に膨大な量の廃棄物が発生しており、かつ、それを無害化する現実的な技術はない。これら高レベル放射性廃棄物の処分について何ら見通しもないまま稼働だけを進めようとすることは、現在世代だけでなく、将来の世代の生命、身体及び健康の安全をも深刻に脅かすこととなり、到底許されない。


当連合会は、2022年9月30日付け「高レベル放射性廃棄物の地層処分方針を見直し、将来世代に対し責任を持てる持続可能な社会の実現を求める決議」において、高レベル放射性廃棄物の処分に関し、原発をできる限り速やかに廃止して使用済み核燃料の総量を確定させるべきことを決議し、政府に対し、原発の再稼働及び新増設を行わないこと並びに既存原発をできる限り速やかに廃止することを求めた。


また、上記以外にも2013年10月4日付け「福島第一原子力発電所事故被害の完全救済及び脱原発を求める決議」2015年8月21日付け「原子力事業に対する経済的優遇措置に関する意見書」、2021年6月18日付け「原子力に依存しない2050年脱炭素の実現に向けての意見書」及び2025年3月27日付け「第7次エネルギー基本計画を受けて、政府に対し、改めて脱原発のエネルギー政策を求める会長声明」等を公表し、政府及び電力事業者に対し、従来の原子力に依存するエネルギー政策を改めることを繰り返し求めてきた。


しかしながら、原発の再稼働及び新増設につながりかねない本件調査再開に至ったことは極めて遺憾であり、政府に対し、改めて第7次エネルギー基本計画を見直し、原発の再稼働及び新増設を行わないことを強く求めるものである。



2025年(令和7年)8月21日

日本弁護士連合会
会長 渕上 玲子

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