NEDO 国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構
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NEDOの取り組み・事業紹介
バイオマス燃料開発

2024年9月25日

カーボンニュートラル性を有し、再生可能なエネルギーとして世界で利用が進むバイオマス。多様なバイオマスとエネルギー変換方式を組み合わせた、さまざまな利用技術の開発が進められています。

NEDOでは現在(2024年10月時点)、バイオマス燃料に関わる2つの事業を進めています。

1つは、「バイオジェット燃料生産技術開発事業」です。持続可能な航空燃料(SAF: Sustainable Aviation Fuel)の効率的な製造と供給のための仕組みづくりや、SAFの原料開発などを行う事業です。日本政府は、2030年に国内航空会社が使用する航空燃料の10%をSAFに置き換える目標を示しており、バイオジェット燃料生産技術開発は日本にとって欠かせないミッションとなっています。

もう1つは、「木質バイオマス燃料等の安定性・効率的な供給・利用システム構築支援事業」です。再生可能エネルギーの主力電源化に向けて、バイオマス発電用燃料の1つである木質バイオマス燃料の安定的な調達先の確保や製造・輸送システムの最適化、燃料品質の規格化などを行うものです。

FIT制度などの政策効果により、東日本大震災以降、バイオマス発電の導入件数は着実に伸びています。一方で2022年3月時点のバイオマス導入発電容量は560万kWで、第6次エネルギー基本計画が2030年の目標に掲げる800万kWの70%ほど。さらに卒FIT後、発電事業をいかに継続するかという課題もあります。木質バイオマス燃料の安定性・効率的な供給・利用システム構築も日本にとって喫緊の課題です。

1.「バイオジェット燃料生産技術開発事業」(期間:2017年度〜2024年度)

本事業は、2030年頃までにバイオマス由来の持続可能な航空燃料(SAF)の製造技術を開発し、商用化可能なレベルでの製造プロセスを確立することで、温室効果ガス(GHG :Green House Gas)排出量削減への貢献を目指すものです。SAFの製造技術は、経済産業省の「エネルギー関係技術開発ロードマップ」(2014年8月)でも、「2030年頃の実用化を目標とする技術」として位置づけられています。

SAF利用拡大を進めるうえでの課題の1つはコストです。SAF市場は形成途上にあり、化石燃料と比べて製造にコストがかかります。石油由来のジェット燃料の3〜4倍ともいわれるSAFの製造コストの低減を目指しています。ほかにもSAF製造時に使用する化石燃料の収支改善や、GHG排出量削減効果のさらなる向上なども取り組むべき課題です。本事業では、これらの課題解決に向けて、3つのテーマで取り組んでいます。

1-1.「一貫製造プロセスに関するパイロットスケール試験」(期間:2017年度〜2021年度

微細藻類由来の油を精製する「水素化精製技術」と、BTL(Biomass to Liquid)と呼ばれる固体のバイオマスをガス化した後に液体燃料を合成する「ガス化FT合成技術」を用いて原料からSAFまで一貫製造するプロセスをパイロットプラントスケールで開発する取り組みです。既に実証期間を終えており、2021年6月には木くず由来のSAFと微細藻類由来のSAFを、東京国際空港(羽田空港)を出発する定期便に供給し、フライトを実現しました。

1―2.「実証を通じたサプライチェーンモデルの構築」(期間:2020年度〜2024年度)

将来の実用化を見据えた規模で、原料調達からSAFの製造を経て空港へ供給するまでの実証試験体制を組織し、実証設備を設計・建設し、実証を通じてサプライチェーンモデルを構築することで、具体的な事業化を想定した計画を提示することを目標としています。

1-3.「微細藻類基盤技術開発」(期間:2020年度〜2024年度)

SAF製造の原料としての微細藻類を、安定的に大量培養する技術を開発します。また、微細藻類種の選定や育種の方法の研究、さらには微細藻類の培養・分析の標準条件などを整備し、微細藻類をSAF製造に活用する上での基盤技術の開発も進めています。CO2を吸収して成長する微細藻類の利用は、カーボンリサイクル技術としても位置付けられ、発電所の排ガスを微細藻類の培養液に供給して成長を促進したり、乾燥藻体などの副産物利用として水産物の養殖のエサとしてカスケード利用したりする取組も行っています。国内の微細藻類技術普及を加速するために共通基盤施設を設置し、ナレッジを集約する取組も進めています。

2.「木質バイオマス燃料等の安定性・効率的な供給・利用システム構築支援事業」(期間:2021年度〜2028年度)

本事業では、再生可能エネルギーの主力電源化に向けて、バイオマス発電用燃料の1つである国産の木質バイオマス燃料の安定的な調達先の確保、製造・輸送システムの最適化、燃料品質の規格化などを行います。

木質バイオマスを燃料とするバイオマス発電は、「エネルギー自給率向上に資する非化石エネルギー」「レジリエンス向上に資する分散型エネルギー」「森林整備・林業活性化の役割を担い、地域の経済・雇用にも貢献」など、多様な価値を持つと考えられています。

一方で、燃料を安定的・効率的に供給・利用するシステムは発展途上で、森林・林業と発電事業などが持続可能なかたちで共生できる商慣行が定着していないなどの課題がありました。そこで本事業では3つの研究開発項目を立ち上げ、これらの課題解決に挑んでいます。

2-1.「新たな燃料ポテンシャル(早生樹等)を開拓・利用可能とする"エネルギーの森"実証事業」(期間:2021年度〜2028年度)

燃料製造事業を持続させるために、伐採量に限度がある国内の樹木に代わる新たな燃料ポテンシャル(早生樹など)の開拓と、その利用可能技術の確立を目指します。燃料生産に適した早生樹等の樹種を選定し、そのうえで日本の6つの気候区分(亜寒帯[北部および南部]、温帯東日本[日本海側および太平洋側]、温帯西日本、内陸性気候)それぞれに適した樹種の植林・育林・伐採・搬出方法に関する実証を行っています。最終的には、経済的に自立しながら長期間にわたって運用可能な事業モデルの確立を目指しています。

2-2.「木質バイオマス燃料(チップ、ペレット)の安定的・効率的な製造・輸送等システムの構築に向けた実証事業」(期間:2021年度〜2028年度)

木質バイオマス燃料材の安定供給体制の確立と品質向上を目指します。小規模移動式チップ製造機(チッパー)などの技術開発や、ICT技術を高度利用して安定供給・品質向上、山場から燃料加工工場や発電所までの輸送工程を最適化するなどの技術を開発し、低コスト化などにつなげる実証を行うものです。

また、使用する燃料用途樹種に合わせた、GHG排出量削減や効率化が期待される製造技術(広葉樹向け燃料化設備や乾燥加工システムなど)の開発と実証も進めています。これらを通じて、森林・林業とバイオマス発電事業が持続可能なかたちで共生する事業モデルを提示する計画です。

2-3.「木質バイオマス燃料(チップ、ペレット)の品質規格の策定委託事業」(期間:2021年度〜2028年度)

木質バイオマス燃料(チップ、ペレット)の品質規格の策定と運用方法を検討します。木質バイオマス燃料材は、品質(水分量等)を統一的に評価する仕組みがないために、燃料材生産者の品質への努力が価格に適切に反映されないことが、1つの課題です。そこで燃料材の品質規格の策定とそれらの運用制度などを整備し、品質に基づいた市場取引の活性化や発電効率の向上を図る計画です。

なお、「木質バイオマス燃料等の安定性・効率的な供給・利用システム構築支援事業」は、上記の3つの研究開発項目を通して、2032年度までに以下のアウトカムの実現を目標に掲げています。

  • 燃料材の資源量を11万絶乾トン/年に増加させる。
  • 育林費や労務費、生産費、輸送費等を全体最適化し、燃料材のコストを3割低減する。
  • 水分量を燃料価格に反映するなどの品質規格と、価格が紐付けられた適切な取引慣行が奨励されている社会にする(策定した規格を推奨する業界団体が2団体であること)。

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