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調査シリーズNo.236
企業の賃金決定に係る調査

2024年2月16日

概要

研究の目的

経済が回復に向かう中で、「成長と分配の好循環」の実現に向けて、持続的な賃上げが重要となっている。企業収益が改善しつつある中で、企業が賃上げに踏み込めない背景として、先行きの成長が見込めないことや、世界的に不確実性が増していることなどがあげられており、企業収益の見通し・先行きや、賃金改定に当たって考慮する要素、賃上げへの企業の態度との関係性を調査するため、企業調査を実施した。

なお、本調査は、厚生労働省政策統括官付政策統括室の要請調査である。

研究の方法

企業アンケート調査

調査方法:
郵送による調査票の配布・回収。
調査対象:
全国の従業員数30人以上の企業 10,000社。
*「平成28年経済センサス活動調査」の「産業」「規模」の分布に合わせて、民間信用調査機関の企業データベースから層化無作為抽出した企業に調査票を配布した。
調査期間:
2023年1月31日〜2月20日(調査時点:2022年12月末日現在)
有効回収数:
2,530件(有効回収率:25.3%)

主な事実発見

1.企業を取り巻く市場環境と企業の対応状況

  • 回答企業の労働者の過不足状況では、正社員の過不足状況で、「不足・計」(「不足」「やや不足」の合計)が67.8%、「適正」が27.2%、「過剰・計」(「過剰」「やや過剰」の合計)が5.0%となっている。非正社員の過不足状況では、「適正」が53.0%と半数を占める一方で、「不足・計」(「不足」「やや不足」の合計)が41.3%となり「過剰・計」(「過剰」「やや過剰」の合計)が5.7%となっている。
  • 新型コロナウイルス感染症の感染拡大前(2019年12月以前)と比べた企業収益の状態では、「感染拡大前より悪化し以前の水準に戻っていない」が41.3%と4割を占め、「感染拡大前より悪化したが以前の水準に戻った」が13.2%、「感染拡大前の水準を上回っている」が18.0%などとなっている。
  • 先行きの成長の見込みでは、11年前と比べた現在(2022年12月末調査時点)では、「高まっている・計」(「高まっている」「やや高まっている」の合計)の割合は46.3%、「低くなっている・計」(「やや低くなっている」「低くなっている」の合計)の割合は53.7%となっており、両者は拮抗している。一方、2現在と比べて今後1年間の状況においても、「高まっている・計」は48.7%、「低くなっている・計」の51.3%となっている。
  • 企業を取り巻く不透明感では、11年前と比べた現在では、「高まっている・計」(「高まっている」「やや高まっている」の合計)の割合は64.9%、「低くなっている・計」(「やや低くなっている」「低くなっている」の合計)の割合は35.1%となっている。企業を取り巻く不透明感に対する認識では、「高まっている・計」の割合が「低くなっている・計」の割合を上回っている。2現在と比べて今後1年間の状況でみても、「高まっている・計」は63.0%、「低くなっている・計」の37.0%となっており、この傾向に大きな違いはみられない。
  • 企業を取り巻く不透明感の該当割合(「そう思う」「ややそう思う」の合計)としては、「エネルギー価格・原材料価格の高騰」が90.2%と最も高く、ほとんどの企業が価格の高騰を不透明感と認識している。以下、該当割合は、「人口減少による人手不足」が82.9%、「人口減少による国内市場の縮小」が65.3%、「急激な為替変動(急激な円安など)」が56.5%、「コロナ禍が継続すること」が54.3%、「サプライチェーン・カントリーリスク」が36.4%となっている。
  • 現在の仕入れ等コストについて、11年前と比べての変化では、「上昇・計」(「大幅に上昇」(31.0%)と「上昇」(57.4%)の合計)の割合は、88.4%となっている。一方、2今後1年間の変化では、「上昇・計」(「大幅に上昇」(18.7%)と「上昇」(64.9%)の合計)の割合は、83.6%となっている。
  • 「過去1年間(2022年)、自社の主な商品・サービスにおいて、仕入れ等コスト(原材料費、エネルギーコストの全てを含む)の上昇分を販売価格やサービス料金にどの程度転嫁できているか」については、「仕入れコストが上昇したので将来的には価格転嫁したいが、全く価格転嫁出来ていない」が30.6%と最も高く、次いで、「5割以上8割未満」が17.2%、「2割未満」が15.1%などとなっている。
  • 価格転嫁しづらい理由は、「価格を引き上げると販売量が減少する可能性がある」が33.9%と最も高く、次いで、「販売先・消費者との今後の関係を重視するため、販売先に価格転嫁を申し出ることができない」が26.3%、「販売先と契約を結んでおり、契約期間中は価格転嫁できない」が17.3%、「販売先に価格転嫁を申し出たが、受け入れられなかった」が13.3%などとなっている(図表1)。

    図表1 価格転嫁しづらい理由(MA、単位=%)

    [画像:図表1画像:価格転嫁しづらい理由は、「価格を引き上げると販売量が減少する可能性がある」が33.9%と最も高く、次いで、「販売先・消費者との今後の関係を重視するため、販売先に価格転嫁を申し出ることができない」が26.3%、「販売先と契約を結んでおり、契約期間中は価格転嫁できない」が17.3%、「販売先に価格転嫁を申し出たが、受け入れられなかった」が13.3%などとなっている ]

2.賃上げに係わる状況

  • 2021年、及び2022年の賃上げの実施状況について、2021年では、「定期昇給」が77.0%と最も高く、次いで、「非正規雇用者・パート労働者の昇給」が40.9%、「賞与(一時金)の増額」が29.3%、「ベースアップ」が27.2%、「諸手当の改定」が16.1%、「新卒者の初任給の増額」が14.7%などとなっている。「以上のいずれの賃上げも実施していない」は8.7%である。2022年においても、「定期昇給」(76.0%)、「非正規雇用者・パート労働者の昇給」(49.0%)、「賞与(一時金)の増額」(39.2%)、「ベースアップ」(36.2%)、「諸手当の改定」(23.3%)、「新卒者の初任給の増額」(20.6%)などが続く。「以上のいずれの賃上げも実施していない」は7.1%である。
  • 昨年(2022年)に賃上げを「実施した」とする企業(以下、「賃上げを実施した企業」という)の「賃上げを実施した理由」は、「社員のモチベーションの向上、待遇改善」が67.9%と最も高く、次いで、「最低賃金の引上げに対応するため」が46.7%、「社員の定着・人員不足の解消のため」が41.5%、「業績(収益)の向上」が19.9%、「新卒採用の人材確保のため募集時賃金を上げたいから」が16.9%、「物価上昇への対応」が16.7%、「中途採用の人材確保のため募集時賃金を上げたいから」が16.3%などとなっている(図表2)。

    図表2 賃上げ実施理由(2022年)(MA、単位=%)

    [画像:図表2画像:昨年(2022年)に賃上げを「実施した」とする企業の「賃上げを実施した理由」は、「社員のモチベーションの向上、待遇改善」が67.9%と最も高く、次いで、「最低賃金の引上げに対応するため」が46.7%、「社員の定着・人員不足の解消のため」が41.5%、「業績(収益)の向上」が19.9%、「新卒採用の人材確保のため募集時賃金を上げたいから」が16.9%、「物価上昇への対応」が16.7%、「中途採用の人材確保のため募集時賃金を上げたいから」が16.3%などとなっている]

  • 2022年に賃上げを実施した企業における賃上げを実施したことによる効果としては、各項目の該当割合(「そう思う」「ややそう思う」の合計)を集計したところ、「既存の社員のやる気が高まった」が32.3%と3割の企業があげており、「社員の離職率が低下した」が17.6%、「企業イメージが向上した」が12.0%、「中途採用の募集の応募が増えた」が10.0%、「新卒採用の募集の応募が増えた」が6.1%となっている。
  • 2022年の賃上げ実施について、「以上のいずれの賃上げも実施していない」を選択した企業において、賃上げを実施しない理由を尋ねたところ、「業績(収益)の低迷」が70.0%と最も高く、次いで、「雇用維持を優先」「物価高騰によるコスト上昇(急激な円安傾向、エネルギー価格の上昇等含む)」がいずれも40.6%、「固定費(所定内給与)の増加を避けたい」が28.2%、「将来の不透明感」が26.5%、「価格転嫁できない」が22.4%などとなっている。
  • 昨年(2022年)の賃金改定の決定の際に、最も重視した要素としては、「企業の業績」が37.9%と最も高く、次いで、「労働力の確保・定着」が21.4%、「雇用の維持」が15.3%などとなっている。「重視した要素はない」は7.0%だった。上位3つの重視要素でみると、「労働力の確保・定着」(58.0%)、「企業の業績」(56.9%)、「雇用の維持」(54.8%)が5割台と高く、以下、「世間相場」(23.4%)、「前年の改定実績」(14.5%)、「労使関係の安定」(12.9%)、「物価の動向」(11.1%)などが続く。

政策への貢献

令和5年版 労働経済白書での基礎的データの提供。

本文

全文がスムーズに表示しない場合は下記からご参照をお願いします。

研究の区分

情報収集

研究期間

令和4〜5年度

調査担当者

郡司 正人
労働政策研究・研修機構 リサーチフェロー
奥田 栄二
労働政策研究・研修機構 調査部次長
天野 佳代
労働政策研究・研修機構 調査部主任調査員補佐

データ・アーカイブ

本調査のデータが収録されています(アーカイブNo.176)。

お問合せ先

内容について
研究調整部 研究調整課 お問合せフォーム新しいウィンドウ

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