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主役は子ども、舞台は地域。学びを深める『未来の学校』。
令和7年(2025年)10月15日号
小学校・中学校の校舎建て替えに伴う仮設校舎「青山キャンパス」のキャンパス長を務める平岩国泰さんに、青山キャンパスの特徴や『未来の学校』プロジェクトの展望について伺いました。
未来を生きる子どもを育む未来の学校 青山キャンパス
渋谷区立の小学校・中学校の校舎建て替え期間中に使用する仮設校舎です。
今後、建て替えを予定している小学校・中学校5校が順次使用します。
開校日
9月1日
所在地
神宮前5-53-18
構造
3階建て 鉄骨造
『未来の学校』プロジェクト
区では現在、これから区が目指す学校の将来像を『未来の学校』と銘打ち、学校の建て替えというハード面と探究する学びや教育DXなどのソフト面の両面から、『未来の学校』プロジェクトを進めています。青山キャンパスや『未来の学校』での先進的な学び・取り組みについて詳しくは、渋谷区ポータルの渋谷区『新しい学校づくり』整備方針 〜学校施設の未来像と建て替えロードマップ〜のページの令和7年度『未来の学校』広報を確認してください。
問い合わせ
教育政策課学校施設整備第1係・2係・3係 電話:03-3463-2795 FAX:03-5458-4951
問いを立てる力と主体性を育む、新しい学校づくり
自己紹介をお願いします。
平岩:青山キャンパス長の平岩国泰です。平成29(2017)年から渋谷区教育委員会に携わり、今年度からは青山キャンパス長として、青山キャンパスを利用する小学校・中学校の先生や児童生徒の皆さんをサポートしながら、『未来の学校』プロジェクトに取り組んでいます。
青山キャンパスの概要と『未来の学校』プロジェクトにおける役割について教えてください。
平岩:青山キャンパスは、最も多い場合で小学校1校と中学校2校が同時に利用する仮設校舎です。9月から広尾中学校と松濤中学校が使用していて、8年度の夏休み明けには神南小学校が加わる予定です。今後、建て替え計画に沿って、このキャンパスを利用する学校は入れ替わりますが、小学校・中学校の子どもたちが同じキャンパスに通うというのは非常にユニークな試みで、新たな仲間との出会いやこれまでにない交流が生まれることを期待しています。区は、老朽化が課題となっている区立の小学校・中学校の建て替えを20年かけて行いますが、単なる建て替えにとどまらず、教育の中身も見直して、より豊かで発展的な学びを実現するために『未来の学校』プロジェクトを進めています。青山キャンパスはその先駆けとして、プロジェクトを先導する役割を担っていると考えています。
プロジェクトを推進する背景にはどのような課題があったのでしょうか?
平岩:時代の変化に伴い、社会から求められる力も大きく変わってきています。これまでの学校教育では「問いに答える力」が求められ、その正確性や速さが重視されてきました。しかし、これからの社会で求められるのは「問いを立てる力」であり、子どもたちが自ら問いを立てて探究する学習を段階的に進めていく必要があります。区では、このような背景を踏まえて、6年度から探究「シブヤ未来科」という探究学習の時間を、全国の小学校・中学校に先駆けて全校で導入・拡大しました。まだ、始めたばかりで試行錯誤している部分はありますが、子どもたちは非常に意欲的に取り組んでいますので、今後もこうした主体的な学びをより深めていきたいと思っています。また、これからの時代を生きる子どもたちには、自分の人生を自分で切り開いていく力も求められます。探究学習だけではなく、キャンパスのルールづくりやイベントの企画・運営などでも、子どもたちが主体的に関わる機会が増えていくといいですね。
最先端の学習環境と、放課後を活用した多様な学び
青山キャンパスの特徴について教えてください。
平岩:青山キャンパスは、全体的に開放感があり、明るい雰囲気の造りになっているのが特徴です。具体的には、従来の学校に比べて廊下や教室が広く、机もタブレットと教科書を並べて学習するのに適した新しい規格のものが採用されています。また、テニスコートや陸上のトラック・レーンが整備されたアーバンコートのグラウンド、大・中・小の3棟の体育館を完備しているので、スポーツも伸び伸びと楽しめます。そして、キャンパス内は廊下も含めて全館空調を完備し、バリアフリーやユニバーサルデザインを取り入れた造りになっています。9月から青山キャンパスに通っている生徒たちからも「明るくてきれい」「広くて快適」といった声が多く寄せられています。さらに、「ラーニング・コモンズ」や「未来共創空間」という新しい学習環境も備えています。
「ラーニング・コモンズ」や「未来共創空間」とは、どのような学習環境なのでしょうか?
平岩:「ラーニング・コモンズ」は、明るく楽しい雰囲気の共有スペースです。自由な発想や活発な議論が生まれやすい空間なので、主に探究学習や自由進度学習の時間、放課後などに活用されることを想定していますが、生徒たちによる新たな活用アイデアも楽しみにしているところです。また「未来共創空間」は、高性能のデジタル機器を備え、映像制作をはじめとしたものづくりに没頭できるラボ(研究室)のような空間で、サポートスタッフから支援を受けることもできます。これら2つの共有スペースが、子どもたちの気軽に立ち寄れる場所であることはもちろん、地域の皆さんとの交流や協働もできる場所になることを願っています。
「社会に開かれた教育課程」の実現を目指した学校だそうですね。
平岩:文部科学省が提唱している「社会に開かれた教育課程」は、『未来の学校』プロジェクトにおける重要なキーワードの一つです。ただ、授業や行事は年間計画であらかじめ決まっているため、地域の皆さんが学校に関わる機会をつくりにくいというのが現状です。そこで青山キャンパスでは、放課後の時間を積極的に活用していきたいと考えています。まずは、地域にゆかりのある幅広い世代の皆さんをお招きして、自身の経験や挑戦についてお話しいただく「青キャン・トークライブ」を定期的に開催する予定です。子どもたちには、こうした取り組みを通じて社会とつながり、多くの刺激に触れながら、探究の種を見つけてもらいたいと思っています。またさらに、保護者による有志団体「シブタン(注)」や区内の企業・大学とも連携して、地域の課題解決に一緒に取り組むパートナーづくりも目指しています。
(注)探究「シブヤ未来科」における、学校・地域・企業との連携の推進を目的として、令和6(2024)年に区立小学校・中学校のPTAの有志が設立した一般社団法人。
誰もが安心して集い、学べる、「社会に開かれた学校」へ
複数の学校の子どもたちが同じキャンパスで過ごすにあたって、工夫や配慮をしている点を教えてください。
平岩:同じ区立の中学校でも、学校ごとに特色がありますので、教室は少し離れた場所に配置し、授業や行事は学校単位で進められるようにしています。一方で、休み時間や放課後はグラウンドや共有スペースを自由に使えるため、両校の生徒同士の交流は自然と増えているようです。また、職員室はガラス張りで座席が固定されていないため、非常に話しやすい雰囲気になっています。実際、このキャンパスに来てから、先生同士だけではなく、先生と生徒が立ち話をしている場面をよく見かけるようになりました。小学校・中学校の9年間のつながりを体感できることも、青山キャンパスのメリットの一つだと考えています。
青山キャンパスでは、通学に関する支援もあるそうですね。
平岩:はい。区では、生徒の安全な通学を支援するため、スクールバスの運行や交通費の補助、自転車通学の許可など、各校の通学区域に応じた施策を実施しています。来年度に移転予定の神南小学校の通学支援策についても、現在検討しているところです。
防災面や校舎の地域利用については、どのようにお考えですか?
平岩:区は、青山キャンパスが地域の防災拠点となることを想定して設計しています。ただ、有事の際に全くなじみのないキャンパスに避難するのは不安もあると思いますので、日頃から地域の皆さんが学校を気軽に利用できる機会を増やしていきたいと考えています。改めて考えてみると、学校というのは、スポーツやカルチャーなど、やりたいことに何でも挑戦できる環境なんですよね。授業のない夜間や休日を活用して、地域の皆さんがクラブ活動を楽しむなど、子どもだけではなく、大人にとっても学びの場になることが、『未来の学校』の一つの姿になるのではないでしょうか。
区民の皆さんにメッセージをお願いします。
平岩:青山キャンパスのテーマは「チャレンジ」です。先生や子どもたち、そして地域の皆さんにも、一歩を踏み出してさまざまなことに挑戦してもらいたいと思っています。成功も失敗もあると思いますが、そこで得た知識や経験は、これからの学校づくりや人生にきっと生かすことができるはずです。このプロジェクトは、20年にわたる長期的な取り組みになりますので、応援していただけたらうれしいです。
渋谷区に住む子どもたちにメッセージをお願いします。
平岩:『未来の学校』プロジェクトでは、ワクワクしながら興味のあることを学び、深められる、毎日通うことが楽しみになる学校を目指しています。この青山キャンパスから日本中にそんな学校が広がっていったらすてきですよね。皆さんには、「自分も『未来の学校』づくりの一員なんだ」という気持ちを持って、通ってもらえたらうれしいです。「みんな」が主役になれる学校を、「みんな」でつくっていきましょう!
「渋谷のラジオ」で放送中!
平岩さんへのインタビューは10月21日・28日に「渋谷の星」で放送します。
渋谷のラジオ87.6MHz(外部サイト)