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環境モデルの背景

化学物質の環境リスク評価とは

[画像:リスク評価の概要]

化学物質のリスク評価は曝露評価有害性評価に分けることができます。曝露評価では人や生物がどの程度化学物質に曝されているかを評価し、有害性評価ではどの程度化学物質に曝されると危険かということを評価します。両者の評価から、「危険が起きる可能性」=リスクを評価します(図1)。

実際の評価では、リスク評価の対象となる化学物質および影響対象の選定を行い、曝露評価と有害性評価を実施します。曝露評価において曝露量(=取り込む量や曝される濃度)を決定する際には、実測濃度を用いる方法とモデルによる予測計算の結果を用いる方法があり、どのように曝露量を決めるかが重要になります。有害性評価では、様々な動物実験や疫学調査の結果からどのように危険性が無い量または濃度を決めるかということが重要になります。


曝露評価における環境モデルの位置づけ

[画像:曝露評価の概要]

×ばつ媒体摂取量(または接触量)から決まります。従って、ヒト健康リスクでも生態系リスクでも曝露評価の際には環境中濃度を把握することが第一の課題になります。

化学物質の環境中濃度を推定する際、十分な実測調査が実施されていない場合には、新たに調査を実施することも一つの方法ですが、資源の制約があり多くの化学物質に対しては現実的な解決策ではありません。環境モデルは、そういった場合に化学物質の排出量や物性値、地理条件、気象条件などから環境中の濃度を予測する手法であり、多くの場合コンピュータを用いて計算する手法です。なお、モデルという言葉は研究分野によって様々な意味で使われており、単純な方程式やある種のシナリオ、考え方、統計計算手法の前提条件など多岐にわたります。


環境モデルによる計算の概要

[画像:環境モデルの計算予測]

環境モデルを利用して環境中の化学物質濃度を予測するには、様々な種類の情報が必要になります。環境モデルによって必要な情報の種類・量は異なり、一般的には、より多種類で正確な情報が必要なモデルほど詳細(時間分解能や空間分解能が高いなど)な計算結果を得ることができます。予測計算に必要な情報は、化学物質に関する情報(物理化学的性質、環境中の反応速度、環境中への排出量)や地理的情報、気象情報、モデル特有の計算条件などが挙げられます。


環境モデルにおいて考慮すべき点

環境モデルの予測計算において対象となる化学物質や地域、媒体は様々です。対象となる化学物質と媒体の組み合わせや評価上必要な精度に適合させる形で環境モデルが開発されています。曝露評価のための環境モデルにおいて、考慮すべき点として以下の視点が挙げられます。

  • 媒体 : 大気、水、土壌、底質、時には食品、室内なども
  • 空間分布 : 地理的な広がりまたは偏り、特定地点での特異的な高濃度など
  • 時間分布 : 曝露の持続性または変動、時間特異性(一年のうちの特定の日時・期間、長い年月における特定の年など)

例えば、大気中での挙動のみに関心がある場合には、気象情報やそれに関連した物質移動、大気中での反応などを記述したモデルが必要になります。環境全体で化学物質がどのような場所に残留し、高濃度で存在するかということに関心がある場合は、大気や河川、土壌などの媒体間の移動や同一媒体内での空間的な輸送、各媒体内での反応などを記述したモデルが必要になります。前者のような一つの媒体だけを対象としたモデルに対して、後者のような複数の媒体を対象としたモデルを多媒体モデルといいます。

また、化学物質の環境中濃度を決定する主要な因子である化学物質の排出量に関しては、以下の視点が挙げられます。

  • 産業あるいは副生成物などの製造・発生過程の特性

  • 農薬あるいは家庭用品のような使用形態の特性

  • それらの空間的、時間的な特徴

対象となる化学物質や、予測結果の利用目的などに応じて、決定因子や精確に入手すべき情報、また適切な環境モデルが決まっていきます。



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