「プレゼン教育」は小6から始めるべき!?

「タブレット1人1台」立命館小学校のICT教育・最前線(前編)

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立命館小学校での「プレゼン授業」の様子

「立命館小学校の子どもたちにプレゼンを教えてください」――ふだんはビジネスパーソン向けのプレゼン研修で日本全国を飛び回っている『プレゼンは「目線」で決まる』著者・西脇資哲氏だが、昨年にこんな依頼があったという。立命館小学校は、西脇氏が所属する日本マイクロソフトと提携し、ICT教育に力を入れたことで注目を集めている。
小学生にプレゼンテーションを教えたことでどんな発見があったのか? 同校・副校長の花上徳明氏との対談をお送りする。(撮影/塩谷淳)

子どものほうがプレゼンの上達が早い

――日本マイクロソフトと立命館小学校の提携が始まったのが2013年11月でした。私も当時、ニュースで拝見したのを記憶しています。「4・5年生全員にSurfaceを1台ずつ持たせる」という日本初の取り組みが話題になりましたね。

花上徳明(以下、花上) 立命館小学校は当時から、グローバル教育とICT教育にはかなり力を入れています。
たとえば、小学1年生から英語の授業はオールイングリッシュです。
また、立命館アジア太平洋大学の留学生約40人が、1週間にわたって子どもたちと触れ合う「ワールドウィーク」という取り組みなどもやっています。

花上徳明(はなうえ・のりあき) 1964年生まれ。東京都出身。国語科教員。大学卒業後、埼玉、千葉の私立中高に勤務。1996年から立命館慶祥中学・高等学校教員、立命館の一貫教育部勤務を経て、2011年より立命館小学校副校長。

ICTではご存知のとおり、日本マイクロソフトさんと提携しています。本校は日本で6校のShowcase Schoolにも指定していただきました。タブレットPCを活用した指導としては、Officeソフトの操作はもちろんですが、5年生からはScratch(スクラッチ:子ども向けプログラミング言語)を使ったプログラミング教育もやっています。

西脇資哲(以下、西脇) そういう流れの中で「6年生向けプレゼンテーション講座」の講師を私が担当することになりました。昨年、半年間にわたって週1回の授業を担当しました。

花上 ご著書(『プレゼンは「目線」で決まる』)の中でも、うちの生徒とのやりとりのエピソードを書いてくださっていましたね。あれはうれしかったです。

西脇 いやー、本当に貴重な経験でした。子どもはとても素直なので、授業をしていてもすぐリアクションがある。これが大人に教えているときとの決定的な違いでしたね。
中学生とか高校生になると、どうしても異性を意識するので、プレゼンをやらせてみても「照れ」があるんですよ。
でも小学生はシャイさがないし、とても素直なので、めちゃくちゃ上達が早い。

「子ども目線」でスライド資料を構築し直す

――小学生のみなさん向けの授業ということで、やはり通常の企業研修の内容をそのままというわけにはいかなかったと思いますが、資料や教材はどうされたんですか?

西脇 スライドについて言えば、やはり「聞き手の目線」でプレゼンを構築し直しました。そうなると、まず直さないといけないのが漢字です。子どもが読めない漢字がけっこう入っているので、とにかく徹底的にルビを入れたんですよ。そうしたら先生方からは、意外にも「そこまでしなくてもいい」とおっしゃっていただいたりして......。

花上 読めない漢字があっても、生徒たちが自分で調べたほうが学習効果が高いですからね。ただ、全体的に言葉をやわらかくしていただいていたので、非常にわかりやすい資料になっていたのが印象的でした。子どもが見たくなるようなイラストなんかも入っていて、あのテキストはかなりの力作でしたよ。

西脇 それもまさに「目線」ですね。子どもたちは大人と違って、文字情報だけのスライドだと飽きてしまう可能性があると思ったんです。

もう1つ大変だったのは時間ですね。小学校の授業って45分なので、通常の企業研修のペースでやっていたら時間が足りない。しかも、ビジネスパーソンと違って、「ちょっと延長」というわけにもいきませんからね。この時間調整もけっこう大変でした。

(左)西脇資哲氏、(右)花上徳明氏

生徒全員にSurface1台
「内職」する生徒は出ないのか?

――生徒たちはみんな1台ずつSurfaceを机に置いて授業を聞いているんですよね。そこに西脇さんのつくった教材が映されているわけですか?

花上 教材は生徒たちのタブレットには入れていません。そうしないと、生徒がうつむきながら授業を聞くことになってしまいますから。他の授業もそうですが、全面的に電子化するのではなく、紙の教材やノートと併用しながら授業をしています。

西脇 それに「視線誘導」を考えると、みんながちゃんと顔を上げている状態のほうが、プレゼンの効果が高まるんですよね。

――手元のデバイスで「内職」してしまう生徒さんがいたりはしないのでしょうか?

花上 ほとんどなかったですね。むしろ、いい意味での「内職」ならどんどんやってもらいたいくらいです。たとえば、「パワーポイントのここに画像を入れてみましょう」と指示されても、自分なりに工夫しながら「教えられた以上のこと」をどんどんやっている生徒はいます。デバイスに慣れながら興味を伸ばしていってくれるのであれば、「内職」というのではなく、自発的な学習になっているのではないでしょうか。

西脇 大人が会議中に「内職」するのとは違いますよね。まったく関係のないメールの返信をしていたりする人もいますから。

(後編に続く)


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