【世界一の美食家が明かす】料理もサービスも一流なのに、台無し...残念なレストランの特徴
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美食=高級とは限らない。料理の背後にある歴史や文化、シェフのクリエイティビティを理解することで、食事はより美味しくなる! コスパや評判にとらわれることなく、料理といかに向き合うべきか? 本能的な「うまい」だけでいいのか? 人生をより豊かにする知的体験=美食と再定義する前代未聞の書籍『美食の教養』が刊行される。イェール大を経て、世界127カ国・地域を食べ歩く美食家の著者の思考と哲学が、食べ手、作り手の価値観を一新させる1冊だ。本稿では、同書の一部を特別に掲載する。
うるさくて話せない、雰囲気がミスマッチ...
五感で感じる食体験を重視するなら、聴覚への気配りは重要です。特にBGM(バックグラウンドミュージック)は、食体験をより豊かにすることがあります。しかし、日本のレストランでは、BGMに気を配っていないお店が非常に多いのが現実です。
実際、音楽を意識的にセレクトしているお店はごく一部で、おそらく1割もないかもしれません。料理だけにフォーカスしたレストランならともかく、内装などにもこだわっているのに音楽には無頓着なことも多いように思います。
レストランの音楽はここまで進化している!
音楽を料理と調和させている事例はたくさんあります。世界的DJのFPM田中知之さんは、国内のお店のみならず、スペインの「チスパ(Txispa)」、フランス「ブラン(Blanc)」などの音楽をプロデュースしています。
また、和食では珍しいのですが、神楽坂の「波濤(はとう)」という鮨屋では、バックグラウンドに波の音が流れています。本当に小さい音なので、楽しく会話していると聞こえない可能性すらあるんですが、一緒に食べに行った音楽プロデューサーの蔦谷好位置(つたやこういち)さんはさすがプロ、聞き逃しませんでした。
そして、異色な存在としては、カウンターの手元にコントローラーがあって、料理に合わせてご主人がDJのように曲を切り替える、京都の割烹「研野(けんや)」。懐メロからクラシックまで選曲は幅広く、締めのご飯の蓋を開けるタイミングにエルガー「威風堂々」の一番盛り上がるパートを合わせるなど、サービス精神旺盛です。
海外だと、印象に残っているのがイタリアのトリノにある「アンフォゲタブル(Unforgettable)」。最初はミニマルなテクノで始まり、集中を促すのですが、食べ終わる頃には高揚感と開放感のあるビッグルームに変化します。
また、イノベーティブレストランの一部は音楽だけでなく映像やさまざまな演出を取り入れた総合芸術に進化していて、劇場型レストランと呼ばれることもあります。その嚆矢は上海「ウルトラバイオレット(Ultraviolet)」ですが、コペンハーゲン「アルケミスト(Alchemist)」など、さまざまな意欲的な試みが登場しています。
そもそも料理人が音楽が大好き、というパターンも多い。スペインのアンダルシア地方にある「トーカ(Tohqa)」では、シェフ自ら料理をしながらレコードを選択し、楽しませてくれます。また、アントワープ「ジェーン(The Jane)」のシェフのニック・ブリルはDJとしても有名で、トゥモローランドという世界最大級のダンスミュージックのフェスに出演したりしています。
どんな食体験を目指す店か?
BGMをなしにする、というのも、ひとつの選択肢ですし、料理の方向性によってはそれがベストかもしれない。
だから、ないならないでいいと思うのですが、個人的には百貨店やスーパーで流れるようなどうでもいい音楽だったり、ヒット曲や映画音楽を和楽器で演奏したようなものを流すのは、音楽にこだわっていないと宣言しているようなものなので、残念に思います。
わからないなら、プロに任せるか、何も流さない。もしくは、無難なジャズかクラシックでもかけるほうが、まだ食体験を損なわないと思います。
(本稿は書籍『美食の教養 世界一の美食家が知っていること』より一部を抜粋・編集したものです)
1974年兵庫県宝塚市生まれ。米国・イェール大学卒業(政治学専攻)。大学在学中、学生寮のまずい食事から逃れるため、ニューヨークを中心に食べ歩きを開始。卒業後、本格的に美食を追求するためフランス・パリに留学。南極から北朝鮮まで、世界約127カ国・地域を踏破。一年の5ヵ月を海外、3ヵ月を東京、4ヵ月を地方で食べ歩く。2017年度「世界のベストレストラン50」全50軒を踏破。「OAD世界のトップレストラン(OAD Top Restaurants)」のレビュアーランキングでは2018年度から6年連続第1位にランクイン。国内のみならず、世界のさまざまなジャンルのトップシェフと交流を持ち、インターネットや雑誌など国内外のメディアで食や旅に関する情報を発信中。株式会社アクセス・オール・エリアの代表としては、エンターテインメントや食の領域で数社のアドバイザーを務めつつ、食関連スタートアップへの出資も行っている。
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本書『美食の教養』目次より
■しかくはじめに なぜ、「美食」か
「美食=高い」とは限らない
おいしいだけの料理の先にあるものは?
食の教養は、人生を豊かにしてくれる ...
■しかく第1章 人生を豊かにする 美食の思考法
GDPと食の豊かさは比例しない
芸術家 vs. 職人
自分の好みで判断しない
鮨から学ぶ美食の見方
『関ジャム』的に食べる ...
■しかく第2章 美味しさに出会う 美食入門
[心得]安いジャンルのトップに行ってみる
[店選び]「食べログ」をどう使うか?
[食べ方]食べ歩きのプランニングガイド
[評価軸]料理を味わうのは、皿の上だけではない ...
■しかく第3章 食から国の素顔が見えてくる 世界の料理総まとめ
ガストロノミーの基盤となるフランス料理
「まずい国」の汚名返上するイギリス
ニュー・ノルディックで激変した北欧
なzぇ、アメリカで美食は厳しいのか? ...
■しかく第4章 美食家なら知っておきたい グルメ新常識
だまされないための白トリュフの教養
海外で大人気のWAGYUと迫りくる危機
日本人が知らないピッツァの進化 ...
■しかく5章 美食を生み出す 一流料理人の仕事
一流レストランと料理人に共通すること
料理人が絶大な信頼を置く魚介とは?
僕が尊敬するシェフたち(10人) ...
■しかく第6章 私たちは何をどう食べるのか 美食の未来予測
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