組織でも不可欠な「個人として生きる能力」
鍛えるには異文化に触れ「常識」を疑おう
ゲスト:坂之上洋子さん(ブランド経営戦略ストラテジスト)[後編]
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『なぜゴッホは貧乏で、ピカソは金持ちだったのか?』著者の山口揚平さんとブランド経営戦略ストラテジストの坂之上洋子さんとの対談の後編です。前編に引き続き、お金と愛のバランスについての話題から語り合います。
愛の軸が強い人は愛だけ、お金の軸が強い人はお金しか叫ばない
山口揚平(以下、山口) たとえば、コンビニで買ってきたペットボトルのお茶と、誰かが心を込めて淹れてくれたお茶は、持っている文脈がそれぞれ違うはずです。ペットボトルは文脈のない「物質」であり、誰かが淹れてくれたお茶は文脈がある「生命的」なものです。しかし、両方とも100円という数字で表してしまうと、文脈は消え去って匿名化し、100円という数字で完全に客観化された存在になります。
この「客観化」という側面がお金の便利なところですが、文脈のない「物質」は活用しやすい"メディア(コミュニケーション・ツール)"であっても、先進国はすでに、そうした「モノ」であふれ返っています。一方で、目に見えず感じるしかない「生命的」なものは愛の軸に近く、そういうものをつなげたり、交換するメディアがないんですね。だからこそ、僕は文脈を遮断せず匿名化もしないで互いに価値を交換し得る「非貨幣経済」を進めるしかないと思っています。現代はお金が増えすぎているので、なおさら頭で考える軸に寄ってしまうんでしょうね。
坂之上洋子(以下、坂之上) お話を聞いていて頭に浮かんだのは『サバイビング・プログレス―進歩の罠』というドキュメンタリー映画です。山口さんはご覧になりましたか。
山口 いえ、知らないです。
坂之上 じゃあ、絶対に見てください。山口さんに刺さる話だと思います。映画では、南米アマゾンの土地をニューヨークの投資家が買い取り、開発してマネーに換えてしまおうとします。開発を進めれば環境が破壊される一方、環境を重視してそのプロジェクトを止めたら、現場で働く人の雇用が失われてしまうというジレンマに満ちたような例もあって......。