「セブン、まず取締役会のDXが必要だったかもね」【IT業界インサイダー座談会・番外編】

SIer、コンサル、ITベンダー......。日常的にDX案件にも関わるIT業界のインサイダーたちは、本特集をどう読んだのか。特集『セブンDX敗戦』(全15回)の#13では、2021年10月の特集『不要?生き残る? ITベンダー&人材 大淘汰』で大好評を博した「IT業界インサイダー座談会」のメンバーが、緊急再集結。本特集を読み解きつつ、日本のDXについてもぶっちゃけモードで語る。(聞き手/ダイヤモンド編集部 鈴木洋子)

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「セブン、うまくいかないことは
最初から織り込み済みだったのかもね」

――セブン&アイ・ホールディングスのDX(デジタルトランスフォーメーション)が暗礁に乗り上げています。外部のITベンダーやコンサルを巻き込んだ経営のゴタゴタに、苛烈な追い落とし......。編集部は大量の内部資料から、その大混乱を解き明かしました。一連の記事を読んだご感想をお願いします。

ケビン松永(ケビン) DXを契機とした社内政治の話でしたね。DXは業務の大変革だから、通常のシステム導入よりも抵抗勢力が多方面にわたる。巨大グループ企業のホールディングス(HD)配下にDX推進本部をつくるのは、よくあるパターンではあります。セブンの場合、さらに創業家という難しいステークホルダーがいるから、方針集約は難儀しそう。

Henry DXって経営戦略や事業戦略へインパクトを与えるものなのに、それを情シス(情報システム部)とかの現場に求めて失敗する......っていうのがいつものパターン。今回はそれをHDがトップダウンで進めるという心意気自体は高く評価できるんだけど、なんで失敗しちゃったのかな。

むぎSE 記事を読む限り、あえてトップダウンで決めて、中の派閥とかお付き合いがある既存ベンダーさんを外した感がありますよね。

shin 既存システムとつながらないシステムではないんだから、事業部や既存ベンダーとは仲良くしないと。

むぎSE あるあるなんですけど、外部からITプロジェクトに人を集めると結局業務のことが分からないから、情シスの人と、事業会社の中でも特に強いキーマンを連れてこないと話が進まないんです。でも、あの記事からは、どうもそういう感じがしないのですよね。

shin HDのDX推進のメンバーが「偉そう」だった可能性はあるよね。親会社の事業を子会社に分けた途端に「子会社さんでしょ」って親会社が偉そうになりぎくしゃくしてうまくいかなくなったって話は聞く。

よんてんごP(4.5P) 業務改革って上の顔色と下の顔色をうかがわなきゃならないんですよ。お気持ちに寄り添うDXが必要なんですよ!

Henry そんなの無理じゃん!!

――今回実質更迭された米谷修執行役員は「リクナビ」のシステムの開発リーダーで、その後リクルートグループの技術を担う旧リクルートテクノロジーズのCTO(最高技術責任者)をしていました。『自走するIT組織 リクルートのエンジニアはこう動く』という著書もありますね。

shin 米谷さんって、セブンペイの不祥事の後の人事で本部長に就任した人ですよね。「旧来のシステムを変える」と一時的にすごい権限与えられてハードにやり過ぎて、現場から敵扱いされるわ、恨みを買うわで、みんなが協力しない、とかになったのかも。

ケビン 既存システムの情報やノウハウは各事業会社にたまってて、DX推進本部にはない。DX推進本部は各事業会社の協力を引き出さないといけない立場なのに、逆に各社と対立構造になっちゃうとDX推進本部でも身動き取れなくなっちゃう。既存の各ベンダーは一掃される側だから、協力するインセンティブは1ミリもないし。

――新しく受注した日鉄ソリューションズ(NSSOL)がすぐに降りた、ということですよね。どうしてこんなことになったんでしょうか?そして、セブンのDXはどこに問題があったんでしょうか。ベンダーやコンサルにも悪いところがあったのでしょうか。業界内部からの見方を教えてください。

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