30年、続けられますか?
「仕事のプロ」は、量稽古して勘所を掴む

新規事業立ち上げプロフェッショナル 守屋 実
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失敗せずに、最短でうまくいく方法が知りたい

そういった経験を踏まえての今なので、「量稽古をすることで勘所を掴む」、という部分には、一定のこだわりを持っています。

なので、講演などで、20代ぐらいの方から、「どうしたら、守屋さんのようになれますか?」という質問があったときには、「私は、社会人を30年近くやってきました。なので、下積み生活を30年近く続けたら、間違いなくなれると思いますよ」とわざと答えたりすることがあります。

実際には、あっという間に30年が経ち、自分としては「下積み」という感覚はありません。「好き」だから30年も続いたのです。

もっと言えば、正直なところ、「下積みをすればモノになる」とも思っていません。複利の効果は素晴らしく、日々の進捗の積み重ねがあれば、その下積みは大きな価値を生みますが、漫然と過ごす時間の積み上げでは、下積みから抜け出せない人になってしまうだけだと思うからです。

一方、以前、寿司学校に3ヵ月通っただけの寿司職人がミシュランに載ったことが話題になりましたが、この例からも分かるように、下積みをしなくても頭角を現す人もいます。今は、物事の流れが、私が社会人になりたての頃よりはるかに速くなっていますから、単に苦節ウン十年という演歌歌手のような下積み生活を強いる考え方では、単に時代に取り残されるだけかもしれません。

ではなぜ、あえて「下積み」という言葉を使うのか?

その理由は、「手っ取り早く安全確実に新規事業のプロになりたい」というニュアンスを言外に感じてしまうことがあまりにも多いからです。

失敗せずに、かつ、最短でうまくいく方法が知りたい。

その気持ちは分からなくはないですが、都合良く最善、最高の結果を求めても、うまくいくわけがありません。それは、いくらなんでも虫が良すぎるだろうと思います。

「仕事のプロ」になるための、手っ取り早い方法は、むしろ量稽古だったりするのです。

たとえば、野球がしたくて野球部に入っても、はじめは毎日の筋力強化などのトレーニングを行い、バットすら握らせてもらえず、ようやく素振りの練習ができると思ったら、来る日も来る日もトレーニングと素振りだけ。やがて、やっと練習試合で打席に立てたが空振り三振ばかり。

でも、その後も筋トレを続け、走って持久力をつけ、素振りをしてと、練習を繰り返すことで、少しずつピッチャーの投げる球を見極められるようになり、打てるようになり......という「基礎の積み上げの先の実り」という世界は、一定程度、世の中には存在します。

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