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〈事例・ヤマハ発動機〉予算策定プロセスを変革し、トップの意思を反映する予算づくりを推進

2024年08月28日

トップダウンとボトムアップの中間を目指す

ヤマハ発動機における従来の予算づくりは、日本企業の多くが行っている「積み上げ型」だった。各部門が来期予算案を経営に上げ、経営は「この数字はもっと伸ばせるのではないか」といった要求やコメントをつけて現場に戻す。こうしたやり取りを繰り返して予算をつくり上げるため、多くの時間を費やすことになる。9月に始まった予算編成が翌年1月になってようやく決まることもあったという。同社の新年度は1月スタートである。

「新たな予算プロセスで目指したのは、トップダウンとボトムアップの中間、ややトップダウン寄りのやり方です」と野田氏。KPIコミットメント型は、こうした要望にフィットしやすいと小林氏は指摘し、こう続ける。「ボトムアップが多い日本の製造業のやり方を、いっきにトップダウンに変えることは、海外を含む組織体制、事業軸と地域軸の関係、ケイパビリティ、各種権限などの制約から、実現成果と難易度、そしてスピードをバランスさせることが難しいと考えています。KPIコミットメント型は、合理化一辺倒ではなく、ヤマハ発動機らしさと合理化を融合させたDXを目指すヤマハ発動機の方向と親和性が高いと考えました」

関係者の納得度と実現可能性を考慮することは、相互会話を重んじる他の日系企業にも有効といえるだろう。

PwCコンサルティング
執行役員 パートナー
ビジネストランスフォーメーションコンサルティング事業部
小林たくみ氏

KPIコミットメント型の導入は、従来の予算策定の考え方を根本的に変えることを意味する。本社の期待と現場の予想をすり合わせるのに時間をかけるのではなく、まず経営トップと各事業本部長が、経営・事業シナリオを持ち寄って議論し、シミュレーションしながらそのシナリオをベースに予算目標(売上げ、利益など)について事前に合意形成する。これを受けて、各事業本部長は合意した目標の達成に向け、各拠点責任者との間で合意を図る(図表2)。

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図表2 KPIコミットメント型予算編成の概要

「合意ができれば、事業本部長がそれをビジネスとして展開していきます。新年度が始まれば一定の誤差が出てきますが、どのように対処するかは事業本部長に委ねます。これが、従来の考え方との根本的な違いです」と野田氏。本社と現場が何度もやり取りする従来型に比べると、KPIコミットメント型の予算プロセスは大幅にシンプルになる。そのためには、すべての事業本部の意識変革も求められた。

「事業本部長は合意した予算に責任を負います。ある意味では、退路を断つことにもなります」と小林氏。新たな予算プロセスについて説明すると、各事業からは戸惑いの声が上がったという。それは、「生産数が決まらなければ、シミュレーションの精度が上がらない」「事業部で生産・調達組織などの数字を調整するのは難しいので、財務部が初期値を提示してほしい」「指揮・命令系統が異なるので、開発費については事業本部で作成が難しい」といった意見に代表される。小林氏はこう続ける。

「従来の積み上げ型を前提とすれば、各事業には精緻な予算積み上げが求められるため、こうした声が上がるのは自然であり、妥当なことです。しかし、各事業が意思表示し、主体的に事業シナリオをつくり、経営層と予算目標に合意する仕組みに変革する以上、このような声には妥当性がなくなってしまうため、これまでの考え方を大きく変える意識変革の必要があります。これが、このプロジェクトを『業務・システムの刷新』ではなく、『ものの考え方を刷新』する取り組みだと表現する証左です。当初、各事業では大きな変化に不安も感じたことでしょう。だからこそ、経営トップの後押しを得ることが不可欠で、そのためには、『ありたき姿』を構想の段階で経営層と合意形成する、という『構想』の重要性が極めて高かったと考えています。また、プロジェクトと現場とのコミュニケーションには力を注ぎました」

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