○しろまる 概要
1.概要
赤血球造血のみが障害される先天性の造血不全症である。骨髄は赤血球系細胞のみが著減し、末梢血では網赤血球が減少し、大球性正色素性貧血を呈する。ほとんどが乳児期に発症し、約半数に種々の奇形や発育障害がみられる。悪性腫瘍の合併もみられる。
2.原因
リボソームの機能障害が、貧血を引き起こす中心的なメカニズムであると考えられている。GATA1転写因子の遺伝子変異以外は、これまで見つかっているダイアモンド・ブラックファン貧血の原因となる遺伝子変異は全てリボソームタンパク遺伝子の変異である。本邦では約半数にリボソームタンパク遺伝子の変異が同定されている。
3.症状
新生児期から顔色不良で発見されることが多く、1歳までに90%が発症する。貧血の症状としては、息切れ、動悸、めまい、易疲労感、頭痛がある。約50%は種々の奇形や低身長を合併する。
4.治療法
輸血とステロイド療法が基本である。治療抵抗例では、同種骨髄移植の適応がある。
5.予後
生命予後は一般的に良好であるが、ステロイド療法及び輸血依存症例が約40%ずつ存在しており、その副作用及び合併症のために、長期にわたり悩まされ、本疾病患者の生活の質は高いと言えない。また、ファンコニ貧血より頻度は低いが、悪性疾患を合併しやすい。
○しろまる 要件の判定に必要な事項
1. 患者数(令和元年度医療受給者証保持者数)
100人未満
2. 発病の機構
不明(原因遺伝子の同定にいたらない症例が存在する。)
3. 効果的な治療方法
未確立(ステロイド不応性あるいは依存性症例に対する薬物療法は未確立)
4. 長期の療養
必要
5. 診断基準
あり(研究班作成の診断基準あり。)
6. 重症度分類
Stage 2以上を対象とする。
○しろまる 情報提供元
「先天性骨髄不全症の登録システムの構築と診断基準・重症度分類・診断ガイドラインの確立に関する研究班」
研究代表者 弘前大学大学院医学研究科 特任教授 伊藤悦朗
<診断基準>
Definite、Probableを対象とする。
遺伝性貧血の病態解明と診断法の確立に関する研究班作成の診断基準
A.診断基準
1. 1歳未満発症である。
2. 大球性貧血(あるいは正球性貧血)で他の2系統の血球減少を認めない。
3. 網状赤血球減少を認める。
4. 赤芽球前駆細胞の消失を伴う正形成骨髄所見を有する。
5. 古典的ダイアモンド・ブラックファン貧血に見られた遺伝子変異(D)を有する。
B.診断を支持する基準
大支持基準
1. 家族歴を有する。
小支持基準
1. 赤血球アデノシンデアミナーゼ活性(eADA)又は還元型グルタチオン(eGSH)の高値(注1)。
2. 古典的ダイアモンド・ブラックファン貧血にみられる先天奇形を有する(表1)。
3. HbFの上昇。
4. 他の遺伝性骨髄不全症候群の証拠がない。
C.鑑別診断
以下の疾患を鑑別する。
Transient erythroblastopenia of childhood(TEC)、先天性角化不全症、シュワッハマン・ダイアモンド症候群、 先天性無巨核球性血小板減少症、ピアソン症候群
D.遺伝学的検査
遺伝子の変異
RPS7、RPS10、RPS15、RPS15A、RPS17、RPS19、RPS24、RPS26、RPS27、RPS27A、RPS28、RPS29、RPL5、RPL9、RPL11、RPL15、RPL18、RPL26、RPL27、RPL29、RPL31、RPL35、RPL35A、TSR2、GATA1、EPO
<診断のカテゴリー>
Definite:Aの5項目のうち4項目以上を満たす。
Probable:1から3のいずれかを満たす。
1 Aのうち3項目+Bのうち1つの大あるいは2つの小支持基準。
2 Aのうち2項目+Bのうち3つの小支持基準。
3 Aのうち項目5(遺伝子変異)+大支持基準(家族歴)
注1)eADAとeGSHを同時測定し、SVM法による判別式により判定する。
【SVM法による判別式】
SVM法は代表的な判別方法の一つである。eADA(IU/gHb)とGSH(mg/dL RBC)の2つの変数により、DBA症例と非罹患者を以下の判別式で計算し、1.2448∗eADA + 0.0893∗GSH−10.3505>0の場合、DBA型と判定する。
出典(Utsugisawa et al.,Blood Cells, Molecules and Diseases 59;31-36,2016)
【検体の提出方法】
全血2mLをヘパリン管で採取し、4°Cで測定施設(東京女子医科大学医学部輸血・細胞プロセシング科特殊検査室)まで宅配便で送付する。同時採血の正常対照を同梱し、保管・輸送による測定値への影響を検討可能とする。なお、検査はメール(info@anemia-support.org)での予約が必要である。
表1.ダイアモンド・ブラックファン(Diamond-Blackfan)貧血にみられる合併奇形
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研究班名 | 遺伝性骨髄不全症の診断基準・重症度分類・診断ガイドラインの確立に関する研究班 研究班名簿 |
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情報更新日 | 令和6年4月(名簿更新:令和7年6月) |