クレジット
このいやらしい色合い、たまんないねェ。
概論
"ユムシ軍艦"はユムシの切り身をネタにした軍艦巻きサ。ユムシって何かって? はッ、無知な童貞のために、姐さんが特別に教えてやるよ。耳の穴かっぽじってよーくお聞き。
えーと、Wikipediaによるとユムシ(学名:Urechis unicinctus)は環形動物門ユムシ動物ユムシ綱ユムシ目ユムシ科の海産無脊椎動物......いや、ユムシの仲間のユムシってあんた、全然分類できてないじゃないサ。要するに、親戚筋の生き物があまりいないってことかね。漢字で書くと螠虫、北海道ではルッツ、九州ではイイマラ、英語ではPenis fishとも呼ぶらしいね。
......。
............。
ん〜? どうしたのサ、鳩が豆鉄砲食らったようなツラして。聞こえなかったのかい? 英語ではPenis fishって呼ぶらしいよ、コイツのこと。九州の呼び方のイイマラも......まあ、アレの隠語だよねェ。
前端に吻ふんをもち、その吻の付け根に口がある。付属肢も疣足もないが、わずかに剛毛がある。干潟などの浅い海域の砂地に棲息し、縦穴を掘ってその中に生息し、干潮時には巣穴に隠れる......まあ、くどくど説明するより、現ブツを見せた方が早いかね。た・だ・し! うねうね、ぐにゃぐにゃ、にゅるにゅる、この内どれか一つでも拒絶反応が出る軟弱野郎は、絶対に以下の折り畳みを開くんじゃないよ! 無視して開いて後悔しても、アタシは知らないからね!
アタシは割と可愛いと思うけどねェ? 動いてるところが見たいなら、この動画がオススメかね(しつこいようだけど、閲覧注意!)。海が時化しけると大量に打ち上がって、浜を埋め尽くすこともあるらしいね。うん......さすがに、その光景はあんまり見たくないかな。
一般的には魚釣りの餌として知られてるけど、食べることもできるね。まあ、寿司のネタになるんだから、当たり前だけどサ。韓国ではケブルって呼ばれて、刺身、串焼き、ホイル焼きで食べるし、日本でも北海道の一部で酢味噌和えや干物で食べられる......ちょいと、吐くなら厠かわやに行っておくれ! 情けない、闇のスシブレーダーが食の多様性を否定してどうすんのサ。味は甘味があって、コリコリした食感で、ミル貝に似てるかもね。こう聞くと、食べてみたくなってこないかい?
スシブレード運用
攻撃力
防御力
機動力
持久力
重量
操作性
基本性能はイクラ軍艦に近いかね。海苔のりのシールドでシャリへの攻撃を防ぎつつ、ネタを撒き散らして相手の回転を妨害するのが基本戦略。ただし、きれいな球形のイクラに比べて、ユムシの切り身が不規則な形をしている分、ちょいと操作は難しい。なかなか狙った場所に飛んでくれないんだよね。
けど、慣れれば利点の方が上回ってくる。コリコリした身はイクラよりはるかに頑丈で高い妨害力が期待できるし、不規則な形状は相手にとっても弾道が読みづらい。ユムシというあまり知られていないネタを使うことで、相手に未知に対するプレッシャーを与えることもできる。見破られたとしても、それはそれで動揺を誘うに違いないよ。何せPenis fishだし。
と、まあ、色々語ったけど、こんなものは表向きの性能に過ぎないよ。そう、ユムシ軍艦の真価は、ある種の野郎を相手にした時に発揮されるのサ、ふふふ......。
他の活用法
それを理解してもらうためにも、ユムシの下拵ごしらえについて説明しようかね。手間は掛かるけど、読めば理由は納得してもらえるはずサ。
1. 新鮮なユムシを用意する。
2. 白装束に着替える。
3. 顔に白粉を塗る。
4. 一本歯の下駄(あるいは高下駄)を履く。
5. 胸に鏡を吊るす。
6. 五徳を逆さにしてロウソクを立て、頭に被る。
7. 以上の服装をした上で、丑三つ時に神社に参拝し、仮調理場を設置する。
8. 生板に置いたユムシに向かって、憎々々々々々しい男のモノを思い浮かべながら、包丁を振り下ろす、振り下ろす、ひたすら振り下ろす! ええいッ、この恨み晴らさで置くべきか! ダンッ、ダンッ、ダンッ! あの浮気野郎、なぁぁぁにが「お前だけを愛してる」だッ! ザクッ、ザクッ、ザクッ! ×ばつが! ズバッ、ズバッ、ズバッ!
9. キィィィィィィィィーーーッッッ!!!
10. ユムシの鮮度が落ちないよう、素早く握る。
※(注記) 工程を他人に目撃されると、下拵えの効果が無効化されてしまうので注意。
以上は伝統的な丑の刻参りをベースにしてる。いわゆる呪いの藁人形だね。この下拵えによって、ユムシの切り身には女の呪念がたあぁぁっぷり染み込む訳サ。ユムシを使う理由がこれで分かっただろ? 男のアレに見立てるのに最適だからサ。何せPenis fishだし。
エピソード
この下拵えがどう役に勃つか、実戦記録を交えて教えてやるよ。完成したユムシ軍艦のテストのために、とりあえず四包丁のナントカとか言う奴の店に殴り込んだ。なんか一番弟子とか板前長とか名乗る連中が出てきたけど、雑魚過ぎてテストにもならなかったので省略。
板前長: グワーッ!
子分筆頭: じ、次元が違いすぎる! 何者なんだ、この女!?
アタシ: さっさと親分を出しな。[ユムシ軍艦を構えて]それとも、店ごと潰してやろうかい?
子分筆頭: ヒ、ヒイィ!?
ナントカ: [調理場から飛び出して]女! ここをプラスチック包丁のバランの店と知っての狼藉か......って、お? ちょっと年増だが、小股の切れ上がったいい女じゃないか。どうだ、奥で二人っきりで勝負しないか?
アタシ: そうだね、アタシに勝ったら考えてやるよ。
ナントカ: 約束だぞ! 3、2、1、へいらっしゃい!
ナントカが繰り出したのは、磯の香り漂うラーメンだった。ラーメンか......ちっ、嫌なこと思い出させやがって。この代償は高く付くよ? でも、さすがに相手は重量級、ユムシの切り身弾幕による妨害もあまり効果がない。
ナントカ: はっはっは、そんな弾幕、鉄壁の丼どんぶりシールドの前では無駄無駄無駄ァ!
子分筆頭: バ、バラン様、ご用心を! 板前長の奴も最初は善戦してたんでやすが、急に様子がおかしくなって......。
ナントカ: ふん、一応油断しないでおくか。どうれ、ひと思いに真っ二つにしてくれよう!
ざばあと麺の下から現れたのは、凶悪な面構えの紅ズワイガニ。なるほど、カニラーメンだった訳かい。ブンブンと振り回す鋏は、まさに一撃必殺......当たればの話だけど。
ナントカ: 見たか、これぞ攻防一体の最強のスシブレード......む、何だあれは?
アタシ: へえ、見えるかい。さすがに雑魚とは違うね。しかし、ちょいとばかり気付くのが遅かったねェ......。
ラーメンの丼に黒い霧の塊がいくつもまとわりついている。形はユムシの群れのように見えなくもない。ユムシの切り身をいくら飛ばしても、丼を貫けないことぐらい百も承知サ。アタシの狙いはこれを擦り付けること......そう、切り身に染み込ませた怨念をね!
ナントカ: お、俺のカニラーメンに何をした!?
アタシ: さあ? それより、自分の身を心配したらどうだい。
ナントカ: 何だと......なっ!?
ナントカの足元から黒い霧が湧き出し、にゅるにゅると絡み付いていく。そう、自分のラーメンと全く同じに。闇のスシブレーダーは「スシブレードは使い捨ての道具、名前なんぞ不要」とか意気がってやがるけど、人情がそう簡単に割り切れるもンかい。確かに正道スシブレーダー程太くはないけど、闇のスシブレーダーにだってか細いながら己のスシブレードとの縁えにしは繋がっているのサ。現にナントカの奴も、自分のラーメンの異変に動揺してるじゃないの。その細い縁を伝って、怨念は道具から作成者へと遡さかのぼる......ほうら、怨念が形を成すよ......あんたを恨む者の姿を......。
ナントカ: くそっ、邪魔だぞ、離れろ!
????: 恨めしや......。
ナントカ: え? この声は......。
????: また私を捨てるのね......。
ナントカ: う、うわあぁぁっ!? お、お前は明美......。
黒い霧が女の姿に変わる。アタシには漠然と「女の形」にしか見えないけど、ナントカには過去に裏切った女たちの姿が、はっきり見えているんだろうね。こいつを実験台に選んだのは、女癖が悪いという噂を精神酢飯ネット ×ばつン野郎だよ!
女1: 結婚してくれるって言ったのに......。
女2: 私とは遊びだったのね......。
女3: 嘘つき......呪ってやる......。
ナントカ: [涙目]お、俺が悪かった、俺が悪かったから!
女4: [ナントカの股間に包丁を向けて]こんなモノがあるからいけないんだわ......。
女5: [ナントカの股間に包丁を向けて]コレは私だけのものよ......。
ナントカ: うわちょっと待てそれはさすがにシャレにならなぎゃあああああああああああああああ!?
股間押さえてぶっ倒れたナントカをぎゅうっと踏み潰して、アタシはその場を引き上げた。安心おし、全てはアンタの疚やましさが生み出した幻だよ。とは言え、当分はソレでやんちゃする気になれないだろうけどね、ははっ! という訳で、ユムシ軍艦をナントカみたいな男にぶつけた場合の性能は以下の通り。どうだい「こうかはばつぐんだ!」だろ?
恐怖
罪悪感
羞恥心
後悔
混乱
苦痛
さて、テスト結果は上々かね。これならあの男にも通じるだろう。奴が股間を抑えてのたうち回るところを想像するだけで、ドス黒い笑いが込み上げてくるよ、くっくっく。とは言え、この効果は女や童貞のスシブレーダーには望めない。あの男にそういう護衛がいる可能性もあるし、そっちの対策も必要だね。いっそ、正道のスシブレーダーを巻き込もうか?
ふふふ、首を洗って、いや、アソコを洗って待っておいで、お前さん......あーっはっはっはっはっ......!
関連資料
ニュウドウカジカも可愛いよね。「お前の可愛いはおかしい」って旦那によく言われた。何でサ!?
常連客の戸神君に探してもらった。「女将さんのためなら、お安い御用です!」ってヤダね、おばちゃんをからかうもンじゃないよ。
全く、男って奴ァ......。
文責: スシの暗黒女卿にして、回転寿司『貴船』女将・宇部 定子うべ さだこ
明日のラーメンのスープを仕込みながら、闇親方の顔は死人のように青ざめていた。
「な、何だ、急に寒気が......風邪でも引いたか?」