クレジット
初めてならこんなものだろう。
概論
"月見団子"は主に満月の夜に食される、あるいは作られる団子である。団子に使用されるのは主に製粉した米だが、麦・粟・トウモロコシ・芋類などの他の穀物や、最近ではゼラチンや挽肉などで代用することもある。ただし、本稿ではあくまで米によって作った団子のみを扱う。
使用する製粉米は通常スシに使っている種類とは異なるものだが、"月見団子"の味付け・団子の構造は通常のネタ・シャリの構造と同一であり、よって闇寿司に入ったばかりの初心者ブレーダーにも一見扱いやすいように見えるが、この寿司の本質は物質的な所ではなく風俗的な所、詳しく言えば月夜──特に十五夜に食されてきたという、その歴史にある。
スシブレード運用
攻撃力
防御力
機動力
持久力
重量
風情
従来の寿司と比較すると、球体であることとその粘性から形状が安定しやすく、よって防御率が高い。ただしその粘性が地面との摩擦を生み、機動力は落ちる。単純な能力の総評としてはまずまずで平均的、凡百のスシと言ったところだ。しかしこの平均的な能力ですら、後述する運用法ではメリットとなり得る。
このスシ最大の特徴は、『風情がある』ことだ。
考えてみてほしい。十五夜に月見団子を食べるやつが現代社会でどのくらいいる? 手作りするとなるとさらに限られるだろう。つまりこのスシを十五夜に回すだけで、「あ、こいつ風情があるな」と思われるのである。
それだけなら風情のある負け方をして終わりだが、こと闇寿司となると話が変わる。「我々が」「風情を理解していること」、それを相手に認識させることで、敵対するスシブレーダーの動揺を誘うことができる。
かの"財団"が流した子供向けアニメのせいで、我々には常に悪役、冷酷と言った印象がついて回る。そんな冷酷なはずの悪役が、満月の夜に月見団子を持って「今日は月が綺麗ですね」なんて言おうものなら相手は迷うだろう。闇寿司に対する考え方が変わってくるだろう。あとは適当に熱戦を繰り広げた後、ぐらついた精神を酢飯漬けにでもしてしまえばいい。
デメリットは十五夜でしか使えないことだが、その場合はまた季節の行事ごとにさまざまなスシを回せば良いだろう。
エピソード
私がこのスシを思い付いたのは、闇寿司に入る前にあるコンビニエンスストアでバイトをしていた経験からだ。秋、ちょうど十五夜くらいの時期だったろうか。コンビニに飾られていた月見団子がなんと、自立して動いたのだ。なんというか、可愛らしい動きをしていた。あの時は幻覚だと思ったが、今考えるとなんらかの異常な物体だったのかもしれない。その翌日に私は闇寿司に加入してバイトを辞めたため、あの月見団子がどうなったのかはわからないが、なんにせよ、私はその月見団子が動いた時、ススキをゆっくりと揺らしたときに強く心を揺さぶられたのだ。月の夜に見たその光景は、非常に美しく、風情があった。
そして今の私も、そう思う心は変わらない。私は風情を愛し、月見団子を愛し、寿司を愛し、そして闇寿司を愛する。だからこそ非情にも、その風情をこそ利用しよう。
"回らない寿司協会"との抗争はちょうど十五夜と予想されている。このスシを持って、私は闇寿司にさらなる繁栄をもたらそう。
関連資料
節分の日に使うことで精神攻撃を狙う他、巨大恵方巻きなら充分な火力を誇る。
精神酢飯漬けに特化した、携帯が容易な簡易食。食用ではないため味は保証しない。
私がweb上で連載している小説。主人公と月夜にだけ現れる少女の交流を描いたハートフル・ラブロマンス。
文責: 飾り包丁のショーシャンク
From: yami
To: everyone既に知っているものもいるかもしれないが......先日の回らない寿司協会との大規模な抗争の結果、飾り包丁のショーシャンクが死亡した。頭を撃ち抜かれて即死だった。彼のことは、忘れない。
彼の使っていた月見団子の意味も、空に出ていた満月も、どうやら"協会"は気にも止めなかったようだ。伝統を重んじていたはずの協会が風情を全く持ち合わせていないというのは、実に皮肉なことと思う。
奴らをこれ以上のさばらせてはならない。ショーシャンクの死を無駄にしてはならない。我ら闇寿司、邪道を歩む者。二度と彼のような犠牲を産まぬよう、邪道と正道の境界を終わらせてやろう。
闇