闇寿司ファイルNo.042 "カリフォルニアロール"
評価: +139

クレジット

タイトル: 闇寿司ファイルNo.042 "カリフォルニアロール"
著者: ©︎FattyAcid FattyAcid
作成年: 2020

評価: +139
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その他

ルーキーコンテスト2020
GoIフォーマット-JP部門 最優秀賞(同率)

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sushi.jpg

カリフォルニアロール エビフライ型

概論

カリフォルニアロールという名称は特定のネタに与えられたものではなく、形状あるいは調理法に基づく分類である。重要なのは「海苔が最外部ではない巻き寿司」という点だ。欧米人は海苔を好まないらしく、海外生まれの寿司にはしばしば海苔の欠損、減少または内部化が見られる。

ネタは様々であるが、典型的にはアボカド、卵焼き、何らかの調理済み魚介(大抵はカニやエビ、カニカマ)を含む他、マヨネーズソース、キュウリ、クリームチーズやスモークサーモンも良く見られる。また、最外部は海苔がない都合上、シャリが露出、あるいはゴマやとびこを塗してある。

スシブレード運用

攻撃力

防御力

機動力

持久力

重量

操作性

これといった重大な欠点が無く、素直で扱いやすい寿司と言える。寿司文化に慣れない欧米人でも容易に使用可能であろう。国際大会での使用率も高いと聞くが、国内では未だに邪道として扱われる傾向にある。

先ほどは欠点が無いと書いたが、裏を返せばこれといった特徴もまた薄い。特に攻撃力と防御力では他の巻き寿司に遅れをとりがちである。外殻となる海苔を欠くためだ。運用としては逃げ回りつつの耐久勝負となるだろう。幸いなことに機動力、持久力共に悪くは無い。

ブレーダーに直接攻撃する場合、効果的と言える寿司では無い。裏を返せば所謂"峰打ち"致命的な重傷を与えずして、短時間失神させ無力化する程度のダメージを与えるに利用することができるだろう。ラーメンでは手加減が難しい。

具材のカスタマイズによる拡張性についても触れておきたい。具材は主に重量と機動力に関与する。その差は微々たるものであり、ブレーダーの力量差の前ではさほど問題にならない。ただし、同レベル同士の試合ではその差が勝敗を分けることもあるだろう。そういった試合の一例として、2017年世界大会北米予選Bブロック決勝を挙げたい。

他の活用法

寿司を用いた精神干渉(通称:精神酢飯漬け)への使用。 精神酢飯漬けにはマグロの握りが利用されることが多いが、生魚(それと海苔)への精神的抵抗性を持つ対象(大抵は欧米人)に対してはカリフォルニアロールの使用が検討される。

エピソード

当ファイルの作成者が出会った奇妙なカリフォルニアロールの使い手について以下に記す。

2019年11月27日、私は大阪にいた。粉もの食文化についての情報収集が本来の目的であった。その日の調査を終えて宿泊先へ戻る途中、路地の奥から異様なオーラを感じた。時刻は22時を過ぎた頃だっただろうか。月は新月、街の明かりも届かないその闇の奥へと私は好奇心のままに足を踏み入れた。

そこでは2人の人影が向かい合っており、何やら言い争いをしているようであった。1人は獣の耳を生やした女性、もう1人は男か女か分からぬような容姿をした長髪の人物。両者ともに人ならざるものであろうことは容易に理解できた。

以下はその会話の書き起こしである。著者の記憶に頼っており、正確ではない可能性がある点はお許し願いたい。

獣の耳「ミハシラノウズノミコの1柱ともあろう貴方がどうして鮨相撲などに現を抜かしていらっしゃるか!お姉様が心配しておられます!」
長髪「はっ!何がウズノミコか!皆は姉様と弟ばかり持て囃すではないか!方や高天原を統べる日本の最高神!方や八岐大蛇退治の英雄様!私は何だ!何もない!」
長髪「どうしても戻って欲しいというのならば、鮨相撲...否、スシブレードで私に勝ってみせるがいい! 」

ここで長髪の方がカリフォルニアロールを取り出した。表面の米粒が非常に美しい輝きを放っており、思わず感嘆の声をあげそうになった。対する獣の耳も稲荷寿司を取り出した。こちらもふっくらとした油揚げが映える一品であった。近づいて観察したかったが、勝負に水を差す訳にもいかないので、気づかれないように隠れる事を優先した。

獣の耳「日の本の神が舶来の寿司とは...」
長髪「何とでも言え!」
長髪「3、2、1、へいらっしゃい!」
獣の耳「ひぃ、ふぅ、みぃ、へいらっしゃい!」

両者が寿司を発射した。この時の私は、カリフォルニアロールは逃げ回る戦法を取るであろう、と予測していた。カリフォルニアロールは機動力と持久力で稲荷寿司を上回っており、一方で攻撃を仕掛けた場合にはその油揚げによってガードされてしまう、と考えたのだ。だが、この予測は間違っていた。カリフォルニアロールは真正面から稲荷寿司にぶつかり、その油揚げをえぐり取ったのだ。

獣の耳「馬鹿な、シャリにそのような攻撃力あるはずが!」
長髪「ただのシャリならば...な?」
獣の耳「まさかこのシャリ...!」
長髪「そうだ...ウケモチを殺した時に得た米、その現物だ!」

カリフォルニアロールはそのまま稲荷寿司を弾き飛ばし、勝負が終わった。獣の耳は稲荷寿司の破片を拾い集めるとそれを頬張り、そのまま消えてしまった。長髪はそれを見届けると、同様に姿を消した。是非とも戦ってみたかったものである。この時、稲荷寿司の破片の一部を密かに回収することに成功した。

長髪が発した「ウケモチ」と言う名は日本書紀に登場する豊穣神、保食神ウケモチノカミを指すと思われる。神話のストーリーは簡潔に書けば以下の通り。「保食神は口から食物を生み出す力を持っていたが、それを提供したことに激怒した月読尊に殺害された。その時に屍体からあらゆる作物が生じ、それが日本の農業の始まりである。」

推測するに、何らかの神秘的なエネルギーを帯びた米をシャリに使用し、そのシャリが最も活きる形状である即ち邪魔になる海苔が存在しない、カリフォルニアロールへと仕上げたのであろう。

攻撃力

防御力

機動力

持久力

重量

操作性

この時のカルフォルニアロールの性能をグラフ化するとこのようになると思われる(ファイル作成者の主観に基づく点に注意)。特筆すべきは攻撃力、防御力の大幅な向上だ。しかし、カスタマイズに特殊な食材を用いる必要性がある点と、使い手にもまた特殊な技能が要求される可能性が高いという推測から、操作性は低く見積もった。

カリフォルニアロールの使い手が実際に神仏の類であったのか、それともその名を騙る妖術師か何かだったのかは分からない。しかしながらこの一件は、「使用する食材の厳選によってスシブレードを大幅に強化できる」という基礎的な戦略を強く再認識させ、神秘的・魔術的な食材の探求に価値を見出すきっかけとなった。

私は現在、厨房に神棚を置いている。祭神は月読尊である。長髪のカリフォルニアロール使いと再び巡り会い、手合わせできる事を祈願すると共に、打ち倒すべき目標を掲げるという意味も込めている。私はいずれ神仏をも打ち負かす力を得る。寿司の可能性に終わりはない。

関連資料


アボカドと寿司の相性、欧米風寿司ネタへの理解を深めたい場合参照すべし。


録画映像ファイル。カリフォルニアロールのミラーマッチ。


新世代のスシブレーダーに是非とも読んでほしい、推薦すべき一冊。初心者向け。


倒産済企業プロメテウス・フーズから回収された資料。技術的文章で上級者向け。


研究員ディヴァーニによる論文。オカルト分野から寿司へのアプローチの代表的なもの。上級者向け。

文責: 闇

Footnotes
. これはある種のタブルミーニングだ。"食文化的背景に拠る特定の食材への抵抗感"と"その食材を用いた精神干渉に対する抵抗力"は対応関係にあることが知られている。
. 余談だが、今日でも表の寿司社会は女性が寿司を握ることに忌避感を持っているようだ。旧時代的価値観であり、嘆かわしいことである。寿司が美味ければ、スシブレードが強ければ、そこに性別など関係ない。
. 記録によれば、スシブレードの原型となった競技の名である。江戸時代発祥と伝わる。
. 彼女は現在、回収した稲荷寿司サンプルの分析業務に当たっている。
ページリビジョン: 14, 最終更新: 02 Jul 2023 15:22
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