一
ある日の事でございます。スタイリスト・tanakaは美容室「महात्मा」のふちを、歩行、逍遥しょうよう、way to go。「महात्मा」の入り口のマニ車は、法輪の如く廻り、その真ん中にある経典射出機構からは、酢飯ではなく乳粥の良い匂が、絶間なくあたりへ溢れて居ります。嗚呼、美容室、開店。
やがてスタイリスト・tanakaは、美容室「महात्मा」の扉の間から、ふと三千世界-貪の容子ようすを御覧になりました。この美容室の扉の先は、丁度醜い三千世界に当って居りますから、水晶のような硝子戸を透き徹して、仏ツーブロックや雑魚雑魚メッシュ餓鬼が、丁度鏡を覗くように、はっきりと見えるのでございます。
するとその地獄の底に、乾爛かんただと云う男が一人、ほかの畜生と一しょに蠢いている姿が、御眼に止まりました。この乾爛と云う男は、髪を伸ばしたり髪に色を付けたり、いろいろ煩悩に塗れた下等生物ですが、それでもたった一つ、善い事を致した覚えがございます。と申しますのは、ある時この男が毛深い頭皮を撫で付けますと、細やかな髪が一本、指に絡まっていくのが見えました。そこで乾爛は早速指を伸ばして、髪を梳こうと致しましたが、「いや、いや、一本くらい抜いてもいいな」と、こう急に思い返して、とうとうその髪を抜いて、煩悩を断ち切ってやったからでございます。
スタイリスト・tanakaは地獄の容子を御覧になりながら、この乾爛には煩悩を捨てた事があるのを御思い出しになりました。そうしてそれだけの善い事をした報むくいには、出来るなら、この男の御身を洒い落としてやろうと御考えになりました。幸い、側を見ますと、琥珀のような色をした箒の中に、極楽の長毛が一本、美しい黒色の糸をかけて居ります。スタイリスト・tanakaはその髪の毛をそっと御手に御取りになって、入口扉の間から、遥かにダサい地獄の底へ、まっすぐにそれを御下しなさいました。
二
こちらは三千世界-貪で、ほかの下等生物と一しょに、パサついていたりボサついていたりしていた乾爛でございます。何しろどちらを見ても、ダサ過ぎで、たまにその泥臭からぼんやり垢抜けているものがあると思いますと、それは恐しいモヒカンの先が光るのでございますから、a full、溢れる、afraid-of。その上あたりはヘアケアを怠った頭皮のようにつんと悪臭立込めて、たまに良い匂のするものと云っては、ただ鼻をつく微かなトニックばかりでございます。
ところがある時の事でございます。何気なく乾爛が頭を掻き上げて、三千世界の空を眺めますと、そのもっさりとした髪の上を、遠い遠い美容院から、黒色の髪の毛が、まるで人目にかかるのを厭わぬように、一すじ強く光りながら、するすると自分の上へ垂れて参るのではございませんか。乾爛はこれを見ると、思わず「なんだコイツ!?」と喚きました。
「コイツとは愚かな呼び方です。私は至って御洒落です。」
「いきなり何なんだよお前!」
「お前とは何ですか。所詮貴様は奈落行き、菩薩とボサつきは似て非なるものです。サステナ仏法を理解し、解脱しなさい。」
「いや、宗教とか興味ないです。帰ってください。」
「極めて畜生道。痴モーハから脱するべく、我との叡智なワックスで御洒落しなさい。」
「......叡智なワックス?」
「आम्aam、痴を乗り越えられる、越痴えっちな濃厚ハードワックスです。」
「......」
「我とワックスして御身を洒い落とし、美を窮めて極妙となりなさい。さすれば遮二無二、疾とっくに比丘尼。仏の随まにまに、Destiny」
「嗚呼、神仏習合!」
kantada、絶頂
「ご入信は108,000円になります。」
「では、こちらのバーコードハゲ畜生で決済を。」ピッ \PayPay♪/
「頂戴、膨大・美容代。地獄の沙汰も金次第。」
「報恩感謝。」
「スタイリスト・kantada、そのまま極楽へと昇り、御洒落しなさい。」
「了解曼荼羅、しかしながら、細い髪だが耐えるかしら?」
「サステナ仏法・ヘアドネーションは、仏理的強度が有頂天。100柱乗っても大乗仏教。」
「嗚呼、合掌。」
こう思いましたからスタイリスト・kantadaは、早速その髪の毛を両手、もとい、八触腕でしっかりとつかみながら、一生懸命に上へ上へとたぐりのぼり始めました。ところがふと気がつきますと、髪の毛の下の方には、数限かずかぎりもない下等生物たちが、垂れた髪の毛の麓に集まって、一心によじのぼって来ようとするではございませんか。丸く集まってきた畜生たちの頭が半球を成し、それ全体があたかもパンチパーマの如く見えるのでございます。
「尊い!」
tanaka、絶頂
tanakaが絶頂したので、髪の毛は手放されました。ですからkantadaもたまりません。あっと云う間もなく風を切って、マニコロのようにくるくる回り、見る見る中うちにfall to hole。
美容室、
閉
店
以下はライセンスマニコロです。刮目しなさい。
この作品は以下の作品に基づきます
タイトル: 蜘蛛の糸
著者: 芥川龍之介
ライセンス: パブリックドメイン
ソース: 赤い鳥 第一号
公開年: 1918年