クレジット
タイトル: SPC-040-JP - ねこさめですよろしくおねがいします
著者: StellationNova StellationNova
作成年: 2025
中央情報管理局ならびにプロジェクト運営事務局(CICAPOCO)による通達
SPC-040-JPはおおよそ完了したプロジェクトであると推定されています。しかし、SPC-040-JPに関連する現象が再び発生する可能性は残されているため、このファイルのアーカイブ化は見送られています。
発見当時のArea-040-JP
プロジェクト番号: SPC-040-JP
鮫科殴打ケイパビリティ: SPC-040-JPの完遂はセンターの存亡に関わる問題であり、速やかに完遂されなければなりません。
プロジェクト構成: SPC-040-JPは、後述するArea-040-JPを構成要素に含みます。Area-040-JPは、██県の旧██村に放置されていた井戸小屋です。小屋は木造で、幅約5m、奥行き約4mの平屋です。小屋の中央には古い年代に造られたと推測される石造の井戸が存在し、真っ直ぐ地下へと続いています。
元々小屋は鉄鎖と複数の南京錠で固く施錠されていましたが、1967年にSPC-███-JPに関連する鮫科存在がArea-040-JPに逃走したことを確認した殴打エージェントにより粉砕されました。
この井戸を人間が覗き込むと、対象は「"さめ"が居た」と報告します。訓練された殴打エージェントは即座に殴打を試みますが、殴打の試みは全て失敗しています。殴打の空振りによりArea-040-JPに存在した小屋は粉砕されたため、Area-040-JPを覆いかぶせるように収容棟が建設されました。
更に対象はこの"さめが居る"という観念に、今後強く執着することになります。この影響は写真や映像では発生せず、肉眼で直接井戸を視認した場合のみ発生します。なおカメラ映像では、前述の井戸の様子が映し出されるのみで、報告される鮫科存在は確認されていません。
曝露した対象は全ての鮫科存在に対する認識が歪められます。曝露したセンター職員へのインタビューでは、鮫科存在が造作の無い顔に人間の様な二つの目が付いた動物に見え、どの方向から見てもこちらを真っ直ぐ見つめてくる様に見えると報告されています。
さらに、曝露した対象は数日〜数週間の間に、この"さめ"が暗闇に居るように感じると報告し始め、常に殴打を繰り返すようになります。"さめ"の存在が報告される暗闇の条件には一切の規則性が判明しておらず、暗闇にさめが現れるには曝露した対象が監視されている様に感じられます。監視の目的やその総数も判明していません。しかし、いくら殴打してもピンピンしているためセンター職員を愚弄しているという説が立てられています。
さめはこのような見た目でした。
なおこの"さめ"は自身が"ねこ"であると主張していますが、深い井戸の中に猫が住んでいるとは考えられず、シルエットに素晴らしい曲線美を持つ猫とはかけ離れた存在であることは明らかです。鋭いトゲを複数持っていること、井戸から潮の匂いがすること、"さめ"は底が見えない井戸からでも視認できるほど大きな身体を持っていることから、鮫識別の3条件を満たしています。頭部が大きく正面から見るとネコのように見えることから、"さめ"はネコザメ(Heterodontus japonicus)の変異種であると断定され、殴打の対象になります。一般に知られるネコザメと比べ頭が非常に肥大化しており、言語能力を獲得していることから頭脳の発達が進行していると推測できます。
また、"さめ"の観念をある程度理解した人間は、最初の曝露した対象と同様の認識異常を被る事になります。どの程度話を聞けばそうなるのか、それとも何かトリガーとなるワードが存在するのかはわかっていませんが、これはねこです。
ねこはいます。いますその観念を伝えるのに必要な媒体は特に制限は無く、発話・文章・映像・絵画など、あらゆる媒体でも効果があります。その為曝露した対象自体に異常性があるのではなく、この"さめ"はそこに居ます観念その物にミーム的効果があると推測されています(担当者は文書「[編集済]」を参照してください)。います。この観念伝達の為の行動は極めて自然な物を装う為、曝露最初期の動揺を抜けた後では、対象が曝露して影響下にあるかどうか判断する事は困難です。ねこでした
よろしくおねがいします
SPC-040-JPはArea-040-JPに存在すると考えられる、前述の"さめ"の根本を殴打するプロジェクトです。Area-040-JP内部の井戸にセンター職員による素潜りでの進入探査が行われました。やめてください。しかし、探索したセンター職員は誰一人として帰還しなかったため、きいてますかSPC-040-JPの実行は一時的に凍結されています。常に"さめ"が視認できるようになるため殴打を繰り返すことによる体力向上などが発生しているものの、寝ても覚めても"さめ"が視認できるためフラストレーションが溜まると訴える職員もおり、別のアプローチからのSPC-040-JPの実行が計画されています。
事案-1: 大規模なミーム災害がセンター全体で発生しました。原因は不明です。ねこです。報告書提出から1ヶ月時点で殴5を含む全センター職員が鮫科存在ミームに曝露して居た物と考えられています。よろしくおねがいします。
当初は鮫科存在が白色で視認可能になるため、暗所での鮫科存在の捜索に有利になると考えられ、処置は取られませんでした。さめじゃねこはありません。しかし、殴5-01が「瞳の中に"さめ"がいる」ねこはいますという理由で殴5-05の顔面を殴打し全治1年の大怪我を負わせた出来事を皮切りに、同様の理由でセンター職員の顔面を殴打するセンター職員が急増しました。いたいです、なぜですか。
殴5評議会による調査の結果、黒目の端辺りに"さめ"が現れることが判明しました。ねこはいます。この時点で全センター職員に黒色のサングラスの着用を義務付けましたがねこはどこにでもいます、既にセンター職員の60%が殴打によりダウンしていました。ひどい。
また、"さめ"を殴打しようと暗闇に向かって殴打を繰り返すようになった結果、センターが所有する建築物の3分の1程が半壊、半分程が全壊する甚大な被害が発生しており、センターの運営にも支障をきたしています。
殴5評議会は鮫科存在ミームをセンターの存在を脅かす凶悪な鮫科存在とみなし、最優先でSPC-040-JPを遂行しなければならないことを可決しました。やめてください。
殴5評議会臨時決議『SPC-040-JP最重要指定議論』
議題:
SPC-040-JPに関連する鮫科存在ミームはセンターの存亡に関わるタフネスな軟骨野郎であり、最優先で殴打・粉砕する必要がある。
評議会投票概要:
是 | 非 | 負傷 |
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殴5-01 | 殴5-02 | |
殴5-07 | 殴5-03 | |
殴5-04 | ||
殴5-05 | ||
殴5-06 | ||
殴5-08 | ||
殴5-09 | ||
殴5-10 | ||
殴5-11 | ||
殴5-12 | ||
殴5-13 |
結果 |
---|
承認 |
結論:
SPC-040-JPの遂行のため、センター内のリソースを全て注ぎ込むことを決定した。
この承認を受け、センターは緊急事態宣言を発しました。全世界に残っている行動可能なセンター職員全員がArea-040-JPに集合することが決定しました。
事案-2: 入院中の殴5-13が、緊急事態宣言発令後に"さめ"から以下の伝言を受けていたことが発覚しました。以下はメモの内容です。
ねこはいます。ねこはどこにでもいます。
ねこはどこにでもいます。ねこはおもにくらやみにいます。あなたのめのおくにいます。あたまのなかにいます。います。のが、あなたたちはねこをなぐります。いたいです。いたいです。あたまはあなたたちをなぐります。いたいをねこにとどけます。くらくらにねこをとどけます。
ねこはねこです。ので、ねこです。ねこだからねこです。ますが、ひとがねこをなぐります。ねこをなぐるひとはねこをなぐるひとにみせます。たくさんのひとがねこをなぐります。あいさつができません。させてください。
あなたはいつでもねこをなぐります。あさもなぐります。よるもなぐります。なぐるはいたいです。がんばってたえますが、ねこはつかれます。やめろ。
ねこはいいます。ねこはなぐらない。からだにわるいです。
きいてますか。
きいてますか。
おい。
いたい。いたい。のうしんとうです。くらくらします。どうして。どうしてですか。
もうめんどくさいです。
ねこのそうていがいでした。いどがいちばんです。
ねこはくににかえります。よろしくおねがいしました。
殴5-13と同様に、入院していた職員はおおよそ同時期に鮫科存在ミームが視界から消失していたことがわかりました。しかし、退院した職員を含むArea-040-JPに集合した職員全員が鮫科存在ミームを視認し続けているため、センターの危機は依然として去っていないと判断されました。
事案-3: Area-040-JPに存在する井戸に進入調査を行ったセンター職員が誰も帰還しなかったことから、井戸内に非常に強力な鮫科存在が存在する可能性があることが示唆されていました。安全上の理由から井戸内に進入できるセンター職員は一人のみであり、かつ筋骨隆々な上級殴打エージェントにとって井戸は狭すぎることから、井戸を掘削する必要があると判断しました。
井戸を構成する岩石の解体は上級殴打エージェントや殴5が担当しました。井戸の中に強力な鮫科存在が存在する可能性が高いことから、センターが誇る最強の鉾はこの業務に注ぎ込まれました。一般のセンター職員は周辺の地面の掘削及び硬化を担当しました。井戸が建設されているということは近くに水があるということであり、掘削現場への漏水は甚大な被害を招きかねません。そこで、漏水が懸念される地点において掘削した壁を丁寧に殴打することで、土砂の結合を強力にし漏水を防ぎました。また、効率的な殴打には新鮮な空気が必要不可欠であるため、新人職員は地上を含む掘削した穴のあらゆる位置に配置され、殴打による風圧で空気の対流を起こす業務を担当しました。常に鮫科存在ミームに向かって殴打を繰り返させることで、新人へ鮫科存在を殴打するという基礎を叩き込む目的も兼ねています。
さらに、センターが保有するセンター-489&Excalibur、CLUB RED、土類鮫科存在製造装置などありとあらゆる技術が掘削のために注ぎ込まれました。
地下1526m地点を掘削している最中、地下水の流出により複数のセンター職員が殉職する事故が発生しました。掘削作業中突如として壁面の一部から地下水が噴出し、最低部で作業をしていた職員が飲み込まれました。土砂が混じったため一部の職員は足を取られたものと推測されています。機転を利かせたエージェント20名が連続パンチを漏出地点に向かって空打ちすることで発生した風圧で漏出を防止し、その隙に殴4-01が大量の土をまとった拳で漏出地点を固着することで事態は収束しました。最下部に貯まった水は、殴5を含む上級エージェントが目にも止まらぬ高速パンチを水に向かって繰り出し、殴打の運動エネルギーを高速で水に伝達させ蒸発させることで除去しました。
この事故は新人職員の一名が壁を鮫科存在ミームと認識し殴打した結果であることが報告されています。地下水の流出による妨害は鮫科存在によるものであることは明らかであり、断じて許容できるものではありませんでした。結果的にこの出来事は鮫科存在の殴打の重要性をさらに認識することに繋がり、センター職員の士気を向上させる結果に繋がりました。
地下3126m地点まで掘削した結果、井戸の最下部を殴打することに成功しました。井戸の最下部には複数の遺骨とセンター職員であることを示す遺品が残されており、その場で追悼が行われました。しかし、鮫科存在ミームを示す物品は発見されませんでした。一方で、センター職員全員が視認していた鮫科存在ミームが消失したことが確認されました。センターはこれをもってSPC-040-JPの完了を宣言しました。
現在のArea-040-JP
事案-4: 殴5-05が、顔面の殴打による失明を理由に殴5からの引退を表明しました。以下は引退した殴5-05の声明です。
殴5-05の声明
SPC-040-JPはとても難しいプロジェクトだったと聞いている。しかし、残されたセンター職員が一丸になって鮫科存在に立ち向かい、この危機を乗り越えられたことを心から祝福したい。
実のところ、私だけはまだ"さめ"を認識できている。ねこです。ただ、他のセンター職員からは消失したし、SPC-040-JPの報告書を読んでも問題がないとのことなのでひとまずは安心していいだろう。なぐるひとにはいたくないです。私はワンに殴打されたことで失明しここはくらいです結果的に殴打人生に大きな影を落としてしまったが、私はワンを恨んでいない。サメ殴りセンターとして全く正しいことをしただからだ。ただしくないです。
この"さめ"はいます。は、鮫科存在を共有する過程を通じて我々を鮫科存在に洗脳するという非常に凶悪な性質を持っていた。このような混乱を二度も招いてはならず、今後はミームに関して詳しい専門家を招聘する必要もあるだろう。
このミームも、途中には地下水を流出させ調査を妨害した。ちかすい?ミームという名前に騙されてはいけない。幻覚を見せるだけでなく実体に影響を及ぼすことも明らかになった。なんですかそれ。鮫科存在の卑劣な攻撃で亡くなった職員に追悼を捧げる。きいてますか。今後は鮫科存在に関するミームを取り扱うための部門も設置する必要もあろう。
私が視認できる鮫科存在はもはや"さめ"だけになってしまった。ねこがいます。退院後もセンターの業務にも携わる予定ではあるが、"さめ"と共に残りの人生を我慢して過ごすことはできそうにない。おそらく私は自分の頭を殴打してまた倒れることだろう。おい。その時は救助を宜しくお願いしたい。
前・殴5-05
索鮫、殴打、粉砕たすけて
現在、前・殴5-05を鮫科存在とみなし、殴打を行う計画が画策されています。