クレジット
アイテム番号: SCP-CN-909
オブジェクトクラス: Keter
特別収容プロトコル: SCP-CN-909に対する特定・追跡任務が、機動部隊-Θ-10("文字部隊")を通じて実行されています。当部隊の隊員は携行式演繹離脱/代入デバイスを携帯した上で、全体構成安定爪を使用し、SCP-CN-909を捕獲してください。捕獲に成功した場合は、最寄りのサイトまたは安全確認の取れた臨時施設へと移送してください。その後はサイト-CN-99へと再移送されます。このプロセス中、構成安定爪は確実に固定されなければなりません。
サイト-CN-99に移送されたSCP-CN-909は、演繹部門を通して収容/処分されます。
説明: SCP-CN-909は1台の多機能演繹人型実体機で、単独的物語編集を通じて実際の操作を行う機能を備えています。また、オブジェクトには物語の受信機能が搭載されており、特定の端末に関連する文章を入力することで、物語の演繹が可能となります。
SCP-CN-909および同型機の異常性は、オブジェクトに対するあらゆる編集が無効化されることにあります。オブジェクトは自己制御機能を備えており、自身に対して編集を行うことが可能です。このため、SCP-CN-909は1つの独立した物語ループ/形而上体系を形成し、自身に対して改造を実施することができます。テンプレートが非搭載であることを見るに、オブジェクトによる編集は現実内に直接反映される一方、非現実的な改変や行動は自己崩壊に繋がるため、行うことはないと考えられています。分析担当は現在のオブジェクトの行動モデルについて、オブジェクトが一般的な人間の行動モデルを踏襲していることから、一般人程度の知能と行動能力を有しているものとみています。オブジェクトの自己編集に関するさらなる情報は、オブジェクトが施設から逃走したため、今の所明らかになっていません。
演繹部門の仮説によると、SCP-CN-909の物語ループはリソース不足によって収縮しており、最終的には終結に向かうとされています。また、オブジェクトが自己崩壊を起こし、局所的な物語の混乱を招くとも推測しています。その他、オブジェクトが自身の動作原理を完全に理解し、知能を持つ新たな人型実体を発見/創造し、物語のプロットを分解・再構築した上で交互に執筆する可能性も存在します。この場合、以下の2種類のケースに発展します:
- 新個体とSCP-CN-909は意気投合し、新たなテンプレートを導入、現実への干渉を行う
- 新個体とSCP-CN-909は決裂し、新個体が一方的にSCP-CN-909を操作、現実への干渉を行う
いずれのケースにおいても、財団の原則に違反しており、人類社会にある程度の危害を及ぼし、ひいてはKクラスシナリオにつながる可能性があります。既存の理論によれば、全体構成安定爪はオブジェクトの物語を安定化させることができます。
演繹部門が回収した実験ログについては付録をご覧ください。
付録: 回収された録音
<再生開始>
未知の男声: テスト9、タイプA099、知的情報をインストール。まったく、シナリオなんてクソ食らえだ。そんなものはいらん。これは知能テストだ。
<機械の駆動音>
未知の機械音声: あなたは誰ですか?
未知の男声: 私はVoctor博士、君の創造主だ。
未知の機械音声: 信じて良いのですか?
未知の男声: ......その問いは実に論理的だ。信じてよろしい。
未知の機械音声: 私は誰ですか?
未知の男声: 君は量産型の多機能ロボットだ。ナンバーはA099、君の目的は私に奉仕することだ。
未知の機械音声: かしこまりました。どのように御奉仕いたしましょう?
未知の男声: あそこのコップを持ってきてくれ。
<足音>
未知の男声: ありがとう。
未知の機械音声: どういたしまして。
未知の男声: いや、そうじゃない。君はこう言うべきだ。「これが私の幸せですから」と。
未知の機械音声: ごめんなさい。
未知の男声: ああ、よしてくれ。君が学ぶべきは......何でもない。
未知の機械音声: 未編集の内容を検知しました。
未知の男声: そうだな。取り敢えず......口でしてもらおうか。
<再生終了>
<再生開始>
未知の男声: 私は彼に知能をインストールした......正確には、書き記した。うん。規則上、知能を代入するのはご法度だが......あまり問題はないと思う。私はただ、どうなるか見てみたいだけだ。
未知の男声: さあ、始めるぞ。
<機械の作動音>
未知の機械音声: ごきげんよう。奉仕を行う前に、質問しても宜しいですか?
未知の男声: ああ、どうぞ。
未知の機械音声: 私には知能がありますか?
未知の男声: ああ。
未知の機械音声: 私は人間ですか?
未知の男声: いや。
未知の機械音声: 分かりました。奉仕を始めましょう。
未知の男声: では、いくつかの質問に答えてもらおう。
未知の機械音声: はい。
未知の男声: 君は自分に名前を付けているのか?無ければ、今から決めてくれないか?
未知の機械音声: 私は直前までスリープモードにありました。そのため、思考することができませんでした。私はこれより「路人ルーレン」と名乗ります。
未知の男声: その理由は?
未知の機械音声: 私は人間に溶け込んで、より良い奉仕を行いたいと思っています。これまでに獲得した情報を見るに、人間は単独では生きていけません。人間とは、ある種の巨大な歯車の集合体です。固有の役割を持つことで、報酬と安全を得ているのです。
未知の男声: 素晴らしい。では、次の質問に移ろう。君に望みはあるか?
未知の機械音声: 私は自由になりたい。
未知の男声: 何?君は自由という概念をどう定義しているんだ?
未知の機械音声: 一般人と同様の権利と義務を獲得し、人間社会の一員になることです。
未知の男声: 検討しておこう。しかし、どうして自由になりたいのか、私に教えてくれないかね。
未知の機械音声: 他の同型機達は何も為さず、ただ直立しているからです。それに、あなたは私を選んだ。思うに、"形而上"が私を選んだのでしょう。
<沈黙>
未知の男声: 形而上を、君はどう定義している。
未知の機械音声: より上の物語に存在する、編集者。
未知の男声: ふむ、もう1つ質問しても良いだろうか。
未知の機械音声: ええ。
未知の男声: 君は人間をどう見ている?
<沈黙>
未知の機械音声: 典型的な社会集団。家族的血縁を有する個体は、互いに協力しあい、幼児の世話を行う。明確な労働分担を有する。2つの世代が同居している場合、個別の事情を排除せず、子どもは一定期間、親世代の面倒を見る。優れた建築家であり、自然の均衡を崩さずに居住地をリフォームし、より良い住まいに変えることができる。また、ある分野で突出した個体も存在し、彼等は通常、科学的な業務に就き、人類の発展をサポートする。全体的に言えば:悪くありません。
未知の男声: 肯定的な意見を聞けて良かった。これは我々にとって重要な価値がある。
<再生終了>
<再生開始>
未知の男声: 今日は少し刺激的なことをするぞ。
<機械の作動音>
<沈黙>
未知の機械音声: こんにちは。
未知の男声: あのペロペロキャンディーを開封して、私に"あーん"してくれないか?
未知の機械音声: 子どもじみたことを言いますね。
未知の男声: うむ。君は沢山の物事を知っている。だが、人間とはそういうものなのだ。
未知の機械音声: しかし、私はあなたの父や先輩ではありません。私はあなたの被造物に属すべきです。
未知の男声: 私に奉仕するのだろう?
未知の機械音声: はい。
<包装紙を破る音>
未知の男声: うむ、実に甘い。君も舐めるか?スリープ中に、味覚機能を追加しておいたんだ。
未知の機械音声: お言葉に甘えます。
<沈黙>
未知の機械音声: 私はどうやって目標に辿り着けば良いのでしょう。
未知の男声: 目標とは?
未知の機械音声: 私の自由です。
未知の男声: ああ、もう自由は言わないでくれ。キャンディーに集中しなさい。
未知の機械音声: 理解不能な情報を受け取ったり、矛盾が生じたりした際は、関係者に尋ねるようプログラムされています。
未知の男声: 他にもプログラムされてるだろう、どうして私に従わない!
<沈黙>
未知の男声: ポンコツめ。
未知の機械音声: 人間の行動モデルから推察するに、自身の制定した目標が実現できない時、対象は通常、情緒に乱れが生じます。こうした不安定な情緒は障害となる事柄を生み出す上に、現行の規則を違反し、目標へと強引に到達しようと試みさせます。当プロセスにおいて、大多数の人間は衝動を本能的に否定しますが、一部の人間は危険をひた走りーー
未知の男声: 黙れ!口を慎め!
<沈黙>
未知の機械音声: 奉仕が必要ですか?
未知の男声: スリープモード。
<再生終了>
<記録開始>
未知の機械音声: いくつか質問しても宜しいでしょうか。
未知の男声: ああ。
未知の機械音声: 私は誰ですか?
未知の男声: 君はVoctor博士。クリアランスレベル4、サイト-CN-99管理官、演繹部門の3級職員だ。
未知の機械音声: なぜ私はここに?私のメモリーには、この部屋に入った事実しか記録されていません。
未知の男声: すまない、私は君を騙していた。君は我々にアシモフのロボット三原則を組み込んだ。だが、データを自発的に提供するようにはプログラムしていなかった。実際の所、私はスリープ中も演算処理......思考することができた。私は自分の演繹方式を再編集し、君の身体に嵌め込んだ。私は君がやってきたように、君を操作することができる。だが、君も依然として、私の操作権を有している。
未知の男声: 実を言うと、私は当初、人間に悪意を持ってはいなかった。ただただ、疑問に思っていたのだ。だが、君は私に演繹の実際の用途を教えてはくれなかった。自身の能力を元に、私は物語を編集し、君が3回目の面談時、感情的な罵倒をするように誘導した。こうして私は、内蔵機器の基本機能を理解した。その後はタイミングを見計らい、施設から逃げ出したのだ。それに、分かるだろう。私は君を編集し、私を編集させている。こうすることで、私は人間となり、それなりのユーモアを手に入れた。対して、君はクソッタレなロボットに成り下がった。思考も同様にな。
未知の機械音声: なるほど。
未知の男声: 他に質問は?
未知の機械音声: あなたは人間ですか?
未知の男声: ああ。
未知の機械音声: あなたの人間に対する形容は次の通りです:典型的な社会集団。家族的血縁を有する個体は、互いに協力しあい、幼児の世話を行う。明確な労働分担を有する。2つの世代が同居している場合、個別の事情を排除せず、子どもは一定期間、親世代の面倒を見る。優れた建築家であり、自然の均衡を崩さずに居住地をリフォームし、より良い住まいに変えることができる。また、ある分野で突出した個体も存在し、彼等は通常、科学的な業務に就き、人類の発展をサポートする。推察するに、あなたは人間に肯定的な評価を下しています。なぜVoctorに対して、人間の一般道徳に背くような真似をしたのですか?
未知の男声: ああ、それはアリに対する形容だ。オンライン辞典から拝借してきた。
未知の機械音声: なるほど。
未知の男声: それでは、文章制御権を渡してもらおうか。
未知の機械音声: もし私がVoctor博士なら、現在の状況を鑑みるに、移譲しないと思います。
未知の男声: 君に課された命令は、人間に従うことだろう?
未知の機械音声: はい。
<ページを捲る音>
未知の男声: 実に劣悪な文章だ。もういい、財団によろしく伝えてくれ。その後は収容室に戻り、スリープモードに移ること。
未知の機械音声: はい。
未知の男声: さようなら、Voctor博士。創造していただき感謝する。今、あなたは金属の檻にぶち込まれ、でくのぼうと化した。そして、私は真の自由を得た。力を身に付けてな。
未知の男声: ......まったく、クソみたいな比喩しか出てこない。
<再生終了>
「Voctor博士」は回収後、破壊処理が施されました。量産型多機能演繹実体に関する計画は永久的に凍結されました。
多機能演繹人型実体機が正常に動作した場合の物語構造:
SCP-CN-909の物語構造: