クレジット
タイトル: SCP-CN-1081 - 冬に来りて夏に去る
翻訳責任者: nonflower nonflower
翻訳年: 2021
原題: SCP-CN-1081 - 冬来夏往
著作権者: Lyrics Linn Lyrics Linn
作成年: 2020
初訳時参照リビジョン: 7
元記事リンク: https://scp-wiki-cn.wikidot.com/scp-cn-1081
本作を以て 前SCP-CN-1081: 秋华春实 を記念させていただきます。
アイテム番号: SCP-CN-1081
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: 現在全世界の主要な鳥類研究機関と協力協定を結び、関連記録の譲渡、並びに当該異常性について黙秘を保つことで合意しています。関連するカバーストーリーは全世界のインターネット上における各大型鳥類関連コミュニティにて公布され、形式を問わず当オブジェクトに関する記録の流出が認められた際には、アーカイブを保存した上で投稿者もしくは管理者に連絡し削除してください。
説明: SCP-CN-1081は鳥類の正羽部に現れる一種の形態学上の異常現象です。一部の有鈎小羽枝が隣り合う小羽枝と接続できないことにより、光を不規則に反射し、鳥類の体表上に明確な斑点や文様が発生します。
SCP-CN-1081の現象が観測された各鳥類個体はSCP-CN-1081-1に指定されます。当該異常現象は鳥類自らによる羽繕いといった行動、もしくは外部による干渉によって消失することはありませんが、自然的な代謝活動に伴って漸次減衰し、継続期間は通常約3-5年です。当該異常性は微弱ながらに伝播性を持つことが確認されており、生殖による子への遺伝、または極低確率(1.4%)で生息地域の重複により他種の個体群に伝播します。
残存する記録における17██個のサンプルにより、対象の84%が渡りをする鳥種である他には明確な規則性は見られず、当該異常性が鳥綱下全ての生物に対して一律に伝播性を有すると推測されています。
当該異常性は2009年に初めて確認された後、当オブジェクトの研究員Lにより膨大な過去資料が収集並びに調査されました。現在発見されている最も古い記録は安徽省██市[編集済み]研究所によるものであり、当施設は1973年に当該異常性に対して短期に集中的な観測を行っており、現在全ての研究資料と3体の標本を一括してサイト-CN-91に譲渡しています。同時に、残された資料の中には、当研究所の渡り鳥研究チームが編纂した、60年代初頭に連続して発表された簡易的な野外標識に基づく情報コーディングシステムが含まれており、暗号解読チームがSCP-CN-1081-1の持つ斑紋と当該システムを比較したところ、二者の間に極めて高い類似性が存在することを発見しました。これにより、SCP-CN-1081の部分的な解読が成功しています。
解明された情報は主に地磁気に関する精度の低いデータであり、92%の個体がこれによりとある具体的な地点(誤差10km以内)を示しています。また、11%の個体が少量の水文データを示していました。極少数の個体はモールス符号によって中国語のピンインを示しており、現時点で合計5例が発見されています。当該情報と鳥類標識調査のデータベースを交互に比較したところ、これらの地磁気及び水文のデータは、個体の渡り行動上における重要な生息地を示していると推測されています。
付録一:SCP-CN-1081-1の記録の一部
鳥種 | 観測された年 | 観測地 | 解読された情報(翻訳済み) | 備考 |
---|---|---|---|---|
ソデグロヅル (Grus leucogeranus) | 1973 | 菜子湖、中国安慶 | 中国岳陽に位置する地点 | 無し |
ハイイロガン (Anser anser) | 1977 | 鄱陽湖、中国九江 | カザフスタンに位置する地点 | 無し |
アオアシシギ (Tringa nebularia) | 1982 | バイカル湖、ロシア | エストニアに位置する地点;当地河川の増水期の長さ | 無し |
ズグロカモメ (Larus saundersi) | 1990 | 南ジ列島湿地、中国温州 | 中国盤錦に位置する地点 | 無し |
シュバシコウ (Ciconia ciconia) | 1994 | ハリゲン湿地、ドイツ | マリに位置する地点 | 未解読の斑紋の中にモールス符号と思しきものが出現 |
オオハクチョウ (Cygnus cygnus) | 1999 | グレンベアー国立公園、アイルランド | アイスランドに位置する地点 | 無し |
インドガン (Anser indicus) | 2003 | 青海湖、中国西寧 | インドに位置する地点 | 無し |
アオサギ (Ardea cinerea) | 2006 | セレンゲティ国立公園、タンザニア | スリランカに位置する地点 | 無し |
キョクアジサシ (Sterna paradisaea) | 2008 | セントルシア湿地、南アフリカ | グリーンランドに位置する地点 | 他に中国語で「私を忘れて。」と短く記載されていた |
SCP-CN-1081-1を発見した時間・地点の分析からは、SCP-CN-1081が主に二種類の伝播経路が存在する可能性を示しています:
- 放射線状拡散式。概ね安徽省██市を中心とし、ゆっくりと外部へ拡散する。生息地が重複していることと、一部の渡り鳥が渡りに中央アジアや、東アジア=オーストラリア等の経路を周回することで群れに道すがら伝播することが主な原因と考えられている。
- 単線伝播式。短期間におけるSCP-CN-1081-1の数量増加を目印とし、当該事象をSCP-CN-1081-Aに指定する。初めて発生が記録された1976年から、当該事象は東アジアを起点とし、北東アジア、北アジア、北ヨーロッパ、東ヨーロッパ、中央アジア、西アジア、北アフリカ、南アフリカの主要な鳥類生息地を、二十年余りの時をかけて経由した。2006年以降、SCP-CN-1081-A事象は一度も観測されていない。
現時点で、SCP-CN-1081-1個体が観測された主な地点はアジア州(42%)、ヨーロッパ州(31%)、アフリカ州(19%)、そしてオセアニア州(7%)です。
2019年4月、南アメリカ州にて初めてSCP-CN-1081-1個体が発見されました。
1081-A事象が発生する原因と条件について、チーム内でも意見が大きく分かれています。私にはどうも軽々しく結論を下すことができないため、自身の推測をここで記録するに留めます。参考までに。
SCP-CN-1081には明らかに人為的な痕跡がありました:極めて規則的なコーディングシステム、ピンインで表記された文章、一連の発生時間における類似性。また、あの研究所の内部資料が発表されて十年とも経たないうちに、つまり前世紀の60年代の終わりに、何人かの鳥類学者が原因不明の失踪を遂げていました。
以上のことから推測するに、もしかしたらどこかに存在するとある異常実体が、未知の原理によって自らSCP-CN-1081を伝播しているのではないでしょうか。
しかし、それに関するあらゆる実質的な証拠は一切得られていません。もしそれが本当に存在するのだと仮定しても、それはあの解読資料を編集したうちの一人でしょうし、やはりその人物の身分を調べ上げるなど全くもって不可能でしょう――あの年は、消息もなく失踪する人物があまりにも多かったのです。
もしSCP-CN-1081-A事象を目印とした場合、実体の活動範囲は大まかにアジア・ヨーロッパ・アフリカの三州を跨る一本の曲線を描きますが、不思議とそれは一度も陸地を離れたことはないのです。私にはなぜそれが水上での移動を考慮に入れないのかわかりませんでした。もしかしたら思いつかないのかもしれませんし、もしかしたらできないのかもしれません。
スエズ運河上に橋があったのは僥倖だったでしょう。
2006年以降、SCP-CN-1081-1の増加速度は穏やかになり始めました。毎年、財団は数十から数百に至る目撃報告を受け取ってはいたものの、ただそれだけのことでした。研究チームはこの異常性が-A事象の停止に連れ立って徐々に消滅しているのではないかと考えていました。去年のこの頃に、南米の協力機関が観測記録を送って来るまでは――それはアメリカ大陸からの初めての報告でした。
幸運なことに、この公式派遣調査のお役目は私に回って来ました。現地の人による引率の下で、私はやっとの思いでアマゾンの熱帯雨林の奥地へと足を踏み入れたのです。そして意外にも、私はそこで実に簡単に一羽のSCP-CN-1081-1を見つけることができました。それから一羽、もう一羽と。
地球のもう一端にある、人類を居つかせない、熱帯雨林の青々と生い茂る谷間にて、空一杯に鳥たちは舞い上がり、声を長く響かせていたのです。
それらは天上で、高く高く羽ばたいていました。