SCP-856-JP
評価: +185

アイテム番号: SCP-856-JP
20130813_184221.jpg

エージェント・エドモンドによって送信されたSCP-856-JP内の画像

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: 現在、SCP-856-JPへの侵入経路の捜索は機動部隊と10名3名のエージェントによって行われています。研究スタッフはSCP-856-JP異空間班とSCP-856-JP通信班の二チームに分かれて、それぞれの業務を行ってください。異空間班のスタッフ長には梁野博士、通信班のスタッフ長にはペインハイル博士が割り当てられます。また、エージェント・ベルナドットの所持していた携帯電話をオブジェクトに認定する議論はペインハイル博士を議長に置いた上でサイト-076の第5会議室にて行ってください。SCP-856-JP異空間班はSCP-856-JPに関する報告をする際、エージェント・エドモンドからの定期報告を元にそれらを行ってください。20日以上の期間、エージェント・エドモンドからの通信が断絶した場合、24時間待機した後にエージェント・エドモンドの死亡報告書を作成してください。その後、エージェント・エドモンドの救出作戦は凍結されます。エージェント・エドモンドの救出作戦は凍結されました。
現在、エージェント・エドモンドは公式の記録では死亡したことになっており、遺族関係者などには隠蔽工作を行ってください。

説明: SCP-856-JPの全貌は正確には判明していません。SCP-856-JPは、20██/3/██/AM11:34にエージェント・エドモンドが失踪した事件をきっかけにその存在が明らかとなりました。当時、エージェント・エドモンドは、エージェント・ベルナドットと共に███県██市の███山の森林部でSCPオブジェクトと思われる実体(現在のSCP-███-JP)が発見されたという報告を受け、その現地調査のために出動していました。その後、エージェント・ベルナドットがSCPオブジェクトを発見し捕獲、その連絡をエージェント・エドモンドが行おうとした際に当人が失踪しました。当初、SCP-███-JPの影響による被害を受けた結果、███山内で負傷したのではないかという見解の元、現地の警察と協力した捜索活動が行われましたが、その10日後にエージェント・エドモンドからエージェント・ベルナドットの携帯電話に連絡が来たため、現状の把握が可能になりました。

現在、SCP-856-JPに関する最も有力であると思われる見解が二つ存在します。一つ目はSCP-856-JPは植物以外の生物が一切存在しない人類が現在生活している世界とほぼ同様の地形、大気、建造物などを有していると思われる異空間であるという説、二つ目はSCP-856-JPに関する情報の交換が行われた通信そのものがオブジェクトであるという説がそれに該当します。その為、財団上層部によりSCP-856-JP異空間班とSCP-856-JP通信班という二つの研究チームが設立され、現在これらのチームによってオブジェクトに関する議論が継続されています。(この報告書はSCP-856-JP異空間班の担当であるため、SCP-856-JPが異空間であるという説を肯定した上での概要を記載します。SCP-856-JP通信班の報告書はペインハイル博士の許可を得た上で閲覧してください。)

エージェント・エドモンドの報告から、SCP-856-JPは地球と同様の面積と環境、大陸、海洋を有していると予想されます。また、世界各国の現在の建築物、地形などはエージェント・エドモンドの視認範囲外で常に更新されていることが判明しています。現在、SCP-856-JP内に侵入する方法は判明しておらず、エージェント・エドモンドの消失地点の捜索を決行しましたが、侵入および消失に繋がる手がかりを発見することは出来ませんでした。また、SCP-856-JP内部では一部現代の技術では建築することが不可能であると思われる建築物などの存在も確認されており、SCP-856-JP内部と我々の生活している世界ではいくつかの相違点が存在するものと予想されています。現在、建造物以外の相違点は発見されていません。また、SCP-856-JP内部では太陽の動きが一切観察されないという特徴を有しており、その為、エージェント・エドモンドがSCP-856-JP内に侵入してからおよそ█████時間以上経過した今でも、気温:およそ24度、時刻:東京の午後7時台、月:東京の5月中旬の状態の太陽の位置を維持していることが判明しています。また、SCP-856-JP内では、移動距離に関係なく常に太陽を観察することが可能であり、いかなる地方、国、山岳部に移動した場合も前述した月と時間の気温と太陽の位置を維持しているという現象が確認されています。(高山地帯においても、積雪は確認されていますが、前述した気温を維持しています。)天候の変化は確認されていません。

過去にエージェント・エドモンドにはSCP-856-JP内部の調査と侵入方法および脱出方法の特定任務が割り当てられ、SCP-856-JP内部の状況やデータの収集はエージェント・エドモンドの所持する携帯電話からの連絡を利用して行っていました。なお、これらの連絡はエージェント・ベルナドットの携帯電話でのみ受信が可能であり、なおかつ、エージェント・ベルナドットが応答した時のみ通話/録音が可能になるという現象が確認され、これらの原理などについても調査が行われていました(こちらからの通信、およびエージェント・ベルナドット以外の応答は遮断されます)。

現在、エージェント・エドモンドからの通信は断絶しており、財団の記録上死亡したことが決定しています。今後、SCP-856-JPに関する研究と調査活動は継続されますが、一部制限がかかります。(制限に関する内容はプロトコル856-JP-Worldを参照してください。また、新たなエージェントがSCP-856-JPの担当に割り当てられた場合、担当研究者は制限に関する資料を該当するエージェントに配布してください。)
以下はエージェント・エドモンドからの報告の抜粋です。全ての資料を閲覧する場合は梁野博士の許可を得た上でサイト-076資料室に報告してください。なお、抜粋された報告書の内容は主にSCP-856-JP内で新たな発見がなされた報告および最終報告を記載しており、研究資料の保存を目的とした通信班の申請によりほぼ内容の編集は行っていません。

エージェント・エドモンドの報告記録の抜粋

<録音開始, [(20██/3/██)天候:雨 状況:機動部隊による第10回目の捜索活動中 ]>

エージェント・エドモンド: こちらエージェント・エドモンド。聞こえる?

[雨音が交じる]

エージェント・ベルナドット: こちらエージェント・ベルナドット! おい、エド! お前今何処にいる!!

エージェント・エドモンド: いやあ、何処と言われても。皆目見当がつかなくて[小さな笑い声]。

エージェント・ベルナドット: 笑い事じゃねえだろ!! 兎に角、今いる場所の特徴を言え! すぐに捜索隊に連絡して

エージェント・エドモンド: いや、多分それは無理だ。

エージェント・ベルナドット: え!? なんでだよ!

[暫くの間沈黙]

エージェント・ベルナドット:おい、どうしたんだよ、黙りこくって

エージェント・エドモンド: いや、実を言うと、この期間、僕はあのオブジェクトを捕獲した場所から殆ど動いていないんだ。多少、山下の町の方へは降りて行ったりはしたけど、あれから誰とも会わなくて。それに、いろいろ試したんだけど、どこの電話を使っても無線を使っても、誰とも通信が出来ないんだ。やっとこの携帯で君の携帯とを繋げられるってことがわかったところなんだよ。

エージェント・ベルナドット: 動いてないって、いや、そもそも通信できないって、なんで

エージェント・エドモンド: いやあ、本当に動いていないんだよ? 君がこの前、任務のために罠を仕掛けた場所に今立っているんだけど、誰にも会わないんだ。君の言っている捜索隊の人たちにも、街の住人にも。何を言ってるのかさっぱりだろうけど、本当に。人っ子一人いないんだ。民家の中を探索してみたけど、恐らく既存の家具が置かれているだけで、生活の痕跡もない。人間なんて、この期間に誰一人として会っていないんだよ。

エージェント・ベルナドット: [沈黙]そんな馬鹿な話あるかよ。そんなの、

エージェント・エドモンド: それに、もう一つ不可解なことがある。

エージェント・ベルナドット: もう一つ?

エージェント・エドモンド: うん。ずっと夕焼けなんだ。ずっと。

エージェント・ベルナドット: [沈黙]ずっと?

エージェント・エドモンド: 僕の今所持している腕時計の時間が正しければ、そう、僕がそっちからいなくなってからずっとだね。うん。間違いない。大体の時間で10日は経っていることになるのかな? あいにく日付までは分からなくて。途中で見つけた公園の時計も、僕が失踪したであろう時間で止まっているし、雑貨屋の中で見つけたカレンダーも、僕が失踪したであろう日付から白紙だったし。

エージェント・ベルナドット: それって

エージェント・エドモンド: うん。普通じゃありえないことだ。つまり、そういうことだろうね。兎に角、こうなった以上、君は僕との会話の記録を本部に提出して、それから新たなSCPオブジェクトの申請を行ってくれ。多分、僕は相当な期間こっちにいなくちゃいけなくなると思うから。あと、連絡はどういうわけか君の携帯としか出来ないみたいだから、恐らく定期報告の義務が僕と君、もしくは担当の研究員に課せられると思う。だから、そこのところは担当になった博士たちと相談した上で

エージェント・ベルナドット: [沈黙]

エージェント・エドモンド: ん? ねえ。ベル? 聞こえてる? 電波が悪いのかな。なんて、そもそも繋がること自体が奇跡みたいなもんか。[笑い声]

エージェント・ベルナドット: なんで、

エージェント・エドモンド: え。

エージェント・ベルナドット: なんで[啜り泣く]なんで、そんなに落ち着いていられるんだよ。なんで、そんな状況でいつも俺と話すみたいな会話が出来んだよ!!

エージェント・エドモンド: え、いや、そう言われても。

エージェント・ベルナドット: お前はいつもそうだよ!! どんな時でもすました態度でいやがって!たまには人間らしく、怖がったりだとか、動揺したりだとか、何でもいいから、生身の人間らしい行動をとってみやがれ!! そんな[息が詰まる]そんな、報告義務だとか、オブジェクトの申請だとか、そんな事務的なことじゃなくてよう! もっと、もっと他に言うことがよう!!俺が[沈黙]俺がこの10日の間、どんな気持ちでいたか分かってんのか!? 大事な相棒が、いきなり目の前で消えて、捜しても、捜しても捜してどこにもいなくて。それで、やっと、やっと連絡がついたと思ったらこれかよ! ふざけんな! 何冷静になって行動してんだよ! 何仕事の話なんかしてんだよ! 何もう諦めたみたいなこと言ってんだよ!! なんで[啜り泣く]なんで!

エージェント・エドモンド: エージェント・ベルナドット。

エージェント・ベルナドット: なんで! どうして!

エージェント・エドモンド: エージェント・ベルナドット!!

[お互い無言になる]

エージェント・エドモンド: 新たなオブジェクトを発見した以上、我々には財団の職員として、この現象と実態を明確に調査し、本部に報告する義務がある。そして、それは私がこのような状態に陥ってしまった時から、いや、我々が財団職員として就任した時から常に発生している。このような状況に置かれた時だからこそ、我々はより一層冷静に行動しなければならない。何よりも優先すべきは、10日ぶりの再会を喜び合うことでもなく、元の世界に帰れなくなってしまったことをお互いに嘆くことでもなく、このオブジェクトを収容するために尽力することだ。これは我々の、財団の職員としての我々に課せられてた責任だ。今、この場で、この状況で、財団の職員にあるまじき言動は言語道断。そのような失言、するべきではない!

エージェント・ベルナドット: [沈黙]

エージェント・エドモンド: 返事をしろ! エージェント・ベルナドット!!

エージェント・ベルナドット: ああ。[沈黙]ああ、分かっているよ。エージェント・エドモンド。今のは流石に失言だった。すまん。でも[沈黙]

エージェント・エドモンド: [沈黙]分かってくれたならいい。 [沈黙]取り敢えず、報告はしておいてくれ。そろそろ携帯の充電が切れそうなんだ。電気は通ってるみたいだから、今後も通話はできると思う。それじゃ。

<録音終了>

<録音開始, [(20██/5/1█)場所:サイト-086]>

エージェント・ベルナドット: もしもし、こちら通信担当のエージェント・ベルナドット。

エージェント・エドモンド: こちら、SCP-856-JP内部調査担当のエージェント・エドモンド。よかった通じた。どうやら僕の失踪地点の距離と携帯の電波の関係は度外視されているみたいだね。これも調査記録として残しておいてよ。

エージェント・ベルナドット: ああ。だが、私語は控えろ。この通信はあくまで報告書作成の為の記録だ。通信が遅れていたみたいだったが、何か問題でもあったのか。それと今言った失踪地点との距離についても報告しろ。

エージェント・エドモンド: あ、うん。ごめん。いや、それといった問題はない。気温も、時間帯も、太陽の位置も、前回報告した時の状態を維持し続けている。今回通信が遅れた理由は他にある。今、中国にいるんだ。まあ、こっちの世界の方のだけど。

エージェント・ベルナドット: 中国?

エージェント・エドモンド: 少し、この世界の規模について調べてみようと思ってね。一応、僕の失踪地点と酷似した場所は隈無く調べてみたんだけど、そこ以外の場所もどうやら再現、って言っていいのか分からないけど、存在しているぽかったから。だから、それが一体どこまでになるのかが気になって。案の定、海外まで行くことが出来たよ。

エージェント・ベルナドット: でも、どうやって

エージェント・エドモンド: 港に置いてあった漁船を借りたんだ。まるで新品みたいだったよ。誰にも使われた形跡はなかった。恐らく、停船されていた場所は、そっちの世界の場所と同じなんじゃないかな。多分、近々こっち側とそっちの類似点を調べていく必要がありそうだ。

エージェント・ベルナドット: 分かった。報告書に纏めておく。[ため息]それにしても、お前はいつも無茶ばかり。[咳払い]いや、何でもない。それで、その他に何か発見はあったか?

エージェント・エドモンド: 定期報告でも言ったとおり、こちらにある物や建物、その中にある家具や道具、それらに経年劣化の痕跡は一切見られない。本当に新品同然だ。傷ひとつ見当たらない。誰にも使われたことがない位に。途中、乗り捨ててあるように駐車されている車もあるんだけど、ガソリンも満タンで、走行距離もゼロのままだった。それに、僕がこうやってそっちに連絡出来ていることからも分かるように、電気系統もしっかりと機能しているみたいだ。

エージェント・ベルナドット: 発電所などは調べたのか?

エージェント・エドモンド: 勿論。███県から出て、その途中にあったダムに侵入してみた。

エージェント・ベルナドット: 結果は?

エージェント・エドモンド: 不思議なことに、一切機能していなかった。人がいた形跡も見当たらないし、設備も最近出来たものみたい綺麗だった。まあ、誰もいないみたいだった分、埃みたいなのは積もっていたけどね。けど、にも関わらず、そのダムから███km離れた変電施設には電気が通っていることが確認できた。この現象の境界も調べようかとも思ったけど、詳しく確認するための機材が今のところ入手出来ていないから、今後の課題になるだろう。

エージェント・ベルナドット: 分かった[鉛筆で何かを書く音]それと、エージェント・エドモンド。

エージェント・エドモンド: ん? 何?

エージェント・ベルナドット: 今までこの現象についての報告で、建造物、知的生命体の有無についての報告を主に行ってきたが、食い物はどうしてるんだ?

エージェント・エドモンド: 食い物?

エージェント・ベルナドット: ああ。担当の博士からの要望でそっちの食物、もしくは食品の有無についても報告してほしいと言われた。今後、そちら側に侵入することが出来た場合を考慮して、調査団を派遣する際になるべく多様な情報が必要だとのことだ。それで、どうなんだ。

エージェント・エドモンド: [沈黙]

エージェント・ベルナドット: おい。どうした。そっちにあるのか? まあ、あるにしても誰もいない店の中とかだろうから、別に店から盗んでるわけじゃないんだし

エージェント・エドモンド: 減らないんだ。

エージェント・ベルナドット: [沈黙]は?

エージェント・エドモンド: ここ数ヶ月、一切空腹という感覚を味わっていない。勿論、こっち側には食べ物なんて無い。スーパーの中も、デパートの食品売場にも、何もない。何故か、調理施設とか器具はそのまんま置いてあるんだけど、食べ物といえるものなんて一つも。畑だろう場所はあるけど、何も植えられていない。山菜も探してみた。駄目だったけど。でも、減らないんだ。一日中歩きまわっても、多少の疲労感はあるものの。減らないんだ。

エージェント・ベルナドット: [沈黙]それは、そっちの世界の影響か?

エージェント・エドモンド: 分からない。でも、僕は今そんな物を摂取しなくてもこうやって生命活動を維持し続けることができていることは確かだよ。

エージェント・ベルナドット: [沈黙]そうか。

エージェント・エドモンド: それとさ、そう思うと、最近こういった仮説が浮かんでくるんだ。

エージェント・ベルナドット: 仮説?

エージェント・エドモンド: うん。僕、いや僕という存在は、もうとっくの昔に終わっているんじゃないかってね。

エージェント・ベルナドット: [沈黙]終わっている?

エージェント・エドモンド: うん。そもそも、今、僕がいるこの世界というものが本当に存在しているのかすら、こうしていると怪しくなってくるよね。この携帯を通じて、唯一君と交信することが出来て、でも、もしかすると僕という存在はあの時から既に消滅していて、この君の携帯という物を通じて僕という存在をトレースした音声のみが流れてくる、そういった類のオブジェクトなのかもしれないし、もしかしたらこっちは死後の世界なのかもしれない。まあ、死後の世界なんて証明できるわけもないから、財団の職員としてはあまり言うべきことじゃないのかもしれないけど。どちらにしろ、僕という存在は完全に消えているということで共通している。まあ、この考え自体が正しいのかどうかなんて、今の僕にも君にも確かめることなんて出来ないんだけど、それもひとつの可能性としてあるんだよ。もしかしたら、君の携帯自体が何かしらの影響を受けていて、ただこういった音を発しているっていう

エージェント・ベルナドット: やめろよ。

エージェント・エドモンド: え。

エージェント・ベルナドット: そんな、話。するんじゃねえよ。[沈黙]そんな、くだらねえこと考えてる暇あったら、とっととこっちに戻ってくる方法を見つけろ。[沈黙]じゃねえと、俺が先にその方法を見つけて、直接お前の顔面を殴りに行ってやる。だから、

エージェント・エドモンド: だから、そんなこともう二度と言うなって?

[暫くの沈黙]

エージェント・エドモンド: わかったよ。もう言わない。約束する。絶対にここから帰ってくる。[笑い声]私語は慎めって、君が言ったのにね。これじゃあ、お偉いさんに怒られるね。

エージェント・ベルナドット: ああ。

エージェント・エドモンド: やっぱり君は熱いなあ。この職場じゃ確実に浮くよ。

エージェント・ベルナドット: だから、お前といつも一緒に、何年もやって来たんだろうが。

エージェント・エドモンド: お互い、浮いた物同士だもんね。そろそろ、新しい拠点を見つけなきゃ。落ち着いたらまた連絡する。じゃあ。

<録音終了>

<録音開始, [(20██/11/█)場所:サイト-076・第4会議室]>

エージェント・エドモンド: もしもし!? ベル!? すぐに知らせようと思ってたんだけど、安定して携帯を充電できる場所がなかなか見つからなくて! でも凄いものを見つけたんだ!

エージェント・ベルナドット: [沈黙]

エージェント・エドモンド: ん? どうしたの? ベル。

エージェント・ベルナドット: [沈黙]エージェント・エドモンド。今からSCP-856-JPに関する活動内容の報告を行う。いいか?。

エージェント・エドモンド: え、うん。別に問題ないよ?

エージェント・ベルナドット: エージェント・エドモンド。O5の決定により、本日付けでエージェント・エドモンドの救出作戦に関する計画の凍結準備、そして、SCP-856-JP内への侵入方法の調査活動に関する予算削減が決定した。侵入経路の捜索を担当していた機動部隊は全て撤退。担当エージェントを3名のみ指定し、今後彼らが調査を行う。SCP-856-JPの記録は担当研究者によって保管され、SCP-856-JPによる更なる影響が見られない限り、この状態を現在の収容状態として維持する。その為、エージェント・エドモンドをSCP-856-JPと同様のオブジェクトとして認識し、収容すること。以上だ。

エージェント・エドモンド: [沈黙]そうか。

エージェント・ベルナドット: 凍結準備と言っても、本部はほぼ全ての作業と人員の配置を取りやめる。凍結準備というものは建前であって、ほぼ、完全にお前の救出作戦は取り止めになっているも同然だ。すまん。俺の、俺の力不足だ。くそったれ。

エージェント・エドモンド: 良いよ。仕方がない。僕が消えてから、何年経ったっけ。

エージェント・ベルナドット: 言うな。考えたくもない。それに、これ以上話したって無駄だ。[沈黙]報告を続行する。建造物以外での発見はあったか?

エージェント・エドモンド: [沈黙]まあ、僕もそろそろだとは思っていたけどね。こんな、一エージェントに構っている時間なんて、財団からしたらただ時間を無駄にするだけだから。

エージェント・ベルナドット: おい。だから[咳払い]エージェント・エドモンド。私語を慎め。これはSCP-856-JPの公式の報告内容として

エージェント・エドモンド: 僕らがこうしている間にも、世界中で僕らが収容しなければならない新たなオブジェクトが発見され続けているんだ。今、一体何処にあるのか、どうやって入るのかも分からない場所なんかに金と労力を浪費するより、今、目の前にある確かな物を収容することの方が最優先事項だよ。多分、僕の任務は継続するんだろうけど、この世界の収容に関しては、もう財団の方も諦めてるのかな。[沈黙]仕方ないよ。これも、財団のエージェントとしての勤めさ。多分、そろそろ僕の家族にも、僕の死亡についての情報が流されてる頃じゃないかな。

エージェント・ベルナドット: [沈黙]エージェント・エドモンド。

エージェント・エドモンド: うん。ごめん。やっぱり、君と話してるとおもわず、あ。ごめん。

エージェント・ベルナドット: 兎に角、今は報告を行ってくれ。

エージェント・エドモンド: あ、うん! とうとう、こっちにしかない物を、つまり僕らの世界とこちら側の世界との相違点を見つけたんだ!

エージェント・ベルナドット: 分かった。兎に角、落ち着いて、丁寧に説明しろ。お前が興奮してたんじゃ、記録として成り立たなくなる。一体どんな違いがあった。

エージェント・エドモンド: うん。まあ、いや、どう表現すればいいのかわからない形をしてるんだけど、言ってしまえば何かしらの建造物だよ。でも、明らかに物理法則を無視している造りをしているのは確かだ。撮影して、そちらにそのデータを送信しようとしたんだが、何か強い電磁波か電波障害みたいのが発生しているらしく、なかなか出来ない。辛うじてそっちに電話をすることだけは出来たけど。しかし、これは大発見だ! こっちに来て、初めて 僕達の世界との相違点を見つけられた! もしかしたら、この世界について、更に何か分かるかもしれない! もう少しかかるかもしれないけど、これは大きな一歩だよ! あ、因みに、今いるところはアメリカのロサンゼルスで確か町の名前は[沈黙]ベル?

エージェント・ベルナドット: [沈黙]

エージェント・エドモンド: [沈黙]心配いらないよ。僕は大丈夫だから。

[しばらくお互いに黙る]

エージェント・ベルナドット: [沈黙]続けてくれ。

エージェント・エドモンド: [沈黙]うん。現在の場所は、アメリカのロサンゼルス。町の名前は███・█████だ。建造物の特徴は、全体的に流線型を維持している。表面は白く、大理石と似ているかもしれない。壁面表面への接触を試みた際、見た目とは裏腹に液体のような挙動をした。まあ、波立ったりとか、腕を潜らせることが出来た。その際、建造物の崩壊などは無く、今現在のその形を維持している。高さはおよそ20m。目測だからどこまで正確かは判断しにくいけど、後日機材を揃えて詳細な記録を報告するよ。それと、さっきも言ったけど、明らかに重力を無視した立ち方をしてるのは確かなんだ。どうやって地面から接地面が離れずに建っているのか検討もつかない。大体の情報は以上かな。

エージェント・ベルナドット: 分かった。報告書にまとめる。

エージェント・エドモンド: 了解。それじゃあ

エージェント・ベルナドット: なあ、エド。

エージェント・エドモンド: ん?

エージェント・ベルナドット: [沈黙]すまん。

<録音終了>

<録音開始, [(20██/4/2)場所:サイト-076]>

エージェント・ベルナドット: 今から、SCP-856-JPに関する定期報告を行う。こちら、担当のエージェント・ベルナドット。

エージェント・エドモンド: こちら、担当のエージェント・エドモンド。今いる場所は、地球上でのアフリカ大陸、ナイロビと同様の地点であると思われる。

エージェント・ベルナドット: 何か変化はあったか。

エージェント・エドモンド: いや、特には無いよ。気候も安定している。未だ知的生命体、および生物の発見には至っていない。

エージェント・ベルナドット: そうか。その他に報告することはあるか?

エージェント・エドモンド: もう、既に地球を一周しちゃったからねえ。もうこれといって、伝えることと言っても。今後、こちら側に何かしらの変化がない限り、無いだろうね。[沈黙]もう、何年も同じことをしてたら、適当にもなるさ。仕方ないよ。

[暫くの間沈黙]

エージェント・ベルナドット: これ以上報告内容がないのなら、これにて本日の報告を終了する。ご苦労だった。エージェント・エドモン

エージェント・エドモンド: ねえ。ベル。

エージェント・ベルナドット: [沈黙]どうした。

エージェント・エドモンド: ちょっとね。思うことがあるんだ。[沈黙]この世界。何かに似てる気がするんだよ。

エージェント・ベルナドット: [沈黙]似てる。

エージェント・エドモンド: うん。こう、あの夕焼けの世界をずっと眺めていると、何故か、凄い懐かしい気分になるんだ。

エージェント・ベルナドット: そうなのか。

エージェント・エドモンド: ねえ、ベル

エージェント・ベルナドット: [沈黙]

エージェント・エドモンド: ベル?

[暫くの間沈黙]

エージェント・ベルナドット: エド。もう、あまり、個人的な話はしないほうがいい。[沈黙]これ以上勝手に話し続ければ、監査の手が入って通信が終了させられる。それに、前、お前が言っていたように、この通信自体がオブジェクトなのではないかっていう風潮も広がりだした。下手をすると、この携帯電話自体を収容するハメになるかもしれん。そんな事になったら、俺は[沈黙]

エージェント・エドモンド: [小さい笑い声]財団の職員として、あるまじき言動だね。もし、そうなったらそうなっただよ。上の決定は絶対だ。

エージェント・ベルナドット: だから、エド。もう

エージェント・エドモンド: ベル。詩は、まだ書いてるのかい?

エージェント・ベルナドット: [沈黙]え?

エージェント・エドモンド: 書いてるか、どうか。それだけ応えてくれ。

エージェント・ベルナドット: [沈黙]いや、全然。

エージェント・エドモンド: どうして?

エージェント・ベルナドット: [沈黙]どうしても何も

エージェント・エドモンド: まだ、自分のキャラじゃないとか言ってるの? 君の詩はあんなに素晴らしいのに。僕は好きだよ? あれは皆傑作揃いだ。

エージェント・ベルナドット: [沈黙]

エージェント・エドモンド: ベル?

エージェント・ベルナドット: あんなもの書けたって。何も出来やしない。[沈黙]お前を、助けることも。何も。

[暫くの沈黙]

[雨音が交じる]

エージェント・エドモンド: あ、雨だ。

エージェント・ベルナドット: 何?

エージェント・エドモンド: [沈黙]そうか。

エージェント・ベルナドット: おい、どうしたエド、いや、エージェント・エドモンド。何が起きているのか報告しろ。

エージェント・エドモンド: だから、ここはいつもそうなんだね。

エージェント・ベルナドット: おい、何が起きてる!

エージェント・エドモンド: だから、僕らは通じ合えたんだ。

エージェント・ベルナドット: お前、何言って

エージェント・エドモンド: 今、僕は確信したよ。この世界が、何でこうも懐かしいのか。この世界が、何であの日の夕焼けのままで止まっているのか。

[ノイズが交じる]

エージェント・ベルナドット: おい、エージェント・エドモンド。それはどういうことだ。何がわかったっていうんだ。おい。エージェント・エドモンド。エド!

エージェント・エドモンド: やっぱり、僕は、消えてしまっていたのかな。ねえ、ベル。また、あの詩を書いてよ。僕、楽しみにしてるんだか

[通信が断絶する]

エージェント・ベルナドット: おい。おい、エド!! おい! 返事をしろ!! おい!! おい!!

<録音終了>

追記1: 20██/8/8、エージェント・ベルナドットの申請により、再度エージェント・エドモンドの失踪した地点を捜索した結果、エージェント・エドモンドの物と思われるバックパックが発見されました。遺留品の状態は極めて悪く、およそ████年以上経過していると思われます。現在、発見された遺留品はサイト-076の保管用ロッカー内にて管理されています。

追記2: エージェント・ベルナドットの個人で所有し、執筆していた詩集の中に、エージェント・ベルナドットとは異なる筆跡の文章が発見されました。調査の結果、エージェント・エドモンドの筆跡と一致。また、過去にエージェント・エドモンドが報告したSCP-856-JP内の様子とエージェント・ベルナドットの詩集の内容にいくつか類似する点が見られることが発覚し、現在、エージェント・ベルナドットの詩集を保管し調査を行っています。

これらの事象に伴い、エージェント・ベルナドットには尋問、精密検査、詩集の編集を行わせるなどの実験を行いましたが、異常性は認められませんでした。現在、エージェント・ベルナドットの身柄はサイト-███の通常隔離室にて拘束されています。

追加されていた文章

僕らはいつも一緒だった。
そして、僕は君の紡ぎだすあの言葉の世界が大好きだった。
君の生み出した、君の見ていた世界が、僕にはまるで大きな水晶を通して見た時のように、七色に輝いていた。
君は、自分のこの感性を自分で笑っていた。
男のくせに、こんなものばっかし書いてるなんて笑われてもしょうが無い、と。
だけど、僕はそうは思わない。
だって、君のこの世界はこんなにも美しいんだから。
だから、これからもこの世界を紡いでいって欲しい。
これは、君の世界だ。
僕は、君と共にずっと生きていくよ。
僕は、いつも、いつだって、君のそばにいるよ。

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