電源に接続したSCP-792-JP
アイテム番号: SCP-792-JP
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-792-JPはサイト-81██の標準的Safeクラス物品収容ロッカーへ、施錠された専用ケースに入れた状態で収容されます。
SCP-792-JPを用いた実験を行う際はその内容を担当博士に事前報告し、承認を得た上で行ってください。実験に使用されたDクラス職員に関しては、任期が終了するまで定期的な聞き取り調査が行われます。
説明: SCP-792-JPは、███████社製"██████████(カラー:ホワイト)"に酷似したLED机上照明であり、後述する異常性を除いた主な差異として、製品型番などの表記が一切為されていない事、アームの可動域が大幅に広くなっている事が挙げられます。
通常製品と同様に、プラグを電源に接続してスイッチを切り替えることでLEDが点灯します。基本的には通常製品と同様に白色の発光が見られますが、LEDの光が届く中の一定範囲(範囲角度150°・LEDを中心に約6m、以下効果範囲と呼称)の中に一人の人間がいた場合、その光はやや青みがかった色に変わります。
効果範囲内にいる人間(以下被験者と呼称)は外部からの刺激に対しての反応が鈍くなり、効果範囲から外されるか照明が切られるまで放心状態が続きます。その状態の被験者に対して、任意の人間の過去の体験(以下、SCP-792-JP-1と指定)について話す事で SCP-792-JPの異常性が発揮されます。SCP-792-JP-1について一定の詳細な情報が語られた時点で異常性が発揮されると考えられていますが、その正確な基準は不明です。
SCP-792-JPの異常性が発揮された後、被験者はSCP-792-JP-1が自分の記憶であると思い込むようになり、それに付随して語られていないはずの情報を認識します。
また、その後被験者の本来の過去の記憶は、SCP-792-JP-1の時期の前後から徐々に喪失します。記憶喪失の速度は遅く、一ヶ月が経過した被験者は自発的に記憶の喪失に気づく事はありませんでした。但し、SCP-792-JP-1に関して何らかの矛盾を指摘した場合、記憶の喪失は急速に行われ、二週間後にSCP-792-JP-1を除く自分の記憶を全て失いました。
この時、SCP-792-JP-1の本来の体験者、及びそれを被験者に語った人間に対する影響は確認されませんでした。
実験の結果、SCP-792-JPによって任意の人間に特定の技能を習得させることは難しく、また、誰の体験にも基づかない架空の体験談をSCP-792-JP-1として伝えた場合はSCP-792-JPの異常性は発揮されない事、最終的に死亡した人間の記録をSCP-792-JP-1として伝えた場合は被験者は死亡することが判明しています。
SCP-792-JPは19██/██/██、██県警察███警察署に潜入していたエージェントが刑事部捜査第一課内で不審な噂を耳にしたことから、███警察署内第5取調室より回収しました。第5取調室のみ天井の蛍光灯が切れて交換されないまま放置されており、照明としてSCP-792-JPが使用されていたものと考えられます。
███警察署内の備品購入履歴を調査しましたが、記録が一部消失しており、SCP-792-JPの由来は不明です。
刑事部捜査第一課および留置場管理課を中心として、"第5取調室で取り調べを受けた容疑者は従順になり、自身の犯行を認める"という一定の認識が持たれており、使用される頻度は少なかったとされています。一部の署員の判断によって第5取調室が使用されることになっていたと見られていますが、SCP-792-JPの性質を知っている署員がどれだけいたのかは正確には判明していません。
また過去20年間に、捜査第一課および関係する部署の中で、記憶障害による退職者が█人発生しています。
回収後、SCP-792-JPの性質を十分に認識していたと見られる████課長補佐にインタビューを行いました。
インタビューログ - SCP-792-JP-001
対象: ████課長補佐
インタビュアー: 谷森研究員<録音開始, [19██/██/██]>
谷森研究員: 貴方がたは、SCP-792-JP......あの異常な卓上照明の性質について知っていたのですか?
████課長補佐: はい、私たちに必要な範囲の知識は、前任者から話を聞いていました。
谷森研究員: それで、容疑者に対して取り調べを行う時に使っていたのですね?████課長補佐: そうですね。あれがあると、手間が省けます。できるだけ面倒は無い方が良いので。
谷森研究員: 貴方は、それが無実の人間を陥れる事だと理解していますか?[4秒間沈黙]
[████課長補佐のため息]
████課長補佐: ええ、ええ。だから何ですか。無実であっても、皆無害ではなかった。しかるべき処置をしたまでです。
████課長補佐: 隔離すべき人間を隔離した。治安を保つとはそういう事です。
[11秒間沈黙]
████課長補佐: で、あの照明はもう戻ってこないわけですか。谷森研究員: 当然です。あのような存在を隔離するのが我々の任務です。
████課長補佐: では、今後はあの照明無しでやるしかないですね。あれ無しだと手間がかかりますが。
████課長補佐: そちらの任務は異常な物品の隔離でしたよね。もうこの場所にそのような物はありませんよ。
<記録終了>
実験中、一人のDクラスがSCP-792-JPを見た事があると発言しました。そのDクラス職員について逮捕経緯の調査が行われた結果、当該Dクラス職員は██県警察によって逮捕されていた事が判明しました。当該Dクラス職員の犯行についての立証は自供を中心とした根拠によって行われていましたが、内容に不審な点は見当たりませんでした。しかし、捜査記録を調査した所、責任者として現████課長補佐の名前が表記されていました。
複数の署員に対して尋問を行った結果、以前より解決困難となった事件に対しSCP-792-JPを用いて容疑者の記憶に干渉したうえで自白させていた事は明らかになりましたが、オブジェクトの由来については退職済みの職員や外部の組織への言及もあり明確にはならず、現在も調査中です。また、過去にSCP-792-JPの影響により逮捕へと至った人物を調査した結果、その中からDクラス職員として財団に雇用された人物が██名存在する事が判明しました。その内██名は既に終了しており、生存中の当該Dクラスに対しての処遇については保留とされています。
███警察署に対する潜入捜査を続行した結果、犯行を否認していた容疑者が大人しく犯行を認めた事例がSCP-792-JP収容後も引き続き確認された事からSCP-792-JPの他個体の存在が疑われました。しかし、これらは容疑者に対し違法な行為を含む取り調べが長期間行われた事による精神の摩耗によるものであり、財団の収容対象となる異常なオブジェクトの存在は確認できませんでした。