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⚠️ コンテンツ警告: この記事には自傷行為およびボディホラーの描写が含まれます。
タイトル: SCP-7797 我が眼は視ている
翻訳責任者: Chuuka_Nabe_Charhans Chuuka_Nabe_Charhans
翻訳年: 2024
著作権者: DAViBOI DAViBOI
原題: SCPー7797 My Eyes Shall Watch
作成年: 2022
初訳時参照リビジョン: 13
元記事リンク: https://scp-wiki.wikidot.com/scp-7797
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米国、バージニア州シャーロッツビルに出現したSCPー7797実例
特別収容プロトコル
インシデント7797-Aおよび7797-B発生後、SCP-7797に暴露した経験のあるすべての民間人および財団職員はその名前と現住地を暗号化された文書に記録されています。記録にはレベル5セキュリティクリアランスを持つ財団職員のみがアクセスできます。
専門機動部隊カイ-43 ("フォー・アイズ")はSCP-7797の常設任務部隊として、SCP-7797実例の出現場所の特定と封じ込めを担当します。カイ-43の監視部門はSCP-7797実例出現の潜在的証拠を監視し、出現の大まかな時間と出現場所を算出します。実例が出現しその位置が特定された場合、直ちに手順7797-ホルスが実施されます。
概要: 手順7797-ホルスは、民間人の被曝を最小限に抑えながらSCP-7797を封じ込め/無力化するために指定された手順であり、カイ-43の隊員のみによって実行されます。手順7797ーホルスは、以下の場合に直ちに開始されなければなりません。
- SCP‐7797実例が確認された場合。
- 実例の大まかな位置が特定された場合。
実行手順: SCP-7797実例の大まかな位置が特定されると、カイ-43の現場部門はその無力化のため現場に向かいます。その間実例の正確な位置を特定するために空中からドローンによる監視を行い、発見次第、地方自治体による保守整備を装って実例の周囲に境界線を設定してください。実例の物質によっては、除去のために工業用の塗料剥離剤または高圧洗浄機が使用されます。除去が不可能な場合には、実例の描かれた表面を破壊してください。
SCP-7797実例が除去され次第、医療記録を追跡してSCP-7797の影響を受けている、あるいは以前受けていた人物を特定してください。特定された人物は記録され、クラスB記憶処理剤を投与されます。
補遺: インシデント7797-B発生後の、将来的なインシデントの発生を防止するため、一般市民が大量に暴露したり、実例の無力化が困難であったりする状況に対する緊急対応手順ができるだけ早く作成され、実行されなければなりません。
説明
SCP-7797は様式化された目のような外見をとるセルリアン-シラキュースクラス認識災害です。そのデザインは、既知のいかなる象形文字や歴史的な図柄とも一致しません。 SCP-7797は落書き、紙への描画、絵画など、様々な視覚的創作形態をとることができ、アクリル/工業用塗料、ペン、色鉛筆、体液など、既知の全ての実例は様々な色合いの赤色で描かれています。
またSCP-7797は自己複製が可能であり、自身と同様の実例を世界各地に生成することができます。 現在の理解では、SCP-7797は暴露した対象の潜在意識に影響を与え、無意識のうちに実例を作成させることで複製を行います。この複製体に関する研究は現在進行中です。 SCP-7797実例を再現する財団の試みは失敗に終わっており、人工的にデザインを複製した場合も、通常SCP-7977実例に見られる異常性は一切発現しませんでした。
SCP-7797の主要な異常性は、SCP-7797実例が直接視認された場合に発現します。視認した人物はまず短いめまいのような症状を訴え、それが落ち着くとSCP-7797に「感染」します。SCP-7797に感染した人物は一連の異常な症状や影響に苦しみ始め、これらは数日間から数週間続きます。この症状の程度には個人差があり、潜在的な影響を予測したり予防したりする方法は発見されていません。また、追加調査により、SCP-7797に感染した経験のある人物は、SCP-7797実例を視認しても再び感染することはないことが判明しています。いかなる既知の医薬品や治療法でも、SCP-7797の影響を軽減することには成功していません。
補遺
暴露記録SCP-7797:
以下はSCP-7797に暴露し、検査対象となった一連の人物の記録です。 暴露が確認された直後、対象は最寄りの財団サイトに搬送され、症状が見られなくなるまで標準収容セルで監視を受けました。
暴露記録SCP-7797-1
対象: アドナン・パテル、51歳男性
結果: 暴露後、対象は体調不良を訴え、100.1°F(約37.8°C)の発熱が数日間続いた。
備考: 対象は数日後通常の健康状態に戻ったが、虹彩の赤色への変色が確認された。対象は記憶処理を受けたのち元の居住地に戻された。
暴露記録SCP-7797-2
対象: スズ・ヨキコ、11歳女性
結果: 暴露後、対象は疲労感と鼻づまりを訴え、インフルエンザと同様の症状であると述べた。
備考: 回復に要した時間や虹彩の変色を含め、対象は記録1と同様の回復を見せたが、影響は比較的軽微であった。検査を受けた全ての対象には様々な程度の虹彩の変色が見られており、この知見を利用してSCP-7797の感染者を特定する研究が現在進行中である。対象は記憶処理を受けたのち、元の居住地に戻された。
暴露記録SCPー7797-3
対象: ブレット・フォスター、39歳男性
結果: SCPー7797実例を視認後、対象は短期間の不眠症に悩まされるようになり、睡眠や長時間の休息を取ることもできなくなったと報告した。また、対象はしばしばパラノイア的傾向を示し、収容セルに入室する職員に対して敵対的反応を見せるようになった。対象は睡眠不足のためにさらなる精神障害に苦しみ続け、会話を試みた職員を無視したり、支離滅裂な言葉を発したり、暴行を加えようとしたりした。
備考: 対象は約1ヶ月後に回復し、これまでの記録と同様に虹彩の変色を示した。対象は、SCPー7797の影響下にあった間の出来事を全く記憶していないと主張している。対象は記憶処理を受けたのち、元の居住地に戻された。
更なるインタビューの結果、SCPー7797への暴露後、対象は自身の経歴とは無関係な記憶を有していることが判明した。例えば対象は、大学への在籍経験がないにもかかわらず、マギル大学で生物学を専攻していた経験があると主張した。その後テストを受験させたところ、対象は確かに大学卒業程度の生物学の知識を有していた。この現象についての調査は現在進行中である。
暴露記録SCP-7797-4
対象: マイケル・ハリソン、44歳男性
結果: 対象は3週間にわたって極度の疲労、筋肉痛および不眠症に悩まされ、心身の健康度が大きく低下した。また対象は幻覚症状を発症し、「脈打つ塊」や「血走った目」といった不穏な幻像を見たり、人の声のような幻聴を聞いたと報告した。さらに対象は繰り返し、爪や[編集済]を用いて机への描画を試みていた。
複数色のペンや紙などの描画に十分な画材が与えられると、対象は以下のように描画した。
IMG_0217.jpegこの紙は、認識災害の暴露源となる可能性があったためまもなく破棄された。また、ペンは対象が自身の目の[編集済]を試みた後回収された。
備考: 対象は最終的に2週間で回復したものの、記録3と同様に感染中の記憶を失っており、特に幻覚や上記の描画について一切記憶していなかった。対象は記憶処理を受けたのち、元の居住地に戻された。
暴露記録SCP-7797ー5
対象: キャリー・カトリ、26歳女性
結果: 対象は初期から極度の偏頭痛と吐き気に苦しみ、強烈な幻覚とパラノイア的傾向を示した。さらに後期には対象は激しく嘔吐し、不明な黒色の有機物を頻繁に排出した。対象は顔面の開口部から出血し、強い痛みと皮膚の変色を訴えた。
備考: 対象は失血により死亡。これがSCPー7797によって引き起こされた初めての重篤な異常症状の例、および死亡例である。
暴露記録SCP-7797ー6
対象: カルロス・ゴンザレス、31歳男性
結果: 対象ははじめ息切れと微熱の症状を発し、睡眠が困難になった。精神的異常は確認されなかったが、しばしば一過性黒内障に悩まされた。対象の症状は徐々に悪化していき、初期症状が深刻になるとともに胸痛や突発的な咳の発作もみられるようになった。
備考: 対象は急性心不全で死亡。対象に心臓の既往症は確認されていない。
暴露記録SCP-7797ー7
対象: モリー・カーペンター、19歳女性
結果: 対象に身体的な症状はみられなかったが、職員との会話を拒否したり、支離滅裂な独り言を発するなどのパラノイア的・精神病的傾向を示した。また、対象は睡眠不足で苦しんでいるにもかかわらず、不自然なほどの長期間、休息をとることを拒否した。
備考: 対象の症状は3週間後に回復し、記録3,4と同様の記憶喪失がみられた。インタビューの結果、対象は以前有していなかった[データ削除済]の知識を有していた。Cクラス記憶処理剤がインタビューの目撃者全員に投与されたが、対象の[データ削除済]に関する記憶は消去できなかった。
その後対象は終了された。
インシデント記録SCP-7797:
以下はSCPー7797に関する出来事を記録したものであり、それぞれインシデント7797ーAとインシデント7797ーBに分類されています。
警告:
インシデント記録7797ーAは、レベル5セキュリティクリアランスを持つ財団職員のみが閲覧できます。許可なきアクセスの試みは懲戒処分の対象になります。
認証情報を確認中…
…
認証されました。アクセス許可
日付: 20██/08/17
場所: イングランド、リヴァプール
概要: カイ-43所属エージェントは、企業が保有するビルの裏側壁面にSCP-7797実例を作成する人物を映した、監視カメラの映像を復元しました。その後当該人物はリヴァプール在住の26歳男性、ウォルター・ヴォーンであると判明し、即座に財団エージェントによって拘束され尋問を受けました。以下はその記録です。
インタビューログ:
対象者: ウォルター・ヴォーン
インタビュアー: ジェベダイア・ベインズワース博士、財団C.I.S(認識災害識別・抑制部門)研究員
前文: 対象は発見直後に一時的に鎮静化され、財団セキュリティ施設に移送された。対象は拘束され、インタビュー室00-31-Bで尋問を受けた。
<記録開始>
ヴォーン: 俺は一体どこにいるんだ?
ベインズワース博士(以下、博士): 落ち着いてください。あなたは今安全な場所にいます。我々のインタビューに協力してくれれば、あなたの助けになるでしょう。
ヴォーン: 助けになるだって?お前らは俺を薬漬けにして、訳の分かんねえ場所に引きずり込んだんじゃねえか!俺にだって権利があるだろうがよ!
博士: いいや、ここでは違います。
ヴォーン: (少しの沈黙。) 俺は...じゃあなんだ?俺を殺すってのか?
博士: 言った通り、ただインタビューをしたいだけです。あなたの頭を撃ち抜くだけなら、わざわざこんな場所に連れてくるのは勿体無いでしょう。私はあなたをこれ以上引き留めたくもありませんし、インタビューが終われば普通の生活に戻してあげられます。あなたが嘘を吐かなければね。
ヴォーン: へえ、そりゃ素晴らしいことじゃねえか。答えなかったらどうなるんだ?
博士: (ため息) あなたは誤解している。この尋問は必要なんじゃなく、あなたに与えられた特権なんです。我々が知りたいことを聞き出すにはもっと効率的な方法があるけれども、それを使うには痛みが伴う。こうしてインタビューしているのも親切心なんです。
ヴォーン: 畜生。分かった、分かったよ。答えたらどうなる?解放してくれるんだよな?
博士: 先程言ったように、それは貴方の答え次第です。
ヴォーン: それは...まあいいよ、いいよ。そうだな、とっととインタビューを始めてくれないか?そうすりゃ帰れるんだ。
博士: 結構。正直に答えさえすれば、あなたは解放されますからね。 (咳払い) では、あなたの名前は?
ヴォーン: 本気で言ってる?もう知ってんじゃねえのか?
博士: 形式的なものです。
ヴォーン: まあ、そうなんだろうけど、お前らはもう俺のことを全部知ってんだろ?名前、誕生日、今日の朝食ー
博士: 質問に答えてください。
ヴォーン: ごめん。ウォルターだ。ウォルター・ヴォーン。引っ掛けのつもりだったんだ。今日の朝は何も食べてねえ。
博士: 年齢は?
ヴォーン: 26。
博士: さて、ヴォーンさん、あなたは複数の破壊行為の罪に問われていますね。
ヴォーン: あ、ああ。
博士: 何件ですか?
ヴォーン: なんてこった、見当もつかん。ええと...そうだな...5件か?
博士: 6件です。
ヴォーン: はあ、やっぱ理解できねえよ。なんで既に答えが分かってる質問をするんだ。
博士: 形式的なものだと言ったでしょう。では次の質問。8月17日の午後5時45分、あなたは何をしていましたか?
ヴォーン: それは...
博士: 木曜日です。
ヴォーン: あー、全然分かんねえな。一応、サブウェイで昼飯を食ったことは覚えてる。
博士: (博士は、ヴォーンが以前起こした破壊行為の画像を提示する。) これに見覚えは?
ヴォーン: いいや、ない。
博士: 嘘を吐かないでください、ヴォーンさん。
ヴォーン: 分かったよ、うんうん、覚えてる。ちょっと前に作ったんだ。口から火を噴き出したり色々、イカしたタコのつもりだった。いい感じだろ。
博士: ふむふむ。(博士はSCP-7797の画像を提示する。) ではこれは?
ヴォーン: ないね。
博士: さっきも言ったけど、嘘を吐かないでください。下手くそなんだから。
ヴォーン: 本気だよ、こんなの一度も見たことねえ!そりゃ目を見たことはあるけど、こんな感じのを見たことはねえよ。
博士: では、あなたはこれを知らないということでいいですね?
ヴォーン: ああ、知らん。
博士: (博士はノートパソコンを取り出し、SCPー7797実例を作成するヴォーンの映像を再生する。) では、これは何ですか?
ヴォーン: これは...俺?
博士: そうです。先週の木曜日のね。
ヴォーン: なんてこった、覚えてねえぞ。
博士: 顔のパターンが一致している。間違いなくこれはあなたです。目薬でもさして見てみますか?
ヴォーン: (ヴォーンは目を擦っている。) いいや、大丈夫。アレルギーかなんかだ。ここに置いてある変な化学物質のせいだろう。
博士: さて、本題に戻りましょう。あなたは否定していますが、これを描いたのは確かにあなただった。なぜこれを描いたのか、説明していただかないと。
ヴォーン: 言っただろ!おれは描いてなんかいねえ!それは誰か他の奴だ!
博士: ...ウォルター、私はあなたを助けたいんだ。でもそれは簡単な話じゃない。これは国際安全保障に関わる問題で、あなたにはー
ヴォーン: だから描いてねえっつってんだろ!分かんねえか?!その動画がどっから来たもんかは知らねえが、どうせどっかのバカがフォトショで俺を嵌めようとしたんだ。もしかしたら記憶喪失なのかもしれんが、俺がそんなものを描いた覚えはない。どうせこんなの大した問題じゃねえだろ?ただの落書きなんだから!
博士: ...この件について、何もしていないと誓えますか?
ヴォーン: 誓えるとも!
博士: (しばらく間を置いて) オーケイ、分かった。君を信用するよ、ウォルター。けれども、この証拠を無視することは難しい。この人物が君に似ていることは分かってくれるね?
ヴォーン: そうだな、こいつは確かに俺に似てる。さっきも言ったがフォトショか何かかもしれねえ。クソ、目が痛い...
博士: 本当に目薬はいらないか?
ヴォーン: 正直、ちょっと欲しいかもな。
博士: 分かった、では少し待っていてくれ。頼んでくるよ。
ヴォーン: ああ、どうせ俺はどこにもーうわっ!!!
博士: (博士はすぐに振り向く。) 何が起きた?大丈夫か?
ヴォーン: (ヴォーンが椅子の上で痙攣し始める。眼球から血液と思われる液体が漏れ出す。) 畜生、畜生!俺に何をした?!
博士: (常駐の警備員に向けて) 医療班をここに、今すぐ! (博士はヴォーンに向き直る。) ウォルター、大丈夫か?痛いのか?
ヴォーン: (ヴォーンは叫び続ける。) 畜生、目が、目が焼ける... (ヴォーンは激しく咳き込み始める。目からは血が漏れ続けている。) 神よ、何が起きてるんだ... (ヴォーンは前かがみになり、黒色の物質を吐き出す。これは後にヴォーン自身のDNAと一致することが確認された。) おお神よ、お願いだ、俺は...俺は... (ヴォーンは突然痙攣を止め、博士の方を見上げる。彼の強膜と瞳孔は血液で満たされているように見える。)
博士: ヴ...ヴォーンさん?大丈夫ですか?
ヴォーン: … (ヴォーンは黙っている。)
博士: ヴォーンさん!!
ヴォーン: ここは何処だ? (ヴォーンの声と抑揚は、明らかに以前と異なっている。)
博士: な、何だって?
ヴォーン: ここは何処かと聞いている。
博士: 最初に言っただろう。君は安全な施設にいる。今何がー
ヴォーン: 檻はどうでもいい。放せ。
博士: それはできない。お前は誰だ?
ヴォーン: 我を拘束しようとしたのか?ここは何だ?
博士: まずは答えろ、ヴォーンに一体何をしたんだ!
ヴォーン: お前...お前は我の知識を制限している。
博士: 何...?あ、ああそうだ!お前は彼に何をした!
ヴォーン: 誰だって?
博士: ウォルター・ヴォーン、お前が...中にいる...人間だ!
ヴォーン: この器のことか?
博士: 神よ、私は...
ヴォーン: (ヴォーンは周囲を見渡し、博士の上着に描かれた財団のロゴを強く見定める。) お前達がそれか。
博士: (博士はヴォーンから後退りし始める。) ...何だって?
ヴォーン: お前達が王の拡大を妨げている。
博士: ...王?王だと?お前は誰なんだ?!
ヴォーン: 「現実を砕く者」。「緋き苦痛の王」。
(この言葉を受けて、O5評議会は直ちに警備員に尋問室への警備を命じ、封鎖を開始する。)
博士: 私はそれが誰なのか知らない。
ヴォーン: ならば、お前はお前の上司よりもずっと、取るに足らない存在だということだ。
博士: どうしてお前は私の上司を知っているんだ?お前は一体誰なんだ?
ヴォーン: お前には理解できないだろうし、説明する気もない。お前の意識は限られているのだ、ジェべダイア。我は全てを視る。
博士: (博士は後退りを続ける。ヴォーンは机に座っている。) 何...ど、どうやって私の名前を?
ヴォーン: お前は...自分達が、人々を漠然とした脅威から守る救世主なのだと信じているな。だがそれは間違っている。
博士: ち、違う...我々は人類を守っているんだ...どうしてお前にそんなことが分かる?
ヴォーン: (ヴォーンは甲高い悲鳴を上げ、博士はたじろぐ。音声をスロー再生すると、歪ながら笑い声に似た音であると分かる。) 思い上がるな。
博士: (博士は部屋の反対側の壁に手を伸ばし、ドアを開こうとする。) なんだ...なんで開かないんだ、畜生、畜生... (博士はドアを開こうとする。)
キーパッド端末: 情報災害拡散の可能性があるため、現在この施設は封鎖されています。
博士: ダメだ、ダメだ、ダメだ...畜生!お前は一体何を求めてるんだ!
ヴォーン: 知識だ。
博士: 何だって?何故だ?SCP-7797と何の関係があるんだ?
ヴォーン: 我が眼は可能にする。視ることを。経験することを。学ぶことを。我は去ってから、多くのものを失った。そして今、我は弱い。失ったものを取り戻すため、刻印された者達はよく仕えるだろう...
博士: 刻印だと?刻印された者達とは誰だ?待て...畜生...感染者たちのことか?彼らに何をする気だ?
ヴォーン: 今の所、あれは意味ある変化をもたらすほど多くはないが...すぐに次の用途に供されるだろう。
博士: 用途だと?お前は一体何をするつもりなんだ?!
ヴォーン: (ヴォーンは少し首を傾げる。) 長くなりすぎたな。我を止めることは叶わない。望むなら我を打ち負かしてみるがいい。我の統率は揺るがない。お前達の時代はもう終わる。そして我は視る。(ヴォーンは椅子から立ち上がる。)
博士: (博士はドアを叩く。) 誰かいないか!誰か!閉じ込められてるんだ! (博士はヴォーンに向き直る。)
ヴォーン: (ヴォーンは少しの間の後、繰り返し頭を机に打ち付け始める。)
博士: ああ...なんなんだ、畜生! (博士はヴォーンに駆け寄り、拘束しようとする。) ウォルター!やめろ!
(博士はヴォーンを拘束することができず、ヴォーンは頭を打ち付け続ける。額には大きなへこみができ、顔面からは大量の出血がみられる。警備員がドアの外に到着するが、中に入ることはできない。)
博士: この野郎、自殺しようとしてやがる!ウォルター、やめろ!!!
(博士は拘束を試み続けるが、ほとんど効果がない。ヴォーンの動きは鈍くなっていき、やがて地面に倒れる。机と床には血溜まりができている。)
博士: クソが。
(施設の封鎖は解除され、医療班が博士を護衛するため入室する。)
<[記録終了]>
終了報告: ウォルター・ヴォーンは、自傷による頭部外傷のため死亡した。関係者全員にはクラスA記憶処理剤が施され、その後インシデント記録7797-Aはレベル5セキュリティクリアランスに再分類された。
日付: 20██/10/07
場所: 米国、ニューヨーク州タイムズスクエア
概要: 10月7日、タイムズスクエアの住宅ビル側面に大きさ約21mのSCP-7797実例が発見された。監視カメラは発見前日の夜に無力化されており、実例の作成を目撃した人物も確認されていないため、当該実例がどのようにして作成されたのかは不明である。財団職員が警報を発した時点で実例の発見からは35分が経過しており、その間も当該実例は異常性を発揮していたものと考えられる。カイー43が直ちに派遣され実例の除去と集団検疫を行ったが、除去には約1時間と、他複数の機動部隊による協力を必要とした。
当該実例による一般市民のSCPー7797への暴露は約5000件確認されており、財団の認知していない暴露者も10000人以上存在すると推定されている。インシデント7797ーB発生後、SCPー7797の撹乱クラスはKENEQからEKHIに再分類された。
認証情報を確認中...
…
認証されました。提言APWー7797-499にアクセス
発案者: O5-11
説明: 皆、例のデータを見ただろう。これは否定しても仕方がない。8ヶ月前にカイー43が組織されたとき、隊員の中には仕事が簡単すぎると不満を漏らす者もいた。出動はあって月に1、2回だったし、その多くは路地裏や輸送用コンテナの側面に隠れて目立たなかった。
しかし今、インシデントが起きてからは、誰も文句を言わない。
実例はいたるところに現れ、言葉を選ばず言うなら、より攻撃的になっている。建物の上にも、家の側面にも。学校の裏紙に出てきたこともあった。非常に憂慮すべき状況だ。インシデント後は月に6、7件の実例が見つかるようになり、12月には15件も見つかった。この傾向は更に悪化を続けている。暴露者の致死率も、8月には7%程度だったのが今では16%だ。事態が深刻化の一途を辿っている以上、我々には「壊された虚構」シナリオの宣言を真剣に検討すべき時が迫っているだろう。
我々はこの一連の事象の背後に、ほとんど未知の存在が関わっていることを知っている。ソレについて分かっていることは、この認識災害を生み出すほどの力を持っていること、Apollyonクラス相当の何かと接触していること、そして今知識を欲しているということだけだ。しかしながら、我々は今2つの点において有利な状況にあるといえる。その一つは、この存在はかつてよりも「弱く」なっているという点だ。その力の全容を把握できていない以上、これは大したことではないかもしれないが、少なくともスタートラインに立つことはできるだろう。そしてもう一つは、現在の仮定に基づけば、この存在の意識は我々の精神圏の外側に存在し、人間の意識に憑依するような形で我々の精神圏に入り込む、という点だ。
そしてそれこそが、私が今この提案書を書いている理由だ。私は業務の合間に、SCP-7797について調査した。現在示されている証拠によれば、この存在は人間の意識に入り込み、コントロールすることが可能なようだ。理論的には、SCP-7797に暴露した人間を「エサ」として設定し、当該存在の意識がそこに入り込んでいる間に拘束することができるかもしれない。封じ込めの具体的な方法はせいぜい漠然としたものでしかないが、何人かの研究員と話し合ったところ彼らは解決策を提示してくれた。別次元からの粒子シフトにも耐えられるよう設計された改良版収容セルだ。言うなれば、異常性を遮断するファラデーケージのようなものだ。その存在の意識を宿主に入り込ませたのち、宿主ごとセルに閉じ込めて脱出を阻止する。薄っぺらい解決策だが、これは出発点にすぎない。運用するチームなくして、この策を機能させることはできないだろう。
ここに私は、SCP-7797の背後にある存在を確保し、尋問し、無力化することのみを目的とした、新たな極秘任務部隊を組織することを提案する。仮にその存在が自身の主張する通り全知の能力を持つのだとすれば、その研究と情報がもつ可能性は驚異的であり、鎮静化に成功すれば財団にとって唯一無二の研究対象となるだろう。また我々はすでに、当該存在が他の何らかの知的生命体と接触していることを知っている。その生命体が持つ知識もまた、財団の活動に多大な利益をもたらし得るだろう。私はこの部隊の指揮官候補として、現カイー43隊長のタイラー・ヤマグチをスカウトしている。彼はこの作戦を任せるには理想的な人物だ。
これは機動部隊ではない。少なくとも任務が完了するまでは、財団の記録にも存在しない秘密部隊だ。まあ、任務が完了するならの話ではあるが...正直に言えば、これがうまくいくかどうか自信はない。あの事件で得られた断片的な情報以外に、我々はこの存在についてほとんど何も知らない。その名前さえも。これは神を殺そうとするようなもので、無力化はおろか話しかけることすら叶わないかもしれない。しかし、今少なくとも、その解決策になりうるものは持っている。さもなくば、SCPの急激な蔓延を鑑みるに、今のままでは我々に残された時間はあまりないだろう。一般的には、実在するかも分からない対象の研究にリソースを割くのは無駄だとされる。しかし、今もはや選択の余地はない。
提案内容: SCP-7797に関わる実体の収容・尋問および最終的な無力化を目的として、機動部隊への所属経験をもつ高位研究員からなる部隊を編成する。
評決:
承認