SCP-7743

私の健康を気遣うふりなんてしなくていいですよ。

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SCP-7743: Keep Your Voice Down
著者: Billith Billith
他の作品を見る: 人事ファイル (EN)


(以下、SCP-JPの規定に基づくクレジット表示)

タイトル: SCP-7743 - 大人しくしていなさい
著者: Billith Billith
作成年: 2025

原題: SCP-7743- Keep Your Voice Down
翻訳者: oplax-counterpoint oplax-counterpoint
翻訳年: 2025

参照版: rev. 4 (2025年08月22日)
ソース: https://scp-wiki.wikidot.com/scp-7743


評価: +4

アイテム番号: SCP-7743

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-7743に割り当てられた職員は、共感評価尺度 (Empathy Assessment Scale, EAS) のスコアが2未満でなければならず、どのような感情的な関係および長期的な所属関係等も有してはなりません。

説明: SCP-7743はワシントン州モンローに所在する1軒の住宅を中心とした空間領域です。当該地域は、一貫性のある社会的な絆に非常に敏感に反応し、社会的な交流中に生成される共感性の場によって拡大します。

SCP-7743は1998年3月15日に開催された、血縁、婚姻および同棲関係によって繋がりのあった14名の個人 (SCP-7743-1) が参加した会合の痕跡とその関連が固定されています。

この会合において、不明な感情的閾値への到達によって再帰的な社会災害的フィードバックループが形成されたことで、空間内に存在した全ての対人的ダイナミクスが単一の自己強化的・反社会的虚無へと崩壊しました。この作用は現在も当該区域とその内部に送り込まれた全ての個人に影響を与え続けています。

以前考えられていたものとは異なり、SCP-7743の犠牲者 (SCP-7743-1) はその存在を消滅させてはいません。そうではなく、社会的・共感性的に無力化されることになります。感受性の最も高い共感能力を持つ個人でなければ、そのような実例は完全に無視されます。そのような例外を除いたほとんどの人物は、言語的な躊躇や間接的な社会的合図を除いて、犠牲者について話したり存在を認めることを単純に拒否します。

この社会的閉塞は現代社会において急速に危険を増加させます。SCP-7743の犠牲者は周囲の行動によって頻繁に負傷し、そのような振る舞いは焼却後の遺体にまで継続して発生します。

そのため、共感的な介入なしには意思疎通および救助活動は不可能です。財団によるフィールド・エンパスの雇用開始以来、歩行者空間で踏みつけられていたり、階段から不明な理由で転落して重傷を負った行方不明者が複数発見されています。

2023年にモンロー市域で「見えない人々」に関する情報が報告されたことで、SCP-7743は財団の注意を引きました。情報源を調査した結果、かつてSCP-7743に居住しており潜在的な社会共感者であるPoI-7743 (リラ・F) が特定されました。

同人物は尋問のため現地に連行されました。

<開始>

インタビュアー: もう3日になります。ここまで2日間、あまり何も話してくれませんね。協力していただけないでしょうか。

PoI-7743: こんな所にいたくないですし、あなたに教えられることも何もないですよ。

インタビュアー: やるべきことが終われば、すぐに出ていけますよ。私の目標は貴方が私は貴方が必要以上に病棟に留まる事が無いように、合理的な時間で手続きを進めることが目的でここに来ています。手続は通常、最大で2時間です。

PoI-7743: 私の健康を気遣うふりなんてしなくていいですよ。

インタビュアー: 貴方を説得しようだとかそういうつもりではないですよ。貴方と同じような人がここには大勢いて、私は彼らの全員に同じことを言っています。そして貴方にも。私は貴方の敵ではありません。誰かが貴方をここに押し込めるようにしただとか、そのようなこともありません。貴方自身が原因で、貴方はここにいるのです。私たちは貴方の後始末をしているのです。

<PoI-7743は黙ったまま、よそを向いている。>

インタビュアー: それで、あの日の晩のパーティーについてですが⸺

PoI-7743: パーティーじゃなかった。

インタビュアー: なるほど?

PoI-7743: 単なる...夕食会だった。誰かが死んで、私が知ってる誰かじゃなかったけど、私は知ってるみたいにしなきゃいけなかった。

インタビュアー: それで、何が起こったんでしょう?

PoI-7743: 気持ち悪かった。私たち全員が1つの部屋に押し込まれて、互いに見つめ合ってました。あの人たちの頭の中で、感情的な思考が形になるのを感じたんです。期待の重みが...まるで、その通りにしないと悪化するみたいな痒みみたいでした。

私は無意識に反応してました。背筋を伸ばして座って、笑って、それで縮こまったんです。大抵は、その方が安全ですから。

<PoI-7743は長い髪を耳の後ろに押し込むかのようなジェスチャーをした。髪は短く、つまり何も起こらなかった。>

インタビュアー: それは君にとって普通のことだった?

PoI-7743: 物心ついた時からずっとです。皆の型に十分に、そして素早く当てはまらなければ、誰もあなたの⸺私のことを真に見てはくれない。そういう期待に応えて今まで生きてきました。

<PoI-7743はテーブルに肘を置き、引っ込める。それから手を膝の上に置いて、また肘を合わせる。何度もそれを繰り返す。>

インタビュアー: その夜は、貴方はそれに "応えた" んですか?

PoI-7743: いえ。あの人たちが望むような、ありのままの私というやつにはなれませんでした。十分な余裕が...十分な私自身がありませんでした。私はこの私でしかなかったんです。その時に、あの人たちがどれだけ私のことを知らなくて、知りたがってもいないかに気付いたんです。

<インタビュアーはペンを落とす。PoI-7743の身体がびくっと反応し、2人は同時に「すみません」と言った。PoI-7743は床のタイルからペンを拾い上げて、インタビュアーに渡した。>

インタビュアー: ありがとう。

PoI-7743: いえ、どうも。

<PoI-7743は顔を赤らめて俯く。3秒間の沈黙。>

インタビュアー: <咳払い>⸺えー、それで、その後は?

PoI-7743: <間> しばらく緊迫した感じで...それから、静かになりました。少しの間、誰も動かなかったんだけど、それからみんなパニックになった⸺お互いに誰の姿も見えなくなったから。気付いた時にはもう手遅れでした。おじのジャレドは外に飛び出してしまって、トラックに轢かれてしまいました。遺体は見つからなくて、赤いシミがずっと続いているだけの状態でした。

インタビュアー: お悔やみ申し上げます。

PoI-7743: 彼はアルコール中毒で嫌な奴だったけどね。それよりも、見つかってない人のほうがずっと気になっていて。

インタビュアー: 見つけた人のことは?

PoI-7743: <うんざりした様子で> ひとは無視されるようには出来てないんですよ。とりわけこんな風には。そうなった暁には、ひとは壊れていきます。私の町で、独り言を言いながら徘徊している人を何人か見ました。おばのキラは店で足首を壊しました。他人がまだ見えているかのように生きようとしたんです。結局その後も良くはなりませんでした。

<PoI-7743は姿勢を正して、手で口と鼻を覆った。部屋の外で誰かが大きなくしゃみをした。>

PoI-7743: 失礼しました。

インタビュアー: それ以来、同じような経験はありますか?

PoI-7743: いいえ。いま私は私の見えたいように見せています。それを否定する人はもう誰もいない。でしょう?

インタビュアー: ええ、貴方はとても素敵な人だろうと、私も思いますよ。

PoI-7743: そういうことを聞いてないんですけど。

インタビュアー: 個人的な好みの表明は互いの関係性の証拠として扱われ、つまり協定に違反します。面接担当が3人もいて、誰の名前もあなたが教えられていないのも同じ理由です。

PoI-7743: ふん、私は特に何も思っていないと言っておきますよ。

インタビュアー: 貴方からのフィードバックも協定に違反しますので。

PoI-7743: それでどうやって私のサポートをするつもりだったんです?

インタビュアー: 我々にいくつか考えがあります。期待できるものです。

PoI-7743: そうですか。ですが一方、私はここでじっとしている。それはあなたがさっき屈んだからで、もし私がバランスを取らなかったら、私はテストに落ちたみたいに思ってしまう。それで、あなたはきっと私のことをあの人たちと同じように見るんでしょうね。私がなにか言い過ぎた時みたいに。あなたはまさに今そうしているから。

インタビュアー: 私は何もしていませんよ。

PoI-7743: あなたは何をする必要もないんです。

<PoI-7743は足を組んだり戻したりして、明らかに不快そうな態度を取っている。>

PoI-7743: あなたがそうしたいと思えば十分です。

<終了>


注記: 両者の間に形成された社会的結合場は、相互作用を通じて極端な変動が認められました。インタビュアーの低い感情容量は、完全ではないものの、異常な社会的影響に概ね抵抗することができました。

PoI-7743には抗運動薬が投与され、強迫行動と運動的行動の間の、社会災害的フィードバックの発現に必要な記号的リンクを破壊することに成功しました。

脚注
. 例えば、テーブルで席を空けておくこと。
. 自動車に轢かれる、重機に押し込まれる、危険物の取り扱いによって重傷を負うなど。
. 潜在意識的な社会的圧力、社会的ダイナミクス、およびそれらに関連する行動エチケットに対する敏感さを含む、共感能力の特異的な発現形態。
ページリビジョン: 5, 最終更新: 29 Aug 2025 05:35
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