初期収容時のSCP-767-JP。内部には溺死したSCP-767-JP-1が入っていた。
SCP-767-JP-1と同品種のウサギ。
アイテム番号: SCP-767-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-767-JPはサイト-81SGの第3規格静止物収容室に収容されます。SCP-767-JP-1の発生が収容室に設置した4台の監視カメラによって確認され次第、SCP-767-JP-1は検査解剖の後に焼却されなければなりません。SCP-767-JP-1を摘出する際、SCP-767-JPの部分的な解体が認められています。
いかなるクラスの記憶補強薬(Mnestics)を服用している職員も、一切のSCP-767-JPに関する業務に割り当てられることはありません。
説明: SCP-767-JPは一缶の極度に劣化した18L缶であり、周囲の大気からは常に2-ノネナールが検出され、それに伴う悪臭も確認できます。SCP-767-JP内部には特に強い悪臭のみが観測されるものの、SCP-767-JPは空の18L缶よりも約1.0kg大きい重量を持ちます。
突発的にSCP-767-JPとその内部が変容し、内部にSCP-767-JP-1と定義されるネザーランドドワーフ種のカイウサギ(Oryctolagus cuniculus)の老年期死体が確認される事象が発生します。現在までに確認されたその死因のリストは以下の通りです。
- 鋭利な刃物を用いて行われたと推測される複数回の刺突による死亡(57例)
- SCP-767-JP側面中央に発生した衝撃に起因する多数の骨折と内臓破損(189例)
- 内部への液体充填による溺死。全ての事例において液体は特に老年期のヒト唾液と分析された(209例)
- タオルによる絞殺。タオルに異常は認められない(378例)
- 肝リピドーシス(1例)
発生したSCP-767-JP-1はその後自身へ段階的な自己隠蔽性の情報侵襲を発生させ、72時間程度で各SCP-767-JP-1実例に関して提供された情報は消滅するか、認識できなくなると推測されています。この自己隠蔽は侵襲が完了する前にSCP-767-JP-1の体組織を熱的に破壊することで無力化されます。SCP-767-JPはこの熱的破壊か、情報侵襲が完了した時自己とその内部環境を復元します。情報侵襲が完了した後、SCP-767-JP-1がどのような状態となるのかは不明です。
SCP-767-JPは大阪府の老人介護施設近辺で、内部のSCP-767-JP-1と共に回収されました。該当の施設はいくつかの経営的・人的問題がみられたものの、異常は認められませんでした。
実験記録767-JP-14 - 2008年06月17日
対象: 選抜されたエージェントで構成される部隊
実施方法: クラスW記憶補強薬を服用した部隊に交代でSCP-767-JPを監視させ、その異常性質を調査する。
結果: [削除済/情報災害キャリア]
分析: 調査は凍結されます。収容手順の変更は必要とされません。
探査ログ:767-JP:[削除済/情報災害キャリア]
RAISA認識災害警告
=警告:以下の情報はRAISAによる認識災害を付与されています=
以下の情報は監督評議会の承認を得て、軽度の選択性障害を伴う認識災害を付与されています。承認されていない手段でこの情報にアクセスした場合は、直ちにこの文書を閉じて監督者に報告してください。これ以上は読み進めないでください。あなたが認識災害-RAISA-767-JPに曝露し、記憶処理を必要としていること以外の情報を監督者に開示しないでください。監督者がいない場合、運用マニュアル"RAISA認識災害: 手順と処置"を参照し、必要に応じて職員の支援を受けてください。この際、あなたが認識災害に曝露したこと以外の情報を開示しないでください。
あなたは以下の条件をすべて満たしていることを確認してください:
- 60歳未満であり、記憶しているいかなる6親等内の親族も老人福祉施設に入居したことがない
- 60歳未満であり、記憶しているいかなる6親等内の親族も老化に起因する病状による死亡もしくはそれに準ずる状態になっていない
- 60歳未満であり、未成年時に両親と絶縁し、現在まで関係を復旧していない
実験記録767-JP-14 - 2008年06月17日
対象: MTF 申-3("婉曲電柱")(構成員: アルファ、ブラボー、チャーリー、デルタ)
実施方法: クラスW記憶補強薬を服用している部隊にSCP-767-JPを調査させ、その異常性質を確認する。事前調査において、部隊による録画映像の観測には特筆すべき結果は得られなかった。
結果: 部隊の全員がSCP-767-JP付近に複数の立体的な幾何学的図形を視認する。ブラボーがまずSCP-767-JP内部の目視による観測を試み、結果について報告し始めた時点で異常が生じた。ブラボーが後退するとSCP-767-JPが自壊し、内部から2体の実体が出現。本実験はこの時点で中断された。
実体は外見上はほぼSCP-767-JP-1と同様であったが、相違点として胴体部が大きく膨張しており、内臓の大部分が存在せず、個体ごとに異なる老年期ヒト頭部が収納されていた。ブラボーの証言と機密照合により、ヒト頭部は存命であるブラボーの両親のものと同一と確認される。
ブラボーはSCP-767-JP内部について建築物の内部構造を観測し、自壊して露わになったSCP-767-JP内表面にもそれが視認できるとした。部隊全員がこれに同意。記憶補強薬を服用しない他職員には通常の18L缶内表面のように観測される。追加試験により、SCP-767-JPは自己隠匿性を持つ異常ポータルであると結論付けられた。内部に直ちに有害性のある気体構成は確認されず、探査ミッションが立案、承認される。
探査ログ:767-JP
ミッション内容: SCP-767-JP内部の探索、及び異常性質調査。
職員: MTF 申-3 ("婉曲電柱")
追加情報: MTF 申-3のメンバーは全員、標準仕様のサバイバル装備と記録装置を装備しており、Wクラス記憶補強薬を3年に渡って服用していた。SCP-767-JPの自己復元特性のため、任務は24時間以内の帰還を想定された。申-3と同じく記憶補強薬を服用している職員が司令部に置かれ、梅居博士が代表して作戦司令官を務めた。SCP-767-JPは侵入のため展開され、固定されていた。
[ログ開始]
アルファ: チェック、アルファ。
ブラボー: ブラボー。
チャーリー: チャーリー。
デルタ: デルタ。
アルファ: 良し。2-2の隊列で侵入せよ。
部隊は全員身を屈めてSCP-767-JP内に侵入する。全員が表情を歪め、アルファが代表して司令部へ報告する。
アルファ: 767-JP周辺と似た臭いです。アンモニア臭もひどい。マスクを着用します。
申-3のメンバーはマスクで顔面下部を覆い、SCP-767-JP内部の探索を試みる。部隊が侵入した地点は何らかの施設の玄関口であるように見える。部隊は施設内部、廊下へ進む。廊下には装飾と思しき生花が飾られた机と、クッションが敷かれたいくつかの椅子が確認できる。
ブラボー: 臭いの割には、綺麗な状態です。物音もしません。
デルタ: 窓からも何も見えません。白く光っているだけです。開けてみますか?
梅居: 施設内の探索を優先しましょう。
アルファのカメラからの映像。
チャーリーが廊下途中で部隊を呼び止め、何かを発見したことを伝える。申-3のメンバーは集合し、チャーリーはまずブラボーへ確認を行う。
チャーリー: 机の下を。何に見えますか?
ブラボー: これはウサギだな。外傷があり、完全に死んでいるようだ。
チャーリーのカメラが花瓶の置いてある机の下を映し、ペンライトで対象を照らす。報告と同様に、ノウサギの死体が確認される。死体は胴体部に重傷を負っており、また老年期であるように思われる。
チャーリー: 虫が湧いていません。血液さえ乾燥していないので、かなり新しいもののようです。
梅居: 767-JP-1とは種が異なりますね。体毛サンプルを採取してください。
採取後、部隊のメンバーは施設内部へ進む。廊下の先には広い空間があり、大型テレビと複数のソファ、またいくつかの娯楽用品が置かれている。テレビには何も映っていない。空間には大きな窓が備え付けられている。各ソファの上や棚の娯楽用品などに挟まる形で、複数のノウサギの死体が確認される。いずれも新しい状態であり、死因は頸部骨折などの外傷から、一見して不明なものまで様々である。
デルタ: 椅子の数から見て、かなり大人数が暮らす施設のように思えます。あとはこのウサギどもですね。どれもこれも新しいです。あとは数が多い。
梅居: 窓は? 先程と同様ですか?
デルタ: ええ。白い光だけです。
空間からは通路が複数続いている。アルファが方向を指し示し、部隊はそちらへ進む。マーカーが目印として残される。
進むと、通路に面して複数の扉が並んでいる。これらの扉にはネームプレートが取り付けられているが、いずれも表面が乱雑に削り取られており、判読は不可能である。
アルファがある扉を開けて侵入すると、著しく暗い空間が見える。アルファは各員にライトを使用するように指示する。部隊は扉を固定して内部へ侵入するが、外からの光と部隊のライトにも関わらず室内の様子はほとんど視認できない。アルファがライトを下に向け、絨毯が敷かれた床を映す。
梅居: その部屋の広さは確認できますか?
デルタ: 床は確認できますが、他は真っ暗です。ライトを向けても。あと、ここは特に臭い。
デルタが信号弾を打ち上げたが、天井は確認されない。水平方向でも同様。
梅居: 探索を続けてください。2時間を目処にその部屋から脱出するように。
アルファ: 了解。引き続き2-2の列を保て。扉は視認できる距離だが、サイリウムをマーカーとして置いておく。
機動部隊はサイリウムを落とし、ライトのバッテリーと時刻を改めて確認する。部隊がこれらを行っている以外の物音と光は確認されない。ブラボーのライトが床以外に何かを照らし、報告する。
デルタ 何だ?
ブラボー: 2時の方向に......あった。これはベッドだな。
ブラボーのカメラの映像。
ブラボーがライトで指し示し、機動部隊のメンバーは発見したベッドへ集合する。メンバーはベッドを調査し始める。
チャーリー: この上にもウサギの死体があります。ただ、これはかなり古いですね。ほぼ乾燥しきっています。
デルタ: あとは糞便です。おそらくウサギのものでしょうが、こちらも乾燥しています。
ブラボー: 待て。音が聞こえるな。
部隊は小銃を構え、隊列を整える。硬質な物音が記録装置越しにも確認される。
アルファ: 全員聞こえるか? かなりの数だ。前方へ何か来ている。
デルタ: ええ。
チャーリー: いや......待ってください、自分には聞こえません。
アルファ: わかった。チャーリーは後方へ。全員でカバーしつつ後退しろ。司令部、そちらでは確認できますか?
梅居: ええ何? いや、これは......通信ではない、何が
アルファ: 司令部?
梅居: 違う。申-3! すぐに撤退しろ!これは、それ? いつ、何、どうやって[雑音]
アルファ: 全員撤退し[アルファのカメラが一瞬物体を映し、通信が途絶する。続いて、ブラボー、チャーリーも同様に通信が途絶する。チャーリーのカメラが暗転する。]
チャーリー: 了解。 隊長? どうしました? 司令部? いえ、自分のものは通信が続いています。はい。雑音しか聞こえませんが。
不明: [雑音]
チャーリー: いえ......ダメです。こいつ、隊長の声を録っていません。自分が記録を担当します。ええ。情報災害でしょう。
チャーリーのカメラが再び映像を映す。4つのライトが見える。
チャーリー: こちらはチャーリーです。自分以外の隊員は記録装置が使えません。申-3は即時撤退を行います。
不明: [雑音]
映像は扉を出た場所へと移る。チャーリーが驚きの声を上げ、カメラはアルファの背後を映す。ノウサギの死体が背中に張り付いている。カメラは続いてブラボー、デルタを映し、それぞれ同様にノウサギの死体が付着しているのを確認する。
チャーリー これは、俺には[雑音]そうですか。[雑音]
部隊員はそれぞれ背中に付着しているノウサギの死体を剥がそうと少しの間試みるが、撤退を優先し隊列を組み直す。先頭はチャーリーである。チャーリーのカメラが前方を向き、通路を戻り始める。
不明: [雑音]
不明: [雑音]
チャーリー いや、何を何ですって? [雑音]違う。あなた達の声が聞こえない。ノイズにしか[雑音]
部隊はテレビと複数のソファの空間へ辿り着く。
チャーリー いいでしょう、[雑音]どうせ後は帰還[雑音]治療を受けます。[雑音]これは[雑音]
チャーリーのカメラが後方へ向けられる。それぞれの隊員は装備の内部から潰れた状態で溢れ出すSCP-767-JP-1に翻弄され、もがいているように見える。チャーリーは撤退を優先したと見られ、カメラを前方へ向け直して玄関へ向かう。空間の窓からは多数のウサギが観測される。チャーリーが玄関口へ走り出るまでの6秒間、天井から降下してくるウサギの死体、及び頻繁かつ大音量の雑音が確認された。
お前は覚えていると思っていたよ。
[ログ終了]
アルファのカメラが映した最後の映像。
チャーリーはSCP-767-JP内部から撤退する。当作戦の司令部は壊滅状態であり、いずれの人員にも様々なSCP-767-JP-1が大量に付着していた。その腹部には例外なく被害者の比較的高齢な親族の頭部が確認された。被害を受けた全ての人員はSCP-767-JPに関する記憶を喪失しており、被害者の関する調査と追加試験により異常災害の選択性が推測された。13時間後にチャーリーによって申-3の他メンバーの死体が回収された。メンバーの死体は体表面をペースト状のSCP-767-JP-1とヒト体組織で覆われ、回収からおよそ60時間で消滅した。同刻にチャーリーは視覚と聴覚を喪失した。
チャーリーは孤児であり、雇用時に財団によって両親は特定されたが、面会を希望しなかった。当実験記録及び探査記録は曝露者の周囲へ大量のSCP-767-JP-1の発生と特定記憶の喪失を引き起こす対象選択性情報災害であると認定され、RAISAによる保護が行われた。現在、SCP-767-JPについての調査は凍結されている。
昔は可愛がってやったろ?