施設内地熱発電所、ネバダ州、サイト-56
アイテム番号: SCP-6856
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-6856はネバダ州、サイト-56に収容されます。SCP-6856の収容室はLI-900シリカ断熱タイルで建造されますが、それ以外は標準人型収容仕様に忠実に従う必要があります。SCP-6856の収容室には、模造の内装やその他の装飾が許可されています。
サイト-56敷地内地熱発電所の下に位置するSCP-6856の作業室もLI-900シリカ断熱タイルで建造されます。作業室には控室からのみアクセス可能で、控室にはロッカー、自動販売機、及びオリビア・ストラットン博士が要求したその他の物品を設置することが許可されます。作業室内に許可される備品は、最高温度500°Cと明記された温度計、耐熱監視カメラ、耐熱インターコムシステム、SCP-6856のハーネスのみです。
SCP-6856は勤務時間中、温度計に目を合わせ続ける必要があります。改良策として、SCP-6856が使用している間、作業室に財団が承認したラジオ番組を流すことが許可されます。SCP-6856が使用している間、財団職員が作業室に入ることは禁止されています。
説明: SCP-6856は23歳の人間男性であり、自身の体温を自由に上昇させることが可能です。オブジェクトは熱による悪影響にも異常な耐性を示します。SCP-6856の最高温度はおよそ500°Cです。
SCP-6856はネバダ州アイディルで、住宅火災の直後に発見されました。地元警察はSCP-6856の特異な熱への耐性に注目し、アイディルに潜入していた財団職員は警報を受けました。初期収容時、SCP-6856は財団に全面的に協力的であり、財団の要求と規制に従い続けています。
SCP-6856の協力的振る舞いの認められた経歴から、オブジェクトはパイロット・プロジェクトとして選択されました。SCP-6856は気候変動に実存的な恐怖を抱いており、自身の能力をクリーンエネルギーの生成に利用することに関心を示しています。この提案は相互利益になると判断され、施設内地熱発電所に専用の"作業室"が建造されました。毎日午前8時、SCP-6856は2名の武装警備員に作業室へと護送されます。SCP-6856は1時間の昼休憩を挟んで8時間勤務の間作業室に留まります。SCP-6856はこの日課によく適応しています。
14時37分からのビデオカメラ映像
SCP-6856はハーネスに繋がれており、作業室の壁に取り付けられた温度計を見つめている。温度計の針は、最高値である500°C付近で緩やかに揺れている。SCP-6856は熱を放射しており、その輝きによりビデオ映像が僅かに歪む。
インターコムから劇的な音楽が流れる。
インターコム: お前ならやれるぞ、兵卒! 部隊は今途中だ。決して見逃すな!
インターコム: 到達予定時刻はわかりますか、将軍? あとどれくらい持ちこたえられるか……
インターコム: アノマリーに目を合わせ続けるんだ、兵卒。これは命令だ!
インターコム: やってみます、将軍。
インターコム越しに兵士が移動する音が聞こえる。歪みの中で、SCP-6856が目を閉じているのが見える。
インターコム: 行け行け行—
雰囲気と台詞が突然中断し、単調で女性的な声が代わる。
インターコム: 注意。SCP-6856、温度計を監視してください。
SCP-6856は目を閉じ続けている。
インターコム: 注意。SCP-6856、目を開いて温度計を見てください。財団が局所的な停電を避けるためには、あなたの注意力が極めて重要です。
SCP-6856は目を開く。
インターコム: ありがとうございます、SCP-6856。スケジュールされたプログラミングに戻ります。
インターコムから勝利の音楽が流れる。
インターコム: -りました、将軍! これ以上の災害は回避されました!
インターコム: 財団を甘く見るなよ、兵卒。
07時58分からのビデオカメラ映像
SCP-6856とオリビア・ストラットン博士は控室にいる。ストラットン博士は研究デスクの前に、SCP-6856はロッカーの前のベンチに座っている。
ストラットン博士: 何か痛いところはない?
SCP-6856: いえ。
ストラットン博士はシフト前チェックリストの最後のボックスにチェックを入れ、椅子から立ち上がる。
ストラットン博士: 準備万端ね。後はお任せする。
SCP-6856: ありがとうございます。
ストラットン博士: どういたしまして。
ストラットン博士はクリップボードを白衣の下に押し込み、退室しようとする。
SCP-6856: あの、あー、最近献血しましたか?
ストラットン博士: いえ。どうしてそんなことを?
SCP-6856: バンドエイドが。
SCP-6856はストラットン博士の左膝を身振りで示す。
ストラットン博士: あぁ、ただの擦り傷よ。えっと、誰かが私の脚から血を抜いたと思ったの?
SCP-6856: それって基本そのためのものじゃないんですか?
ストラットン博士: バンドエイドが? これは基本的に擦り傷とか紙で切っちゃったとかに…… あなたは使ったことある?
SCP-6856は腕を組む。
SCP-6856: 普通僕がそれを見るのは、あなたたちがテストするときだけだと思います。それと、お母さんと僕は毎月献血してました。
ストラットン博士: 毎月?
SCP-6856: はい。周りの人を助けるのが私たちの責任だとお母さんは言ってました。
ストラットン博士: えっと、医療界を代表して貢献に感謝します。彼女はいつあなたにそうさせ始めたの? 17歳?
SCP-6856は肩をすくめる。
SCP-6856: 思い出せる限りではずっと。多分4か5歳?
ストラットン博士: 何ですって?
ストラットン博士は目に見えて心配する。
ストラットン博士: それは早すぎる。どうして気を失わなかったの? そんな少ない血を抜いたの? どう-
ストラットン博士の言葉はSCP-6856の勤務時間開始を知らせるブザーで中断させられる。
ストラットン博士: 気にしないで。始めてちょうだい。
SCP-6856はストラットン博士が控室を出るのを見つめる。SCP-6856はブザーの音が止まるまで座っている。SCP-6856は立ち上がって服を脱ぎ始め、控室のロッカーの一つにしまう。完全に服を脱いだSCP-6856は作業室に移動する。
SCP-6856は作業室中央のハーネスに自分を縛り付け、目立つように壁に取り付けられた温度計に目を向ける。SCP-6856が光り始めると、温度計の針が上がる。
12時02分からのビデオカメラ映像
SCP-6856は控室、自動販売機前のテーブルの前に座っている。SCP-6856がサンドイッチを食べていると、ストラットン博士が入室する。
SCP-6856: おぉ、どうも。あー、問題はないですか?
ストラットン博士: ええ、全部良さそう。ここに座ってもいい?
SCP-6856: あぁ、どうぞ。
ストラットン博士: ありがとう。
ストラットン博士は昼食の包みを開く。動きが止まる。
ストラットン博士: さっきの、話を続けたいと思ってる。
SCP-6856は口に食べ物を詰め込んだ状態で頷く。
ストラットン博士: じゃあ、あなたは本当に毎月お母さんと献血してたの? それは本当に、本当に普通じゃないことだから。特にあなたがそんなに小さいときには。
SCP-6856は肩をすくめる。
SCP-6856: 僕にはごく普通のことです。それに当然のことですよね? 僕たちの身体はたくさん血を作れるから、必要な人にできるだけ分け与えるべきなんです。たまに多少嫌な思いはしても。
ストラットン博士: …うんうん。そう言われてみれば、それも- それも当然ね。お母さんからそう教わったの?
SCP-6856: だと思います。
SCP-6856は食事を続ける。
ストラットン博士: あなたの親は昔気質の宗教的罪悪感を与えてたみたいね。
SCP-6856: 僕とお母さんだけです。それにお母さんは信心深くありませんでした。
ストラットン博士: ふむ。それじゃあ、その考え方の落としどころはどこ? 他人のために自分の命を犠牲にすることはできないわよね。ある程度の時点で、自分を- 自分を気にかけてあげないと。
SCP-6856: えっと、いえ。そうでもないです。ですよね?
SCP-6856は控室で身振りを示す。ストラットン博士は沈黙している。
SCP-6856: 僕は地球を救おうとしてるんです。あなたたちはこの機会を与えてくれて、僕- 僕は責任を負ってるんです。
ストラットン博士: そうね。いえ、とても立派よ。このプロジェクトは- あなたはいいことを思いついてくれた。
SCP-6856: 僕のアイデアじゃありません。でもありがとうございます。
ストラットン博士: えっ? ファイルには地熱プロジェクトがあなたのアイデアだって書いてあるけど。少なくとも、そう暗示されてる。
SCP-6856は首を振る。
ストラットン博士: でもあなたのアイデアじゃなきゃおかしい。あなたが現場に来る前にこの部屋を造り始めたのを覚えてる。あなたが協力してくれるとわかってなきゃサイト管理官はプロジェクトを承認してないはず。
SCP-6856: 僕はアイディルから真っすぐここに来ました。その数日後にプロジェクトについて説明されました。疑う余地もないアイデアに思えたので、もちろん協力することにしました。
ストラットン博士: 道理が合わない話に聞こえる。
SCP-6856: 何を言えばいいのかわかりません。見解に違いがあるようです。
ストラットン博士: へぇ、まあいいわ。マトリックスの故障ってやつかもね。
SCP-6856: 何です?
ストラットン博士: 「マトリックスの故障」。聞いたこと- あー、忘れて。
ストラットン博士は昼食を終えて立ち上がる。
ストラットン博士: 会話にふけらせてくれてありがとう、楽しいおしゃべりだった。また明日ね。
は食べ物を置く。
SCP-6856: あー、はい、ではまた。
ストラットン博士は控室を出て、その際警備員に挨拶する。SCP-6856は腕を組む。SCP-6856は遠くを見つめながら、背中をもたれかける。やがて、SCP-6856はサンドイッチの残骸を残してテーブルから立ち上がる。SCP-6856はしばらく行ったり来たりしてから、衣服をロッカーにしまって作業室へ戻る。
17時00分からのビデオカメラ映像
SCP-6856の勤務時間の終了を示すブザーが聞こえる。SCP-6856から発せられる光はビデオの歪みと共に減少する。SCP-6856は作業室から控室に入り、ロッカーを開け、衣服を着始める。
完全に服を着たSCP-6856は出口に進むが、研究デスクの近くで歩みを遅める。SCP-6856は停止して、未記入のシフト前チェックリストを机から取る。SCP-6856は紙を手に取ってひっくり返す。
SCP-6856は紙の端を手のひらに当てて動かす。SCP-6856はこの動作を激しさを増しながら繰り返す。やがて、SCP-6856は突然静止する。手には小さな切り傷が見える。
SCP-6856は手を目の高さに持ち上げ、血の滴り続けている切り傷を調べる。SCP-6856は熱心に切り傷を見つめ、ゆっくりと手を回転させてあらゆる角度から観察する。SCP-6856はシフト前チェックリストを研究デスクに置き直し、控室の扉を開けて外の警備員に挨拶する。
SCP-6856: すいません、バンドエイド持ってませんか?
警備員: <聴取不可能>
SCP-6856: ありがとうございます。あー、はい、すみません。
10時26分からのビデオカメラ映像
SCP-6856は作業室でハーネスに繋がれている。SCP-6856は目を閉じている。
インターコム: 注意。SCP-6856、温度計を監視してください。
SCP-6856は目を閉じたままである。
インターコム: 注意。SCP-6856、目を開いて温度計を見てください。財団が局所的な停電を避けるためには、あなたの注意力が極めて重要です。
SCP-6856は目を閉じたままである。SCP-6856の明るさが急速に増大し、ハーネスの細かな点が見えにくくなる。
インターコム: 注意。SCP-6856、すぐに目を開いて温度計を見てください。協力を控える場合罰則処置がとられる可能性がががががああああズズズズズズズズズズ
インターコムの故障が続く。部屋は光でほとんど見えなくなっている。復元可能な映像の最後の瞬間、断熱壁パネルが歪み、溶け始める。
To: ten.lanretni-pcs|rotcerid-65-etis#ten.lanretni-pcs|rotcerid-65-etis
From: ten.lanretni-pcs|nottartso#ten.lanretni-pcs|nottartso
件名: RE: RE: 6856の違反
クロフト博士、何度でも言いますが、なぜこのようなことが起きたのかわかりません。仲間たちは彼が壁を通り抜けてきたと言っていましたが、それはあり得ないはずです。あの部屋が10フィートもある固い岩の下にあるのは言うまでもなく、タイルだって1500°Cもあるんですよ。
彼をスーパーノヴァにさせる文書に載っていない何かがあるはずです。どうしてこれまで見せられていなかったのですか?
To: ten.lanretni-pcs|nottartso#ten.lanretni-pcs|nottartso
From: ten.lanretni-pcs|rotcerid-65-etis#ten.lanretni-pcs|rotcerid-65-etis
件名: RE: RE: RE: 6856の違反
いくつかのアーカイブ済み文書のクリアランスを与えた。それを読んだら連絡してほしい。
メサリッジ総合病院で起きた爆発。
アイテム番号: SCP-6856
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: 身体的拘束はSCP-6856の収容に不十分です。したがって、心理的収容プロトコルが実施されます。SCP-6856は標準機密IDYLL地区内に収容されます。500°Cを超える温度を表示可能な温度計が地区内に存在してはなりません。それ以外は、収容は標準IDYLLプロトコルに準じます。
オブジェクトの「母親」を除いて、IDYLLクリアランスを有する訓練を受けた財団職員のみが、演技をした上でSCP-6856と直接交流が許可されます。IDYLLプロトコルに従い、SCP-6856が自身の収容を知った場合に備えて、精神安定剤と記憶処理剤を手元に置いておく必要があります。
説明: SCP-6856は18歳の人間男性であり、自身の体温を自由に上昇させることが可能です。オブジェクトは熱による悪影響にも異常な耐性を示します。オブジェクトは熱による悪影響にも異常な耐性を示します。
SCP-6856は新生児期、ネバダ州メサリッジ総合病院で発生した爆発の中心地付近で回収されました。この爆発はTNT換算で25キログラム相当と推定されました。財団の研究員は、この爆発は100,000°Cを超える温度によって引き起こされたと仮説づけています。最初の回収時、SCP-6856は無傷に見え、質量は3.3キログラムでした。
SCP-6856の最高温度は不明です。収容方策として、財団はSCP-6856が出力できる最高温度が摂氏500度と信じるよう条件づけました。
上級研究員クロフト博士の覚書
今後の長期的なプロジェクトのために、利用可能なDクラス職員の中から対象を同定したいと考えております。理想的な候補者の条件は以下の通りです。
- 女性、25〜40歳
- 精神的に安定し、健全である
- ミルグラム忠誠度テストで最低でも65点を達成
- 流産や子の死に見舞われ、存命の子がいない
- 個人の責任という概念に強い信念を持っている
候補者は、18年間のプロジェクトを無事に完了させた場合、完全な補償を受けて一般社会に解放され、公式記録及び内部記録から名前が削除されることを認識させられます。
何かご質問があれがお知らせください。速やかに返信をいただければ幸いです。
サイト-56軽度収容係の覚書
クロフト博士、このプロフィールに合致する[データ削除済]という名の有望なDクラス職員を同定しました。明日の朝、ブリーフィングのためあなたのオフィスにお連れします。
上級研究員クロフト博士の覚書
18年間にわたる収容の成功を経て、SCP-6856のIDYLLプロジェクトは問題なく経過を辿りました。アノマリーは計画通り「自分の役割を果たす」ことに固執しています。
あなた方の承認が得られれば、私はオブジェクトに課した心理的制限を強化するための施設をサイト-56に建設する許可を出す所存です。この施設はSCP-6856のエネルギーの活用もしますが、サイト-56のインフラのどの部分も完全にアノマリーに依存することはありません。
また、アノマリーの母親を財団の管理下から解放してSCP-6856をサイト-56へ移送することを含む、IDYLL地区の閉鎖手順も開始する予定です。
O5司令部の覚書
承認。
10時47分からのストラットン博士とクロフト博士の通話転写
ストラットン博士: これは冗談ですか、ジャスティン?
クロフト博士: 残念ながらそうじゃない。
ストラットン博士: 冗談みたいだから言ってるんですよ。
クロフト博士: まあ理解するのは難し-
ストラットン博士: SCP-6856の温度に既知の上限がない?
クロフト博士: その通り。
ストラットン博士: じゃあ、仮の話ですが、こいつは地球全部を溶かしたりできるんですか? 太陽の核をひと塊地球の表面に持ってきたみたいに。
クロフト博士: わからない、オリビア。私たちはこいつに何ができるか知りたくないんだ。
ストラットン博士: どうしてこれを教えてくれなかったんですか? 私が核弾頭の責任者だと知ってることが重要だと思わなかったんですか?
沈黙。
クロフト博士: SCP-6856の収容には本物の人間らしい交流が不可欠なんだ。こういうファサードには崩壊を避けるために真実という核が必要だ。それは最初はSCP-6856の母親だったけど、20分前まではあなただった。IDYLLプロトコルの一部なんだ。
ストラットン博士: なるほどね。それじゃあ、私は彼に- それに母親を思い出させるためのものだったんです? 従順でいるよう子守してくれる年上の女性研究員の待機列でもあるってことですか?
クロフト博士: 少々還元的だが、そういうことだ。そう言えると思う。
ストラットン博士: 何てこと。
クロフト博士: まあオリビア、あなたはいい仕事をしてくれた。あなたの研究は無意味なんてことはなくて、ただ…… 文脈が再構成された。ずっと知らないままにしてすまなかった。でも今は、再収容に目を向けないとならない。記憶処理が最優先だが、まずはアノマリーを見つけないとならない。
ストラットン博士: オーケー…… オーケー。状況は?
クリック音。
クロフト博士: オリビア、スピーカーフォンは繋がってるだろう。イプシロン-9の司令官が同室している。司令官、最新情報はありますか?
MTF司令官: 航空偵察部隊がトンネルの出口を見つけました。冷え切ったマグマのポケット周りの放射状のガラスです。そこから遠ざかっていくガラスの痕跡はなかったから、今のところはスキップが浮上した後非活性化したと思われます。付近でグリッド捜索を開始しました。アノマリーが徒歩で移動しているなら我々が見つけるでしょう。そこに遮蔽物はほとんどありません。
クロフト博士: いいですね。事態を復旧させたいので、実体と直接敵対することは避けてください。クリーンショットできると思ってもです。これは繊細に扱う必要があります。
MTF司令官: 理解しました。
クロフト博士: オリビア、あなたの助けが必要になる。アノマリーの母親は今向かっている途中だ。
ストラットン博士: 偽物の母親? 解放されたから見失ったものだと-
クロフト博士: いや。母親は財団にいるが、ここに来るには時間がかかる。それまでは、あなたが一番アノマリーと深い感情的結びつきがある。SCP-6856を見つけたら母親がどう頼んだらいいか考えておいてほしい。アノマリーを落ち着かせるのは数秒だけで十分だが、確実でなければならない。
沈黙。ストラットン博士はため息をつく。
ストラットン博士: オーケー、多少は把握できた気がします。
11時58分からのドローン映像
カメラの焦点が不安定に揺れる中、ぼんやりと乾いた平原が見える。数秒後、SCP-6856に焦点が合う。SCP-6856はしばらく歩いている。
[データ削除済]がフレームに入る。SCP-6856は立ち止まる。
SCP-6856: お母さん?
[データ削除済]: ここよ、坊や。
SCP-6856は前によろめく。
SCP-6856: ほん…… 本当にお母さんなの?
[データ削除済]は口をゆがめて笑う。
[データ削除済]: そうよ。
SCP-6856: みんな…… みんなお母さんは死んだって…… み- 見たよ。お母さんの死体を見た。
[データ削除済]: わかってる。わかってる。
沈黙。
SCP-6856: どう- なんで僕を置いていったの? 僕は- 置いていかれたから僕は-
[データ削除済]: あなたを愛してるよ。何よりも愛してる。あなたにとって一番いいことをしようとしただけ。あなたにはすごいことができる。財団ならあなたの助けになるって-
SCP-6856: あの人たちと一緒に働いてるの?
[データ削除済]は泣き始める。
[データ削除済]: あなたを傷つけるつもりなんてないの。わかってくれるよね。わかって-
SCP-6856: どれくらい一緒に働いてるの?
[データ削除済]: あの時のこと覚えてる? あなたが…… 特別だって気づいたときのこと。
[データ削除済]はSCP-6856に近付く。
[データ削除済]: 警察に行ったの。警察は信じてくれなかったけど、でも、言い続けた。あなたが特別だって知ってるから。そしたらとうとう、財団が、手を差し伸べて…… あなたに目的を与えられるって言った。世界を救うためにあなたの助けが必要だって言った。
SCP-6856: お母さん……
[データ削除済]: ごめんね。本当に、本当にごめんね。
[データ削除済]は崩れ落ちる。SCP-6856は駆け寄って母親を抱きしめる。
SCP-6856: 大丈夫だよ、お母さん、だいじょ—
[データ削除済]は隠し持っていた注射器をSCP-6856の太ももの裏に押し込む。沈黙。
[データ削除済]: ごめんね。
SCP-6856は輝き始める。[データ削除済]は叫ぶ。映像が歪む。叫び声は聞こえなくなる。SCP-6856から放射状にガラスが形成される。
輝きは飛び散って消え去る。裸のSCP-6856がガラスの上に倒れている。母親はいなくなっている。
12時05分からのストラットン博士とクロフト博士の通話転写
MTF司令官: スキップはサイト-56に戻っている途中です。クラスB記憶処理を注入しているところです。過去48時間は何も思い出せません。好きなところで起こせます、管理官。
クロフト博士: 素晴らしい働きです、お二人とも。司令官、ありがとうございます。
沈黙。MTF司令官がクロフト博士のオフィスを退出する音が聞こえる。
ストラットン博士: それで、次はどうするんです? 元の立場に戻れと?
クロフト博士: その必要はない。あなたにはプロジェクトに留まってほしい。純粋に管理能力から。オブジェクトと直接交流する必要はない。
ストラットン博士: 私をカーテンの裏に引きずり込むと? 冗談じゃない。
クロフト博士:言葉の使い方がうまいね、オリビア。だがこのプロモーションは、あー、言葉を借りれば、断れないオファーなんだ。
ストラットン博士: そちらも驚かれた話なんですね。
クロフト博士: 火急鎮静部門へようこそ、ストラットン博士。
[データ削除済]の財産には喫緊の取り組みへの協力金として650ドル.00が支払われました。
07時45分からのビデオカメラ映像
カイラ・グリーブス博士は控室で待機している。SCP-6856は武装警備員に付き添われて控室に導かれる。グリーブス博士はSCP-6856に向かって歩き、手を差し出す。
グリーブス博士: SCP-6856。あなたとお知り合いになれてうれしいです。私はグリーブス博士、今後のあなたの勤務時間を監督します。
SCP-6856: あぁ、わかりました。よろしくお願いします。あー、オリビアさんはどうなったんですか?
グリーブス博士: ストラットン博士は別のプロジェクトに異動になりました。言われませんでしたか?
SCP-6856: あぁ、いえ。言ってませんでした。
グリーブス博士: あら。とりあえず、ここからは私が彼女の責任を引き継ぎます。
グリーブス博士はシフト前チェックリストをデスクから取り出してクリップボードに置く。
グリーブス博士: よし。今日の気分はどうですか? 一般的な言い方をすれば、充実感はありますか?
SCP-6856: あー、はい。ええ、そう思います。