クレジット
脅威レベル : 黄
特別収容プロトコル: あらゆる人間がSCP-622-FRの異常性を発現させる可能性を持ちますが、SCP-622-FRの活性化に至るまでの状況が非常に特殊であるため、ヴェールに対する脅威レベルは非常に低くなっています。そのため、異常性の完全な収容は不可能かつ不要です。
5歳未満の子供は非常に単純なゲームに遭遇することが多く、口唇期にはたとえ食品でなくとも小さな物体を不注意に摂食する可能性があることを考慮し、大衆にSCP-622-FRの認知が広まることを防ぐため、小サイズのおもちゃ製品全てに対して警告が付与されました。
SCP-622-FRをテニスで実験。
説明: SCP-622-FRは何らかの勝利を収めた後に特定の物体が帯びる味に対する指定です。より具体的には、特定の活動の最中にプレーヤーを勝利させた物体は、勝者の舌にとって甘美であると感じられる風味を突如帯びるようになります。
人間の顎では通常破壊ができない物体であっても、プレイヤーは摂取した物体を容易に咀嚼することが可能です。様々な実験によると、勝利が困難であればあるほど物体の味はより良いものとなります。
発見: SCP-622-FRの異常性は、平面の上で異常な方法を用いて寿司を回転させ衝突させあう異常スポーツである「スシブレード」のプレイ中に発見されました。最後まで回ったままでいる寿司が勝者となります。
理由は不明ですが、このスポーツをプレイする集団のほとんどが、勝者が自分の寿司を摂食することを固く禁じています。
SCP-1134-JPとSCP-1134-JPを取り巻く要注意団体に関連する異常性の研究を担当しているローラン・アフォン博士は、このルールを考慮せずに行った複数の試合の結果から、勝者の寿司の味が敗者の寿司よりも良いと評されるSCP-622-FRの特性を発見しました。アフォン博士は他のスポーツやアクティビティで実験するという着想を得ました。その後すぐに異常性に関する公式の報告書が作成されました。
補遺 622.1: 実験及び注記
SCP-622-FRの報告責任者であるアフォン博士の監督下で一連の実験が認可されました。
行動: チェス
摂食物: 相手をチェックメイトするために最後に指した駒
味: 黒の駒はフルール・ド・セルの繊細な触感を持つブラックチョコレートの味で、それにしては甘い風味。白の駒についても同様だが、ホワイトチョコレートの味だった。
行動: モータースポーツ
摂食物: 勝者の車のハンドル
味: プラスチック部は歯の上で即座に溶けた。クリーミーでベリーの風味がする。ハンドルはストロベリーチーズケーキを強く想起させる。
行動: ゴルフ
摂食物: 勝者したプレイヤーのプラスチック製ボール、最終ホールのカップの半径30cm以内にある地面と草。
味: ボールは溶けたラクレットチーズの味、地面はジャガイモの味、草は白ハム、モルタデッラ、チョリソーを混ぜたような味がする。全てを一緒に食べても美味。
行動: ドッグレース
摂食物: [削除済み]
味: 深みのある香りと完璧な調理方法を兼ね備えた肉。
注: 同僚の要請により、「嫌悪感」を示す可能性のある実験をこれ以上実施しないようアフォン博士に要求しています。
行動: 複数のカードゲーム
摂食物: 「勝利」カード
味: 全てのカードがチップスの味と食感だ。チップスの味はカードごとに異なる。キングはバーベキュー味、8のカードは塩と酢の味だが、エースは無味だ。
行動: 縄跳び
摂食物: プラスチック製の縄
味: トマトソーススパゲティ。特筆することはなし。
行動: 競馬
摂食物: [削除済み]
味: ほぼミディアムに焼かれたと思われる肉はジューシーで柔らかい食感だ。さらに脂肪の配分も完璧であると思われる。
行動: じゃんけん
摂食物: [削除済み]
味: 肉の組成が素晴らしく、メープルの香りが立ち上っている。今回はややレア目に調理されている。片手で食べるのは少し難しい。
行動: スシブレード
摂食物: 巻き寿司
味: 味が変化したのではなく向上している。そういうことか。
アフォン博士が指揮し実行した実験が道徳に反するとみなされ、アフォン博士はSCP財団の職を解かれました。倫理委員会の要請により、これ以降のSCP-622-FRに関する実験は全て禁止されています。
補遺622.2: 最後のメッセージ
アフォン博士の解雇から1ヵ月後、アフォン博士が最後に配属されていたサイトの管理官は、SCP財団全体に向けた彼からの手紙を受け取りました。
ごきげんよう、財団。
数か月前にこのスシブレードと呼ばれるスポーツを調査するという新たな職務を得た時、私は興奮を覚えたと言わざるを得ません。寿司を回す、ただそれだけのシンプルなスポーツ。この異常な世界では、時には最もシンプルな魔法が最も興味深いものとなる。
私は研究者としての責務を果たし、世界各地を訪れ、この回転の新たな利用法、使用される多種多様な寿司、そして魂を込めてこのスポーツを推し進める様々な団体を発見しました。
私は信じがたいものを見てきた。私は忘れ去られた土地を訪れた。そこでは童話に登場する生物たちが回転する寿司で戦っていたのです!私が目撃した戦い。体長20mほどの赤いドラゴンが頭を下げ、シャリの上に生魚の切り身を乗せ、参加中のスシブレードの試合に集中している。アボカドとシャリの寿司を所有している対戦相手の妖精も試合に集中している。周囲は観客だらけだったので、生物たちに気づかれず潜入することができた。
最後は、妖精が勝利を勝ち取った。ドラゴンは明らかに腹を立てている様子だったが、驚くほどあっさりと敗北を受け入れた。大きな拍手の嵐が巻き起こった。ドラゴンが一口で寿司をむさぼるのに対して、妖精は目を見開いて自分の寿司を見つめ触れようともしなかった。その時、この黄金律を知り、SCP-622-FRが頭に過った。
これら幾多の団体の中でも特に目を引いたものがあった。闇寿司。団体の中ではあまり好まれていない集団で闇の力と邪道な技術を寿司に掛け合わせている。彼らはハンバーグや靴、あるいは非物質的な概念などを寿司として使用し、「寿司の概念」で試合をすることをこの上なく好んでいる。私はこの考えが魅力的であると同時に狂気的であり、驚異的であると同時に不条理であると感じた。
そして私は実験を実施した。実験の幾つかでは幾分......熱中しすぎてしまったと認めざるを得ません。しかし少なくとも、SCP-622-FRが何なのかをようやく理解することできた。
残念ながら、この理由を書く前に解雇されてしまったので私はこの手紙を送っている。
さて、私は、この異常現象は他の異常現象と同様に現実世界の単なるエラーに過ぎないと考えていた。勝利の気持ちがないまぜになった味であると。しかし、私は間違っていた。SCP-622-FRは我らの寿司を識別するためのツールなのだ。
カード、バット、手袋、武器など、名称や形状は問わない。その物体は存在の根底では寿司であり続ける。もし敗北したら、それはもはやあなたの寿司ではない。無価値だ。
寿司で勝つ度に味が向上する。他のスシブレード団体はこの素晴らしい力を恐れている。彼らは勝者が相応の報酬を受け取ることを禁じている。彼らは誰かがこの力を解放することを恐れている。しかし、闇寿司、彼らは私を理解してくれる。
理解した今、私は今後の勝利の全てを味わい、人生という偉大なるゲームに勝利するつもりだ。
財団の諸君、君が私を待ち受けるこれからの数年間に対するアミューズ・ブーシュ食前の軽いつまみに過ぎなかったとしても、感謝をしているよ。
闇寿司 — ローラン・アフォン